異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

家紋と門

　レオポルトとグランダー伯爵の話が終わる頃には、フォンガ車野中から見える景色が変わり始めた。
　大きな屋敷が建ち並んでいる景色から巨大な庭園のような場所へと入り込む。
　薔薇のような植物が規則的に並んでおり、その空間自体が美術品のようだ。そんな景色に倉野たちが見惚れているとグランダー伯爵が城の周囲について説明を始める。
　皇帝の住む城の周囲は大きな庭園となっており様々な植物が壁のように並び、城へと続く長い一本道以外は植物の迷宮になっているらしい。
　もしも城へと攻め入る者がいた場合、道以外では簡単にたどり着けないようになっており道に警備を集中させることができる。それでも植物の迷宮を突破する者がいればその先は城を囲うように高い壁に突き当たるようになっていた。
　どちらにせよ城へ入る為には今倉野たちがフォンガ車で進んでいるこの道しかないということである。

「なるほど、やっぱり皇帝陛下が住む城ともなれば警備は厳重なんですね」

　城の防衛機能に関心した倉野がそう呟くとノエルが不思議そうに伯爵に問いかけた。

「確かに厳重だけど、そんな簡単に話しちゃっていいの？　城の警備状況なんて国家機密じゃない？」

　すると伯爵は軽く笑って答える。

「ふふっ、私だって誰にでも話すわけじゃないさ。話していい相手かどうかくらいわかる。それにこれくらいの情報で落とされる城だとは思っていないからね。ほら、もうすぐ城の入り口だ」

　伯爵の言葉に促され外を眺めると城壁とそこに設置された巨大な門が見えた。
　門の前には数人の兵士が立っており、どうやら倉野たちが乗っているフォンガ車を確認したらしく慌ただしく動き始める。

「開門せよ！」

　兵士のうちの一人がそう叫び、すぐに巨大な門が開き始めた。ギギギと音を立ててフォンガ車が通れる隙間を確保する。
　そんな光景を見ていた倉野が関心して口を開いた。

「へぇ、凄いですね。フォンガ車を見ただけでグランダー家だとわかったんですか？　それとも魔法で識別していたり？」

　倉野の言葉を聞いたノエルが呆れたように笑う。

「なーに言ってるのよ。貴族の乗るフォンガ車にはそれぞれ家紋が描かれているの。これくらい近づけばグランダー家のフォンガ車だってことくらいわかるわ。それだけ効果のある貴族の家紋だからこそ、厳重に管理されているのよ。勝手に使用すると国によっては大罪。最悪死罪もありえるわ」
「死罪・・・・・・なるほど、だから門が開いたんですね」

　頷く倉野。すると伯爵が言葉を付け足した。

「エスエ帝国でも場合によっては死罪もあるな。そのうえ、貴族が家紋を使用して許可のない者を城に入れてしまった場合、爵位剥奪になる。与えられた特権には相応の責任が生じるんだ」

　この世界では当たり前のことを知らなすぎるなと感じながら倉野は外の景色を楽しむ。