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理想的な交渉役
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倉野の口から出てきた名前に驚くレインやレオポルトたちだったが、考えてみれば条件に当てはまっている人物かもしれないと行き着く。
世界に名を馳せる商会を立ち上げた元代表オネット・マッティーノ。現在は商会を追われ、自由の効く身だ。アルダリンから聞いていた人物像から察すると世界平和にも賛同してくれるだろう。その上で商人としての能力も高いはずだ。
交渉ごともこなしてきただろう。
まさに理想的な人物だ。
そう考えた上でレオポルトは頷く。
「なるほどな、マッティーノ商会の元代表か。ある程度貿易の知識を持っている者ならば誰でも知っている名前だ。世界中に販路を広げ、様々な国に新たな文化を持ち込み豊かではない国にも食糧を格安で届けている。ピース・リンクの目標と類似している点は多いな。行動ではなく理念としての話だが」
「僕もそう思います。オネットさんならピース・リンクに参加してくれるんじゃないでしょうか」
改めて倉野がそう提案するとグランダー伯爵が神妙な面持ちで口を開いた。
「オネット殿は確かに大した人物、それは間違い無いでしょう。何度かお会いしたことも、共に大きな仕事をしたこともあります。しかし、少々癖のある性格というか・・・・・・平たく言えば変人。面白いと思うことしかしない、が彼のモットーですので」
伯爵はオネットがピース・リンクに協力してくれるかと懸念しているようである。
しかし、その言葉を聞いた倉野はむしろいい方向に受け取っていた。
「ということは面白いとさえ思ってくれれば、参加してくれるということですよね?」
そう言い放つ倉野にレオポルトは呆れたような表情で微笑みかける。
「まったく、お前さんは妙なところで頭の回る男だな。確かに伯爵の言葉通りに受け止めればそうなる。いかがでしょうか、伯爵」
「ふむ。そう考えてくれて問題ないでしょうな。彼の興味さえひければまるで遊んでいるかのように全力を尽くしてくれるでしょう。交渉ごとに関しても各国の外交官に劣っていない。さらに特筆すべきはその行動力と想像力です。その力でマッティーノ商会の名を世界に轟かせた」
伯爵の答えを聞いた倉野は自分の考えが間違っていなかったと確信した。
オネットがピース・リンクに加入してくれれば、各国への交渉も楽になるはずである。
どうやら、倉野の案に他の者も賛成らしく話を聞き頷いていた。
「じゃあ、とりあえずアルダリンさんを追いかけてオネットさんを仲間に引き入れるってことでいいですか」
倉野が問いかけると真っ先にレオポルトが了承する。
「ああ、ワシは異論なしだ」
「私もよ。伯爵やレオポルトさんが認めるなら信頼できそうだしね」
続いてノエルも同意した。
エスエ帝国からの返答を待つ間にすべきことが一つ決まったが、同時にいくつかの準備を進めておくべきだとレオポルトが提案する。
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伯爵はオネットがピース・リンクに協力してくれるかと懸念しているようである。
しかし、その言葉を聞いた倉野はむしろいい方向に受け取っていた。
「ということは面白いとさえ思ってくれれば、参加してくれるということですよね?」
そう言い放つ倉野にレオポルトは呆れたような表情で微笑みかける。
「まったく、お前さんは妙なところで頭の回る男だな。確かに伯爵の言葉通りに受け止めればそうなる。いかがでしょうか、伯爵」
「ふむ。そう考えてくれて問題ないでしょうな。彼の興味さえひければまるで遊んでいるかのように全力を尽くしてくれるでしょう。交渉ごとに関しても各国の外交官に劣っていない。さらに特筆すべきはその行動力と想像力です。その力でマッティーノ商会の名を世界に轟かせた」
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