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即死に至らない致命傷

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「ふぅ・・・・・・この一射に私の全てを乗せる。届いて、私の想い!」

 意を決してリオネは矢を放った。
 ギリギリまで魔力を込めた矢は、空気抵抗や重力といった常識など無視する。まさしく魔法の一矢だ。
 風を纏い、進むごとに速度を落とすどころか徐々に速度を上げていく。
 リオネの覚悟や倉野への想いの全てを乗せた一射。
 その行動には危険が伴うことをリオネも理解していた。集中力や魔力を割かれることはもちろん、弓を構えてから放つまでの間、微動だにすることは許されない。
 正確な矢を放つための時間。たった数秒だがリオネは動けなかった。動くわけにはいかなかった。
 たとえ、その途中でミミーが放った矢の飛来を感じ取っていたとしても。

「くっ、私が動いていないことを・・・・・・」

 弓を放った直後、リオネは前転の要領で飛来する矢を回避しようと試みた。
 だが、先ほど負傷した右太腿が痛み、大きく飛ぶことができない。

「うっ!」

 頭の中で思い描いていた距離よりも実際飛んだ距離は短く、その誤差だけリオネの体は矢の通過点に近くなる。
 
「あっ・・・・・・ああああ!」

 前転の途中、強く貫くような痛みを感じたリオネは回転しきれずに顔から地面に飛び込んだ。
 落ち葉や土が彼女の頬を強めに撫でる。慣性によって少し引きずられたところで、リオネは足元に視線を送り、自分の状態を知った。

「うぐっ、ああっ・・・・・・うっ」

 右のふくらはぎ大きく裂け、太腿とは比にならないほど出血している。夜の闇にも負けないほど赤く濃い血が、ドクドクと脈打ちながら体外へと吐き出されていくのだ。
 周辺の落ち葉や木の根が自分のちで染まっていく。
 即死という傷ではないが、すぐにでも止血しなければ時間と共に絶命するだろうことをリオネは理解した。
 耐え難いほどの痛みの中、冷静さ即断を求められる状況。

「ううっ・・・・・・あああ! ダ、ダメ・・・・・・この傷じゃあ、もう・・・・・・素早く回避することなんてできない。とにかく、血を止めないと」

 言いながらリオネは傷口に触れた。彼女が想像していたよりも傷は深く、周辺を触れても感覚がないほどである。
 大きな痛みによって小さな感覚が殺されているのかもしれない。

「縛ったくらいで血が止まるような傷じゃあ・・・・・・とにかく血だけでも止めないと」

 自分にできることや所持品を振り返り、何とか止血できないものかと考えるリオネだったが、そう都合よく準備などしてなかった。
 それでもたった一つ、望みがあるとするならば。

「・・・・・・初級の炎魔法くらいなら・・・・・・使える!」

 彼女が行き着いた結論は『傷口を焼いて止血する』というものであった。
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