五年前に生まれたキミと一ヶ月後に死ぬ俺。

澤檸檬

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警察署とパレード

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 そう言って俺は立ち上がる。
 すると俺の手をナギが掴んだ。

「あ、どうしたんだい?」
「一人はやだ・・・・・・」

 ナギの言葉が心に刺さる。
 五歳の子どもにとって孤独というのはどれほど辛いものなのだろうか。
 理由はどうあれ、俺はこの五年間ナギの近くにいられなかった。
 そして理由はなんであれ彩乃はナギを手放したのである。
 さらに言うならばどんな理由であれ、俺は一ヶ月後にはこの世にいない。

「あ、そうだね。じゃあ、一緒にお外に食べに行こうか」
「うん」

 そして俺とナギは家を出た。
 目的地は家の近くのファミリーレストランである。
 ナギは俺の横をちょこちょこと小さな歩幅で歩き、一生懸命ついてきた。
 ファミリーレストランについてすぐに俺はナギに問いかける。

「何が食べたいかな?好きな食べ物は?」
「えっとね、オムライス」
「あ、そうなんだ。俺と同じだね」
「ママが作るオムライスが大好きなの」

 そう言われた俺は彩乃のオムライスを思い出した。
 そして心の中で呟く。
 そうなんだ。俺と同じだね。
 俺も好きだよ彩乃が作るオムライス。
 オムライスとキッズオムライスを頼んでそれをナギと食べる。
 会話はほとんどなかった。
 いやどうしていいかわからなかった。
 ほとんど間違いなく、この子は俺と彩乃の子である。
 俺が一ヶ月後に死んでしまう以上、彩乃のところに帰さなければならない。
 オムライスを食べながら俺は警察に行こうと決心していた。
 警察で事情を話し彩乃の現住所を聞く。それ以外に方法はないだろう。
 しかし、警察か。
 何も悪いことをしていなくても、行きづらいのはなぜだろう。
 警察官の制服に威厳がありすぎるからだろうか。
 もっとこう、ピンクに白の水玉でデザインしたら親しみやすくなるのではないか、と無駄なことを考えてみたりする。
 オムライスを食べ終えた俺は水を飲みながらナギに話しかけた。

「ナギちゃん、一緒に行きたいところがあるんだけれどいいかな?」
「うん。どこ行くの?」
「ママを探そうと思ってね」
「わかった」

 ナギはそう言って頷く。
 頷いたナギの口元にはケチャップがついていた。
 これは拭ってもいいのだろうか。

「ナギちゃん、ケチャップついてるよ」
「ん」

 ナギは俺に顔を近づけてきた。
 拭えと言うことだろうか。
 戸惑いながら紙ナプキンを手に取りゆっくりと拭う。
 
「取れたよ」
「ありがと」

 そう言って笑顔を浮かべるナギ。
 控えめにいって天使だ。
 子どもとはこんなに可愛いものなのか?
 この子が特別可愛いんじゃないか?
 いや、そうに違いない。
 千年に一度の美少女か何かに違いない。
 そう確信してから会計を終え、店を出た。

「じゃあ、行こうか」
「うん」

 俺はナギを連れて近くの警察署へと向かう。
 一緒に歩いているが、何を話していいのかわからない。
 どうすりゃいいんだよ。
 教えてくれよ。検索サイトでも人工知能でもいい教えてくれよ。
 そうしているうちに警察署に到着した。

 やっぱり入りづらいよね警察って。
 悪いことしてなくても入りにくいってのはダメなんじゃないか?
 もっとこうファンシーにしてみたらどうだろうか。
 夢の国感を出してエレクトリカルなパレードでもしたらどうだろうか。
 そんなことを思いながらも警察署に入る。
 厳かな雰囲気の中で俺は受付へ向かった。
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