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高品質な低価格
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理解しきれないと分かりながらも俺は説明する。
「パパとママは二十歳の時、一緒にこの街に引っ越してきたんだよ。元々、二人とも同じ田舎町で生まれ育ったんだけど、都会に憧れてね」
そう説明すると思っていた通りナギは難しい顔をして俺を見上げた。
「えっと、そうだな。ママが生まれた町に行けば何か分かるかもしれないだろう。ママの実家も知っているからな」
そう、高校時代に何回か彩乃の実家に行ったことがある。
デートする場所がない田舎では相手の家か自分の家でデートをするのだ。
実家に行って彩乃の親に話を聞けば分かるかもしれない。
彩乃の親からすれば娘を妊娠させ、その責任を取っていない元彼という存在なのだから、よくは思われないだろうが背に腹は変えられない。
俺はすぐにナギと自宅に戻り準備をした。
今住んでいる場所から地元までは新幹線と電車を乗り継ぎ五時間ほどかかる。
今から向かえば、今日中には帰ってこれないだろう。
どこかに泊まるための衣類やスマートフォンの充電器を雑に鞄に詰めた。
ナギの服は道中どこかで買おう。
「どこかに行くの?」
様子を察したのかナギがそう問いかけてきた。
「ああ、さっき話した地元に行こうと思うんだ。ちょっとした旅行だね」
「旅行?あのねあのね、ほ、ほ、ほっか・・・・・・いどう?には行ったことあるよ」
ナギは楽しそうにそう話した。
旅行という言葉で思い出したのだろう。
微笑ましい。
あ、そういえば、ナギは彩乃の親には会ったことあるのだろうか。
「ナギちゃん、おじいちゃんおばあちゃんには会ったことある?」
「うーん、ナギわかんない」
会ったことあるのか、会ったことあるけど分からないのか。
だが、地元に行けば全てがわかるだろう。
残り少ない余命だが、ナギの為に使うのならば無駄ではない。
俺はナギを連れて家を出た。
目指すのは俺や彩乃の地元の町である。
「とりあえず駅に向かおうか」
「うん」
俺が手を引くとナギは頷いてついてきた。
確か、駅への道中に全国展開されている服屋があったような気がする。
安価だが品質が良く、デザインもシンプルで着やすい。
その店を探しながら俺とナギは駅に向かって歩いた。
「ナギちゃんは何色が好きなの?」
何気ない質問で間を埋める。
わかっているさ。質問でしか会話が出来ない男はモテない。
だが、まだ距離感を測っているんだ。許してくれ。
「うーんと、赤と青と・・・・・・ピンク!」
「そうか、じゃあその色の服を買おうね」
そんな話をしていたら服屋に到着した。
赤と白の看板に吸い込まれるように入店し、ナギの服を選ぶ。
「どれにしようか、ナギちゃん」
そう問いかけるとナギは困った顔で俺を見上げた。
どれを選んでいいか分からないようである。
そんな顔されても俺は女の子の服を選んだことなんてないぞ。
「好きな服を選んでいいんだよ」
「うーん」
まだ難しかったか。
そう思っているとナギは自分なりに服を選び、ピンクのワンピースを手に取った。
小さなリボンが付いたシンプルなワンピースである。
「それがいいのかい?」
「これがいい」
そうかそうか。
最初は自分で選べずに困った顔をしていたが、ちゃんと自分で選んだナギ。
何気ないことだったが、これが成長かと感じた。
「じゃあ、これにしよう」
「パパとママは二十歳の時、一緒にこの街に引っ越してきたんだよ。元々、二人とも同じ田舎町で生まれ育ったんだけど、都会に憧れてね」
そう説明すると思っていた通りナギは難しい顔をして俺を見上げた。
「えっと、そうだな。ママが生まれた町に行けば何か分かるかもしれないだろう。ママの実家も知っているからな」
そう、高校時代に何回か彩乃の実家に行ったことがある。
デートする場所がない田舎では相手の家か自分の家でデートをするのだ。
実家に行って彩乃の親に話を聞けば分かるかもしれない。
彩乃の親からすれば娘を妊娠させ、その責任を取っていない元彼という存在なのだから、よくは思われないだろうが背に腹は変えられない。
俺はすぐにナギと自宅に戻り準備をした。
今住んでいる場所から地元までは新幹線と電車を乗り継ぎ五時間ほどかかる。
今から向かえば、今日中には帰ってこれないだろう。
どこかに泊まるための衣類やスマートフォンの充電器を雑に鞄に詰めた。
ナギの服は道中どこかで買おう。
「どこかに行くの?」
様子を察したのかナギがそう問いかけてきた。
「ああ、さっき話した地元に行こうと思うんだ。ちょっとした旅行だね」
「旅行?あのねあのね、ほ、ほ、ほっか・・・・・・いどう?には行ったことあるよ」
ナギは楽しそうにそう話した。
旅行という言葉で思い出したのだろう。
微笑ましい。
あ、そういえば、ナギは彩乃の親には会ったことあるのだろうか。
「ナギちゃん、おじいちゃんおばあちゃんには会ったことある?」
「うーん、ナギわかんない」
会ったことあるのか、会ったことあるけど分からないのか。
だが、地元に行けば全てがわかるだろう。
残り少ない余命だが、ナギの為に使うのならば無駄ではない。
俺はナギを連れて家を出た。
目指すのは俺や彩乃の地元の町である。
「とりあえず駅に向かおうか」
「うん」
俺が手を引くとナギは頷いてついてきた。
確か、駅への道中に全国展開されている服屋があったような気がする。
安価だが品質が良く、デザインもシンプルで着やすい。
その店を探しながら俺とナギは駅に向かって歩いた。
「ナギちゃんは何色が好きなの?」
何気ない質問で間を埋める。
わかっているさ。質問でしか会話が出来ない男はモテない。
だが、まだ距離感を測っているんだ。許してくれ。
「うーんと、赤と青と・・・・・・ピンク!」
「そうか、じゃあその色の服を買おうね」
そんな話をしていたら服屋に到着した。
赤と白の看板に吸い込まれるように入店し、ナギの服を選ぶ。
「どれにしようか、ナギちゃん」
そう問いかけるとナギは困った顔で俺を見上げた。
どれを選んでいいか分からないようである。
そんな顔されても俺は女の子の服を選んだことなんてないぞ。
「好きな服を選んでいいんだよ」
「うーん」
まだ難しかったか。
そう思っているとナギは自分なりに服を選び、ピンクのワンピースを手に取った。
小さなリボンが付いたシンプルなワンピースである。
「それがいいのかい?」
「これがいい」
そうかそうか。
最初は自分で選べずに困った顔をしていたが、ちゃんと自分で選んだナギ。
何気ないことだったが、これが成長かと感じた。
「じゃあ、これにしよう」
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