2 / 10
ダイキリ
しおりを挟む
「このような場所に来るのは初めてですか?」
「あ、はい」
「では、BARとはどのような場所であるか、知っていますか?」
「えっと、お酒を飲むところ・・・・・・ですか」
「半分正解です」
男性はそう言いながら楓に背を向けた。
カウンターの向こう側には無数のお酒が並んでいる。
そこから二つの瓶を手にとった男性は楓に微笑みかけた。
「BARという場所は、お酒を飲む場所であり、いつでもお客様の居場所になるところです」
「居場所・・・・・・ですか?」
楓がそう聞き返すと、男性は銀色のコップのようなものを取り出し、そこに先ほどの瓶から液体を注いだ。
注ぐ際には銀色の小さな入れ物で量を測っている。
丁寧に動きをしながらも男性は言葉を続けた。
「そうです。世の中とは決して甘くない。辛いことも悲しいこともあるでしょう。しかし、人は自分の居場所があれば大抵のことは乗り越えられるものです。帰るべき場所、いて良い場所。しかし、その居場所を見失ってしまうことがあります。自分はここにいて良いのか・・・・・・生きていて良いのか、と。そんな時必ずお客様の居場所になり味方になるのがBARです」
「居場所で、味方・・・・・・」
楓は男性の言葉を繰り返すので精一杯である。
世の中に自分は必要なのか、不安に思っていた楓にとってその言葉は深く心に入り込んできた。
「そうです。そんな味方からお嬢さんに飲んで頂きたいお酒がこちらです」
そう言いながら男性は先ほどの銀色のコップのようなものに蓋をして、振り始める。
上下させるように一定のリズムで振ると、心地のいい音が店内に響いた。
その動きは無駄がなく、美しいとさえ感じる。
楓が男性の動きに見惚れていると、次第にその動きはゆっくりになり、止まった。
男性はその混ぜた液体をグラスに注ぐ。
透明と白の中間のような液体からは爽やかな柑橘の香りがした。
「どうぞ」
男性はそう言ってグラスを楓の前に差し出す。
「あ、ありがとうございます」
グラスを受け取った楓は恐る恐る口をつけた。
ライムの香りが鼻を抜け、その爽やかな味わいが口の中いっぱいに広がる。
そして最後にアルコール独特の風味が追いかけてきた。
いつも楓が飲むチューハイよりも明らかにアルコールが強い。しかし、爽やかな香りと甘さが飲みやすいお酒に仕上げている。
「美味しい・・・・・・」
楓がそう呟くと男性は嬉しそうに微笑んだ。
「どうですか?少し元気が出ましたか?」
「え?」
「先ほど、この世の終わりのような顔をしていたので、カクテルから希望を差し上げられたらと思いましてね」
男性にそう言われた楓は、自分が先ほどまで絶望していたのだと気付く。
少し落ち込んでいる、くらいに思っていたが周りからはそう見えていたのか、と冷静になった。
先ほどの自分を客観視できるのは少し元気になったからなのかもしれない。
楓の様子を察した男性は再び微笑んだ。
「ホワイトラムとライムジュース、そして砂糖少々をシェーカーに入れ、シェイク。すると、それは名前を変えるのです。先ほどまでホワイトラムとライムジュースと砂糖だったものはダイキリと呼ばれるカクテルになります」
「ダイキリ・・・・・・」
「お口に合いましたか?」
「はい。初めて飲みましたが、飲みやすくて・・・・・・ごくごくいけちゃいそうです」
楓がそう言うと男性は笑う。
「あ、はい」
「では、BARとはどのような場所であるか、知っていますか?」
「えっと、お酒を飲むところ・・・・・・ですか」
「半分正解です」
男性はそう言いながら楓に背を向けた。
カウンターの向こう側には無数のお酒が並んでいる。
そこから二つの瓶を手にとった男性は楓に微笑みかけた。
「BARという場所は、お酒を飲む場所であり、いつでもお客様の居場所になるところです」
「居場所・・・・・・ですか?」
楓がそう聞き返すと、男性は銀色のコップのようなものを取り出し、そこに先ほどの瓶から液体を注いだ。
注ぐ際には銀色の小さな入れ物で量を測っている。
丁寧に動きをしながらも男性は言葉を続けた。
「そうです。世の中とは決して甘くない。辛いことも悲しいこともあるでしょう。しかし、人は自分の居場所があれば大抵のことは乗り越えられるものです。帰るべき場所、いて良い場所。しかし、その居場所を見失ってしまうことがあります。自分はここにいて良いのか・・・・・・生きていて良いのか、と。そんな時必ずお客様の居場所になり味方になるのがBARです」
「居場所で、味方・・・・・・」
楓は男性の言葉を繰り返すので精一杯である。
世の中に自分は必要なのか、不安に思っていた楓にとってその言葉は深く心に入り込んできた。
「そうです。そんな味方からお嬢さんに飲んで頂きたいお酒がこちらです」
そう言いながら男性は先ほどの銀色のコップのようなものに蓋をして、振り始める。
上下させるように一定のリズムで振ると、心地のいい音が店内に響いた。
その動きは無駄がなく、美しいとさえ感じる。
楓が男性の動きに見惚れていると、次第にその動きはゆっくりになり、止まった。
男性はその混ぜた液体をグラスに注ぐ。
透明と白の中間のような液体からは爽やかな柑橘の香りがした。
「どうぞ」
男性はそう言ってグラスを楓の前に差し出す。
「あ、ありがとうございます」
グラスを受け取った楓は恐る恐る口をつけた。
ライムの香りが鼻を抜け、その爽やかな味わいが口の中いっぱいに広がる。
そして最後にアルコール独特の風味が追いかけてきた。
いつも楓が飲むチューハイよりも明らかにアルコールが強い。しかし、爽やかな香りと甘さが飲みやすいお酒に仕上げている。
「美味しい・・・・・・」
楓がそう呟くと男性は嬉しそうに微笑んだ。
「どうですか?少し元気が出ましたか?」
「え?」
「先ほど、この世の終わりのような顔をしていたので、カクテルから希望を差し上げられたらと思いましてね」
男性にそう言われた楓は、自分が先ほどまで絶望していたのだと気付く。
少し落ち込んでいる、くらいに思っていたが周りからはそう見えていたのか、と冷静になった。
先ほどの自分を客観視できるのは少し元気になったからなのかもしれない。
楓の様子を察した男性は再び微笑んだ。
「ホワイトラムとライムジュース、そして砂糖少々をシェーカーに入れ、シェイク。すると、それは名前を変えるのです。先ほどまでホワイトラムとライムジュースと砂糖だったものはダイキリと呼ばれるカクテルになります」
「ダイキリ・・・・・・」
「お口に合いましたか?」
「はい。初めて飲みましたが、飲みやすくて・・・・・・ごくごくいけちゃいそうです」
楓がそう言うと男性は笑う。
0
あなたにおすすめの小説
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
『推しの「貧乏騎士」を養うつもりでしたが、正体は「王弟殿下」だったようです。
とびぃ
ファンタジー
応援ありがとうございます。
本作は多くの方にお届けする準備のため、2月6日(金)で、一旦、非公開といたします。
今後の展開については、是非、各電子書籍ストアなどでチェックいただければ幸いです。
短い間でしたが、たくさんのハートとお気に入りを
ありがとうございました。
〜「管理人のふり」をして別荘に連れ込まれましたが、過保護な溺愛が止まりません〜
【作品紹介】社畜根性が染み付いた悪役令嬢、推しの『モブ騎士』を養うつもりが、国の裏支配者に溺愛されていました!?
◆あらすじ
「貴方を、私が養います!」
前世はブラック企業の社畜、現世は借金のカタに「豚侯爵」へ売られそうになっていた伯爵令嬢エリーゼ。
絶望的な状況の中、彼女が起死回生の一手として選んだのは、夜会で誰の目にも留まらずに立っていた「推し」の『背景(モブ)騎士』への求婚だった!
実家を捨て、身分を捨て、愛する推しを支える慎ましいスローライフを夢見て駆け落ちしたエリーゼ。
しかし、彼女は知らなかった。
自分が拾ったその騎士の正体が、実は冷酷無比な『影の宰相』にして、国一番の権力者である王弟殿下レオンハルトその人であることを――!
◆見どころポイント
① 勘違いが止まらない!「福利厚生」という名の規格外な溺愛
逃避行の馬車は王族仕様の超高級車、新居は湖畔の豪華別荘、家事は精鋭部隊(暗殺者)が神速で完遂!
あまりの厚遇に「近衛騎士団の福利厚生ってすごいのね!」と斜め上の解釈で感動する元社畜のエリーゼと、そんな彼女を「俺の全権力を使って守り抜く」と誓うレオンハルト様の、噛み合っているようで全く噛み合っていない甘々な新婚(?)生活は必見です。
② 伝説の魔獣も「わんこ」扱い!?
庭で拾った泥だらけの毛玉を「お洗濯(浄化魔法)」したら、出てきたのは伝説の終焉魔獣フェンリル!
「ポチ」と名付けられ、エリーゼの膝の上を巡ってレオンハルト様と大人気ないマウント合戦を繰り広げる最強のペット(?)との癒やしの日々も見逃せません。
③ 迫りくる追手は、玄関先で「お掃除(物理)」
エリーゼを連れ戻そうと迫る実家の魔手や悪徳侯爵の刺客たち。
しかし、彼らがエリーゼの目に触れることはありません。なぜなら、最強の執事と「お掃除スタッフ」たちが、文字通り塵一つ残さず「処理」してしまうから!
本人が鼻歌交じりにお菓子を焼いている裏で、敵が完膚なきまでに叩き潰される爽快な「ざまぁ」展開をお楽しみください。
◆こんな方におすすめ!
すれ違い勘違いラブコメが好き!
ハイスペックなヒーローによる重すぎる溺愛を浴びたい!
無自覚な主人公が、周りを巻き込んで幸せになる話が読みたい!
悪役たちがコテンパンにされるスカッとする展開が好き!
碧天のノアズアーク
世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。
あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。
かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。
病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。
幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。
両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。
一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。
Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。
自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。
俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。
強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。
性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして……
※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。
※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。
※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。
※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
転生魔女は悠々自適に世界を旅する
黛 ちまた
ファンタジー
前世の記憶を持つ双子の魔女エレンとキリエは、転生した異世界を旅する。膨大な魔力、最強の使い魔、魔女だけが使える特別な馬車で、好き勝手に世界を満喫する。
異世界転生ひゃっほーぅ!!なお話です。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる