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宛名は冨岡で
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またしても美作はすんなりと冨岡の話を受け入れ、仕事内容に話題を移した。
そこに小さな違和感を持たないでもない冨岡だったが、それよりも自分の仕事が一つ減ることへの感謝の方が大きい。
「それじゃあ、仕事を受けてもらえるんですね?」
「ああ、何でも屋だからなぁ、俺は。金を払う客がいて仕事があるなら受けるさ。ただアンタは源次郎さんの家族だ。そんなアンタに損をさせるわけにはいかねぇだろう。納得して依頼してるのか確認しただけだよ」
「ありがとうございます。それじゃあ」
冨岡はそう言って早速買い出しの内容を口頭で伝える。
途中、買うべきものを覚えきれなくなった美作は「ちょっと待ってくれ、メモするわ」と言ってペンを走らせていた。
最初からメモしてくれよ、と冨岡が苦笑したのは言うまでもない。
買い出しの内容はハンバーガーの材料と、これまであまり買っていなかった酒を何種類か。大工であるミルコのオーナになったことを鑑みて、工具を一式。新しくレボルが屋台に立つことを考え、彼用のエプロン。飲食店を営んでいる以上、衛生面には気を遣わなければいけないと言うことで洗濯用の洗剤やボディーソープ、シャンプーなど。
必要になる物品を伝えた冨岡は「これをお願いします」と言葉を続けた。
すると美作はメモを終えてから再び冨岡に問いかける。
「これくらいなら今日中に買い集められそうだな。夜中に持って行ってていいんだろ?」
「ええ、大丈夫です。明日の朝までにあれば助かるって感じですね」
「あいよ、了解。にしても、かなりの量だな。なんだ? 源次郎さんの家で何人か養ってんのかい?」
美作の冗談は、当たらずとも遠からずといったところか。
冗談だとわかっていながらも、冨岡は見透かされているような気がして口元を引き攣らせる。
「そんなんじゃないですよ」
「まぁ、何でもいいさ。商品の料金やら、俺の仕事料は家の中に置いててくれるんだな?」
「はい、俺がいなくても持って行ってください」
「了解。領収書はどうする? アンタの名前でいいか?」
普通に元の世界で商売をしているのならば領収書は必要だ。しかし、異世界での商売には必要ない。
「いや、いらな・・・・・・」
そこまで言葉にしてから冨岡は口を閉じた。
領収書が必要ない、なんて言えばいくら美作といえど不信感を抱くだろう。異世界のことを話せない以上、不自然に思える行動は減らすべきだ。
冨岡は慌てて訂正する。
「あ、領収書は貰ってください」
「当たり前だろうが。商品の料金をしっかり確認してもらわねぇと困るしな。俺が聞いてるのは宛名の話だよ」
「あ、ああ、宛名でしたね。冨岡で大丈夫です」
「オッケー。じゃあ、今から買い出しに行ってくるよ」
そこで美作との電話を終え、冨岡は家の中に向かった。
そこに小さな違和感を持たないでもない冨岡だったが、それよりも自分の仕事が一つ減ることへの感謝の方が大きい。
「それじゃあ、仕事を受けてもらえるんですね?」
「ああ、何でも屋だからなぁ、俺は。金を払う客がいて仕事があるなら受けるさ。ただアンタは源次郎さんの家族だ。そんなアンタに損をさせるわけにはいかねぇだろう。納得して依頼してるのか確認しただけだよ」
「ありがとうございます。それじゃあ」
冨岡はそう言って早速買い出しの内容を口頭で伝える。
途中、買うべきものを覚えきれなくなった美作は「ちょっと待ってくれ、メモするわ」と言ってペンを走らせていた。
最初からメモしてくれよ、と冨岡が苦笑したのは言うまでもない。
買い出しの内容はハンバーガーの材料と、これまであまり買っていなかった酒を何種類か。大工であるミルコのオーナになったことを鑑みて、工具を一式。新しくレボルが屋台に立つことを考え、彼用のエプロン。飲食店を営んでいる以上、衛生面には気を遣わなければいけないと言うことで洗濯用の洗剤やボディーソープ、シャンプーなど。
必要になる物品を伝えた冨岡は「これをお願いします」と言葉を続けた。
すると美作はメモを終えてから再び冨岡に問いかける。
「これくらいなら今日中に買い集められそうだな。夜中に持って行ってていいんだろ?」
「ええ、大丈夫です。明日の朝までにあれば助かるって感じですね」
「あいよ、了解。にしても、かなりの量だな。なんだ? 源次郎さんの家で何人か養ってんのかい?」
美作の冗談は、当たらずとも遠からずといったところか。
冗談だとわかっていながらも、冨岡は見透かされているような気がして口元を引き攣らせる。
「そんなんじゃないですよ」
「まぁ、何でもいいさ。商品の料金やら、俺の仕事料は家の中に置いててくれるんだな?」
「はい、俺がいなくても持って行ってください」
「了解。領収書はどうする? アンタの名前でいいか?」
普通に元の世界で商売をしているのならば領収書は必要だ。しかし、異世界での商売には必要ない。
「いや、いらな・・・・・・」
そこまで言葉にしてから冨岡は口を閉じた。
領収書が必要ない、なんて言えばいくら美作といえど不信感を抱くだろう。異世界のことを話せない以上、不自然に思える行動は減らすべきだ。
冨岡は慌てて訂正する。
「あ、領収書は貰ってください」
「当たり前だろうが。商品の料金をしっかり確認してもらわねぇと困るしな。俺が聞いてるのは宛名の話だよ」
「あ、ああ、宛名でしたね。冨岡で大丈夫です」
「オッケー。じゃあ、今から買い出しに行ってくるよ」
そこで美作との電話を終え、冨岡は家の中に向かった。
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