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本編

第3話_世話焼きが紡ぐ縁-1

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式後、大講堂入口から参列者が一気に吐き出され、リョウもその人波に従って、揉まれながら外へ出る。
両親に大学構内見学に同道出来ない旨をSNSで伝え、密集地点から逸れたところで一旦立ち止まり、大きく息を吐き出した。

「! 川崎カワサキっ」

それからやや遅れて啓介ケイスケも同じように講堂から出て来ると、しおれた表情で休む彼に目ざとく気付き、近付いてくる。

沖本オキモト…」
「凄かったなー、もみくちゃだった。大丈夫か?」
「人ごみはちょっと苦手で」
「おいおい、心配だなこれから。のぼり電車だったら毎日こんなだぞ?」
「…」

啓介のもっともな指摘に、ますます顔を青ざめ項垂れた諒だったが、彼へ向けて視線だけを見上げた。

「…これからクラス集合だっけ?」
「そうみたい。顔合わせして集合撮影して、夕方からコンパな。女子のいない、寂しくてむさ苦しいコンパよ」
「その事実は耳に痛いな」
「…でもまぁ、そうでもないかな? なんたって麗しの・・・髙城タカシロいるし」

啓介の口からさらっと出た言葉に、諒は目を見張りながら身を起こす。
確かに彼は、総代として挨拶に臨んだ蒼矢ソウヤには驚き、興奮していたが…

「…興味無いのかと思ってた」
「ん?」
「さっき、開口一番にスーツの話してたし、容姿のことに一切触れてなかったから…」

虚を突かれた面差しを浮かべながらも、人目を憚るように小声で考察を重ねる諒へ、啓介は一旦きょとんとした表情を返した後、すぐに目を細めながら口角を上げ、顔の前で指を振ってみせた。

「わかってないな、川崎よ。ああいうどうにも目立つビジュアルの人間は、容姿については産まれた時から耳タコになるほど言われ慣れてる」
「!」
「加えて、圧倒的に男比率の高いこの大学で、更に少人数の学部を選んで入ってくるなんざ、性格は地味めだと容易に想像出来る。あえて触れないのが最適解だ」
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