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本編
第3話_世話焼きが紡ぐ縁-2
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呆気にとられる諒に見守られながら、啓介はつらつらと持論を述べ続ける。
「しかしだな、野郎一色の理学部に、あの容姿は希少…まさに掃き溜めに鶴だ。これから仲良くなるためには、初手でリスキーな話題は避けた方がいい。俺は是が非でもお近付きになって、近くでご尊顔を拝んでいたい。お前だってそう思ってるだろ?」
「沖本…」
最後は顎を上げ、鼻の穴を広げながら言ってのけた啓介へ、諒は素直に感嘆の声をあげた。
「すごいな…あの一瞬で、そんなことまで考えてたのか。…確かにその通りだ」
「ふん。だろ?」
「その洞察力を、次の彼女見つける時には活かしてくれよな」
「!! それとこれとはっ…、…結構言うな、お前も」
ど正論を喰らい、伸びそうになった鼻をへし折られたところで、啓介はスマホを開けてスケジュールへ目をやった。
「…そろそろ集合場所行かなきゃな」
「あ、トイレ行ってきていいか?」
「あー、俺も行っとくかな」
なんとなく打ち解け具合が深まったふたりは、連れ立って一番近くの構内カフェテリアへ向かった。
少し並んだ末に用を済ませ、諒は洗面所に向かいながら軽く辺りを見回す。
啓介の姿は見えず、まだ中にいるのか既に外に出て待っているのか、見当がつかなかった。
…とりあえず外に出るか…
と、視線を入口へと動かす途中で、視界にちらりと入った洗面所の隅に、覚えのあるシルエットが背を丸めがちにしているのが目についた。
…髙城…?
諒は、入口から出かけたところで通行の邪魔にならないよう隅にとどまり、その後ろ姿に注視する。
一秒たりとも記憶から褪せることのない暗灰色のスーツ姿の髙城 蒼矢は、前傾姿勢のままバッグの中を探ったり何かを取り出したりと、せわしなく痩身を動かしていた。
「…?」
顔のどこかが気になるのか、両手をしきりに持っていったり、頭を左右に細かく振ったりと、なにか尋常ではない様子に見えた。
遠目から見守るだけにしておこうと思った諒の足が自然と動き、彼へ近付いていった。
「しかしだな、野郎一色の理学部に、あの容姿は希少…まさに掃き溜めに鶴だ。これから仲良くなるためには、初手でリスキーな話題は避けた方がいい。俺は是が非でもお近付きになって、近くでご尊顔を拝んでいたい。お前だってそう思ってるだろ?」
「沖本…」
最後は顎を上げ、鼻の穴を広げながら言ってのけた啓介へ、諒は素直に感嘆の声をあげた。
「すごいな…あの一瞬で、そんなことまで考えてたのか。…確かにその通りだ」
「ふん。だろ?」
「その洞察力を、次の彼女見つける時には活かしてくれよな」
「!! それとこれとはっ…、…結構言うな、お前も」
ど正論を喰らい、伸びそうになった鼻をへし折られたところで、啓介はスマホを開けてスケジュールへ目をやった。
「…そろそろ集合場所行かなきゃな」
「あ、トイレ行ってきていいか?」
「あー、俺も行っとくかな」
なんとなく打ち解け具合が深まったふたりは、連れ立って一番近くの構内カフェテリアへ向かった。
少し並んだ末に用を済ませ、諒は洗面所に向かいながら軽く辺りを見回す。
啓介の姿は見えず、まだ中にいるのか既に外に出て待っているのか、見当がつかなかった。
…とりあえず外に出るか…
と、視線を入口へと動かす途中で、視界にちらりと入った洗面所の隅に、覚えのあるシルエットが背を丸めがちにしているのが目についた。
…髙城…?
諒は、入口から出かけたところで通行の邪魔にならないよう隅にとどまり、その後ろ姿に注視する。
一秒たりとも記憶から褪せることのない暗灰色のスーツ姿の髙城 蒼矢は、前傾姿勢のままバッグの中を探ったり何かを取り出したりと、せわしなく痩身を動かしていた。
「…?」
顔のどこかが気になるのか、両手をしきりに持っていったり、頭を左右に細かく振ったりと、なにか尋常ではない様子に見えた。
遠目から見守るだけにしておこうと思った諒の足が自然と動き、彼へ近付いていった。
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