ガイアセイバーズ spin-off -Ｔ大理学部生の波乱-

本編

第3話_世話焼きが紡ぐ縁-3

「…髙城タカシロ？」

後ろから名を呼び、諒リョウはまるで禁忌に触れるような心地を覚えながら、横からそろりと蒼矢ソウヤの顔を窺う。
そうして覗き込んだ彼と目が合った諒は、一瞬硬直してしまった。

「…っ…！？」

蒼矢は眉を寄せ、充血した薄茶色の目に涙を溜めていた。
長い睫毛を束にして濡らし、鼻の先と白肌の頬を紅く染めたそんな面差しの彼と、ごく至近距離で目が合ってしまった。
思わず飛び退きそうになった上半身をなんとかこらえ、諒は動揺をひた隠しながら問いかける。

「…どうした？」
「……目が…」

声を掛けられた蒼矢はそう小さく答えると、手に持ったハンカチで瞼を拭う。
少しずつ動悸が収まり、状況を観察できるようになってきた諒は、彼のトラブルの元にすぐに行きついた。

「目が痛いのか？」

ハンカチに顔を伏せたままこくこくと頷いてみせる仕草を見、諒は気付かれない程度に安堵の息をついた。

…良かった…、どこぞの輩から泣くほどのセクハラを受けたか、顔を傷つけられでもしたのかと思ったぞ…

飛躍した憶測へ自己完結し、落ち着きを取り戻した諒へ、蒼矢は続ける。

「…コンタクトが、合わなかったみたいで」
「！　なるほど。今日下ろした新品だったのかな？」
「いや…前から持ってた物だったんだけど…、使うの自体久々だったから…」
「ああ、そうなんだ。…って、もしやコンタクト着け慣れてないの？」
「うん…いつもは眼鏡なんだ」

衝撃の事実を知り、諒は目を丸くする。

…まさかの髙城も、常時眼鏡だったのか…！
…その・・見た目で眼鏡って、大穴過ぎるだろ…！！