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本編
第12話_静かな正義-4
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そうして佐伯はひとしきり弁舌を振るうと、蒼矢の背後から神妙な面持ちで耳を傾ける理学部生たちをちらりと見、口角を上げた。
「君は校内でますます有名になるだろうし、より注目され続ければ、所属する理学部にとっても悪いことじゃないと思うよ。地味な弱小学部を、他学部に知ってもらえる良い機会にもなるかもしれないからね。教授と金の無駄遣いしてるくせに何やってるか実態の知れない理学部が、君のお陰で日の目を浴びることになる。ドラマ性があると思わない? そういう将来ストーリーで検討してもいいよ」
佐伯の話しぶりに、後方の他学部サークル員たちは始終口元をにやつかせていた。
「…黙って聞いてりゃ、言いたい放題ディスってくるじゃねぇか」
眉を寄せながらも返事に窮する蒼矢の後ろから、啓介がおもむろに立ち上がって前に出る。
「購読数だかアクセス数だか知らないけど、おたくらの都合になんで髙城が付き合わされなきゃならねぇんだよ。プライベートな情報まで許可無く載せやがって」
「プライベート?」
「名前や写真だよ。載せること、こいつに説明してねぇだろ。聞かれなきゃ好き勝手やっていいと思ってんのか?」
「そんなつもりないよ。こちらとしては、取材引き受けてくれた時点で掲載許可貰ったつもりだったんだ。…ちょっと齟齬があったかな」
「言質取るマニュアルも無い、そんないい加減な組織の取材に協力なんて出来るわけないだろ。だいたい、弱小学部って何だよ? 人数の多さで学部の優劣が決まるのかよ?」
「そういう風に捉えてるわけじゃないよ。学部人数が少ないってことを単純に"表現"しただけ」
「じゃあ、"金食い虫"って根拠はあるのかよ?」
「さぁ? 俺が言い出したことじゃないし。それこそ入学する前から長年校内で広まってる噂だから、俺に根拠求められても困るなぁ」
啓介の苛立ちを滲ませた詰問を、佐伯はへらへら笑いながらいなしていった。
詰めていた啓介は息を大きく吐き出すと、冷めた目で佐伯を見据えた。
「…話にならねぇな、誠意がまるで感じられねぇ。勝手に個人情報晒しやがるわ、盗撮写真載せるわ…三流週刊誌みたいな代物しか作れねぇ奴らは、やっぱり中身も三流だったな」
啓介から浴びせかけられた言葉に、口元を緩ませていた佐伯も表情を変える。
と、両者に沈黙が降りた合間に、前方からシャッター音が聞こえてきた。
佐伯へと睨んだまま黙っていた啓介は、再び目の色を変えてサークルの一団の後方へ視線をやる。
「…! 誰だ、今写真撮った奴!」
啓介は佐伯を押しのけてシャッター音のした方へ歩み寄ろうとするが、サークルの連中らに押し留められる。
「ちょっとやめなよ、言いがかりつけてくる上に実力行使?」
「そっちこそ肖像権侵害してるだろうが! また勝手に撮影しやがって!」
「なんのこと? そんなこと誰もしてないし、何の音も聞こえなかったよ」
啖呵を切る啓介へ鼻を鳴らしながら返し、佐伯は揉める場から一歩遠ざかる。
撮影されたスマホを奪おうとする啓介が、数人から大きく押し戻されて背中を反らす。
「君は校内でますます有名になるだろうし、より注目され続ければ、所属する理学部にとっても悪いことじゃないと思うよ。地味な弱小学部を、他学部に知ってもらえる良い機会にもなるかもしれないからね。教授と金の無駄遣いしてるくせに何やってるか実態の知れない理学部が、君のお陰で日の目を浴びることになる。ドラマ性があると思わない? そういう将来ストーリーで検討してもいいよ」
佐伯の話しぶりに、後方の他学部サークル員たちは始終口元をにやつかせていた。
「…黙って聞いてりゃ、言いたい放題ディスってくるじゃねぇか」
眉を寄せながらも返事に窮する蒼矢の後ろから、啓介がおもむろに立ち上がって前に出る。
「購読数だかアクセス数だか知らないけど、おたくらの都合になんで髙城が付き合わされなきゃならねぇんだよ。プライベートな情報まで許可無く載せやがって」
「プライベート?」
「名前や写真だよ。載せること、こいつに説明してねぇだろ。聞かれなきゃ好き勝手やっていいと思ってんのか?」
「そんなつもりないよ。こちらとしては、取材引き受けてくれた時点で掲載許可貰ったつもりだったんだ。…ちょっと齟齬があったかな」
「言質取るマニュアルも無い、そんないい加減な組織の取材に協力なんて出来るわけないだろ。だいたい、弱小学部って何だよ? 人数の多さで学部の優劣が決まるのかよ?」
「そういう風に捉えてるわけじゃないよ。学部人数が少ないってことを単純に"表現"しただけ」
「じゃあ、"金食い虫"って根拠はあるのかよ?」
「さぁ? 俺が言い出したことじゃないし。それこそ入学する前から長年校内で広まってる噂だから、俺に根拠求められても困るなぁ」
啓介の苛立ちを滲ませた詰問を、佐伯はへらへら笑いながらいなしていった。
詰めていた啓介は息を大きく吐き出すと、冷めた目で佐伯を見据えた。
「…話にならねぇな、誠意がまるで感じられねぇ。勝手に個人情報晒しやがるわ、盗撮写真載せるわ…三流週刊誌みたいな代物しか作れねぇ奴らは、やっぱり中身も三流だったな」
啓介から浴びせかけられた言葉に、口元を緩ませていた佐伯も表情を変える。
と、両者に沈黙が降りた合間に、前方からシャッター音が聞こえてきた。
佐伯へと睨んだまま黙っていた啓介は、再び目の色を変えてサークルの一団の後方へ視線をやる。
「…! 誰だ、今写真撮った奴!」
啓介は佐伯を押しのけてシャッター音のした方へ歩み寄ろうとするが、サークルの連中らに押し留められる。
「ちょっとやめなよ、言いがかりつけてくる上に実力行使?」
「そっちこそ肖像権侵害してるだろうが! また勝手に撮影しやがって!」
「なんのこと? そんなこと誰もしてないし、何の音も聞こえなかったよ」
啖呵を切る啓介へ鼻を鳴らしながら返し、佐伯は揉める場から一歩遠ざかる。
撮影されたスマホを奪おうとする啓介が、数人から大きく押し戻されて背中を反らす。
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