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本編
第21話_開かれる記憶の扉-2
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「……えい、と……」
そう呟きながら、ソウヤはゆっくりと目を開ける。
最初に飛び込んできた明るい光に、生まれてから一番長い時間過ごした研究所の、見覚えのあるリペア室のオペ台照明だと、すぐに思い当たった。
そしてその傍らから、余程驚くことがあったのか目を大きく見張り口を半開く、愛しい面差しが自分を覗き込んでいた。
目を開けたソウヤを見下ろしたまま固まっていたミヤジマ博士は、すぐに表情を戻し、優しく笑んだ。
「…おはよう、ソウヤ」
「……博士…」
ソウヤは、生まれ育ったミヤジマ技研へ戻って来ていた。
脅威なる戦闘機『86M-VA』との一騎打ちを制し、辛くも凶事を収めたものの、動力を稼働可能領域すれすれまで酷使し、直後に昏倒した挙句ボディの損傷も著しかったソウヤは、王家及び王宮の許諾を得て、すぐさま製造元であるミヤジマ技研へ戻された。
創造主・ミヤジマ博士の神がかったリペアにより、ソウヤは一夜にしてその身を修復され、元の姿に戻っていた。
「起き上がれるか? パーツをいくつか付け替えたから、スムーズに動かせるか確かめてみてくれ」
博士に支えられながらソウヤは上半身を起こし、切断部に挿げられた新たな左腕や、その他体躯全体の関節などの動きを確かめてみる。
「…大丈夫です、問題無く動かせます」
「よし。…お疲れだったな、本当によくやってくれた」
見上げるソウヤへそう優しく言葉を落とし、博士は手を大きく広げ、ソウヤの身体を抱きしめた。
博士の柔らかな腕の心地と、懐かしい彼の匂いに、ソウヤは目を細め頬を染め、みずからも博士の背中へ手を回し、身体を寄せた。
しばらく抱き合った後、ふたりは少し離れて見つめ合う。
「…博士。俺…今さっきまで、『夢』を見ていたんです」
「!」
アンドロイドらしからぬ台詞を吐くソウヤに、博士は少し驚き、続きを促す。
「目新しい景色の中に、少しだけお若い博士がいました。…景色も、そんな博士のお顔も見たことが無いはずなのに、とても懐かしく感じました」
「…そっか」
「俺は生まれてから今まで、博士の名前を知りませんでした。…"ミヤジマ博士"としか、教えられてなかったから」
「…うん、そうだったな」
「でも、俺の目からは見えない誰かが…、きっと俺であって俺ではない誰かが、博士を『エイト』と呼んでいたんです」
そう言葉を紡ぐと、ソウヤは博士を大きな瞳で見つめる。
「俺は、『誰』なんですか…?」
そう呟きながら、ソウヤはゆっくりと目を開ける。
最初に飛び込んできた明るい光に、生まれてから一番長い時間過ごした研究所の、見覚えのあるリペア室のオペ台照明だと、すぐに思い当たった。
そしてその傍らから、余程驚くことがあったのか目を大きく見張り口を半開く、愛しい面差しが自分を覗き込んでいた。
目を開けたソウヤを見下ろしたまま固まっていたミヤジマ博士は、すぐに表情を戻し、優しく笑んだ。
「…おはよう、ソウヤ」
「……博士…」
ソウヤは、生まれ育ったミヤジマ技研へ戻って来ていた。
脅威なる戦闘機『86M-VA』との一騎打ちを制し、辛くも凶事を収めたものの、動力を稼働可能領域すれすれまで酷使し、直後に昏倒した挙句ボディの損傷も著しかったソウヤは、王家及び王宮の許諾を得て、すぐさま製造元であるミヤジマ技研へ戻された。
創造主・ミヤジマ博士の神がかったリペアにより、ソウヤは一夜にしてその身を修復され、元の姿に戻っていた。
「起き上がれるか? パーツをいくつか付け替えたから、スムーズに動かせるか確かめてみてくれ」
博士に支えられながらソウヤは上半身を起こし、切断部に挿げられた新たな左腕や、その他体躯全体の関節などの動きを確かめてみる。
「…大丈夫です、問題無く動かせます」
「よし。…お疲れだったな、本当によくやってくれた」
見上げるソウヤへそう優しく言葉を落とし、博士は手を大きく広げ、ソウヤの身体を抱きしめた。
博士の柔らかな腕の心地と、懐かしい彼の匂いに、ソウヤは目を細め頬を染め、みずからも博士の背中へ手を回し、身体を寄せた。
しばらく抱き合った後、ふたりは少し離れて見つめ合う。
「…博士。俺…今さっきまで、『夢』を見ていたんです」
「!」
アンドロイドらしからぬ台詞を吐くソウヤに、博士は少し驚き、続きを促す。
「目新しい景色の中に、少しだけお若い博士がいました。…景色も、そんな博士のお顔も見たことが無いはずなのに、とても懐かしく感じました」
「…そっか」
「俺は生まれてから今まで、博士の名前を知りませんでした。…"ミヤジマ博士"としか、教えられてなかったから」
「…うん、そうだったな」
「でも、俺の目からは見えない誰かが…、きっと俺であって俺ではない誰かが、博士を『エイト』と呼んでいたんです」
そう言葉を紡ぐと、ソウヤは博士を大きな瞳で見つめる。
「俺は、『誰』なんですか…?」
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