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本編

第3話_可憐な美青年-5

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「――髙城タカシロ先輩!」
合同授業が終わり、座学室から生徒が流れ出ていく中、歩いていこうとする蒼矢ソウヤと友人たちの背中へ少年が発したような呼び声がかけられる。
振り向くと、リンが頬を染めながら立っていた。
「今日は教えて下さってありがとうございました」
「ううん。…あまり力になれなくてごめん」
「そんなことありません。先輩のお話の仕方優しくて、僕好きです」
「…ありがとう。次までに復習しておいてくれるかな」
「はい…あっ、」
そう言葉をかけられたところで鱗は目をぱちくりとさせ、次いでにこりと微笑んだ。
「…先輩、この後時間頂けませんか? 今日わからなかったところをもう一度見て欲しいんです」
「! この後…」
友人2人から視線を浴びる中、蒼矢は一瞬思考を巡らせ、授業前に影斗エイトと交わした会話を思い出す。
「今日は…、ちょっと人と待ち合わせしてて、もう帰るんだ。別日でいいかな」
「そうですか…わかりました。じゃあ、大学出るところまでついていっていいですか?」
「! えっ…」
「僕、少しでも髙城先輩と一緒にいたくて。…駄目ですか?」
小首を傾げる鱗の奥へ視線を流すと、先ほどグループで一緒だった1年生2人が、こちらの様子を立ち止まって眺めていた。
「…なんかあいつら、あんたと帰りたいみたいだけど?」
同じように視線を送っていた川崎カワサキが、鱗へ注意をやる。しかし、1年生たちは視線に気付いたのか、何か小声で会話をしながら背中を向け、去っていく。
「いいんです、彼らとはいつでも一緒にいられますから」
「……」
そう返された蒼矢は、川崎と沖本オキモトへ目を向け、彼らも顎で了承したのを確認すると、軽く息をつく。
「…じゃあ、門まで」
「ありがとうございます。嬉しいです」
蒼矢の返事を聞くと、鱗は顔をほころばせ、彼の腕に自分の腕を絡めて身体をはり付けた。急に距離を縮められた蒼矢は戸惑いを見せるも、引き剥がすことはせず彼のペースに合わせてやる。
「……」
そんな、付き合いたてのカップル並みの様相をかもす2人を見、後ろから続いて歩く友人2人は目を丸くし、顔を見合わせた。
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