ガイアセイバーズ -GAIA SAVERS-

独楽 悠

文字の大きさ
2 / 69
本編

第1話_男と青年_1

しおりを挟む
――気分が悪い…――


[男]は昼間からふらふらと、住宅街をさまよっていた。

大柄な身体を若干前のめりにさせながら、足を引きずるように歩を進める。

歩道沿いに規則正しく並ぶ、住居壁の塗料のケミカル臭。
小洒落たカフェのこだわりコーヒーから漂う、苦すっぱい臭い。
仕込み始めた定食屋裏手の換気口から流れ出る、生温かい調理臭。


――頭痛がする――


[男]は、手に持っていた嗅覚を抑えるタブレットを噛み砕き、臭いを避けるようにひときわ大きい通りに出る。
するとたちまち、颯爽と往来する自動車の排気ガスが鼻腔を貫いた。

「っ…」

[男]はたまらず口を押さえる。
ここで吐いてはいけない。

なんとなく、視界の端に自身を遠目からうかがうような視線を感じる。


――目立つ行動はなるべく避けたい…――


このご時世、どこの誰とも知らない人間においそれと声をかける者は少ない。
まして体格が良く、丸腰で接触したら何か危害を加えられそうな雰囲気さえ感じる当該[男]を呼び止めることなど、警察官や警備員くらいにしかできないだろう。

一応、[男]は目的を持って歩いてはいた。
人間の多いところへ。
それも、なるべく若く、それでいて成熟した人間が多いところへ。

大通りを何とか横断すると、ふいに草木の澄んだ匂いが届くようになり、[男]はそれに導かれるように、分厚いコンクリートの門をくぐった。


――人間が大勢いる気配がする――


いくらか気分を持ち直した[男]は、そのまま道なりに進み、適当な建物の中へ入ることにする。

食堂らしき建物の中は予想通り、昼食をとろうと人でごった返していた。

「~っ!!」

中へ入りかけたところで[男]は再び口を塞ぎ、ぐるっと踵を返して屋外へ逃げ出した。

先ほど嗅いで来た調理臭の類似臭と、それに混じった様々な雑臭――
つけ過ぎなヘアワックスの臭い、振りかけ過ぎな香水の臭い、必要以上に香らせた、着衣の柔軟剤の臭い。


――限界…――


凄まじい吐き気と頭痛がなだれのように襲い、建物の植え込みの傍で四つん這いに崩れ落ちる。

「――大丈夫ですか?」

そのまま暗転しかけたところ、上から至近距離で声をかけられた。

焦点が合わないまま見上げると、背中に手を当てられ、今しがた飛び出してきた建物の中へ再び誘導されそうになったので、全力で拒絶する。
声をかけた人物は驚いたように少し身を引いたが、何かを察したのかすぐに逆方向へ誘導し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。 想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。 悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。 ※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。 二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

窓のない部屋の、陽だまりみたいな君

MisakiNonagase
BL
都心の高層ビル、その「内臓」とも言える地下一階のメール室。 そこで働く山﨑智之は、目立たず、期待されず、淡々と郵便物を捌く「透明人間」のような毎日を愛していた。自分は低スペックで、華やかな地上には居場所がない。そう、諦めていた。 ​そんな彼の静寂を破ったのは、二十二階の住人、若きエース・風巻隼人だった。 完璧なルックス、圧倒的な成果、羨望の眼差しを一身に浴びる彼が、なぜか地下のメール室に足繁く通い始める。 ​「五分だけ、ここにいさせてくれないか」 ​一通の郵便物から始まった、五分間だけの秘密の共有。 次第に剥き出しになっていく隼人の孤独と、それを無自覚に包み込んでしまう智之の温度。 住む世界が違う二人が、窓のない部屋で見つけたのは、名前のつかない「救済」だった。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

処理中です...