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本編
第2話_日常_2
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家に着くと蒼矢は、とりあえず玄関とリビングの明かりはつけるものの、まっすぐ三階の自室へ向かう。
家には誰もいない。
父は地方出張で連泊中だし、母はそもそも国内にいない。
デスクチェアに体育座りで腰かけ、タブレットに向かい、もそもそとパンをかじっていると、チャットの通知が入った。
「…陽だ」
先ほどの酒屋の男・烈の従兄弟である要 陽からのチャットだった。
定期考査が近いので、いつものように勉強を見て欲しいとのことだった。
…そういえば、高校はそろそろ中間テストの時期か…
まるでこの世の終わりを聞かされたような、陽の悲痛な面様が目に浮かぶ。
彼の要望に応えるべく、教科書をひと揃え持って週末に家に来るよう返信しておく。
ひと息ついて、食後に貰ったバナナを剥こうをしたところで着信が入る。
「もしもし」
『だ~れだ?』
「切りますよ」
『まぁ待てって。久しぶりにかけてんだから、少しは喜べよ』
「先々週、そっち行って話したでしょう…要件は何ですか? 影斗先輩」
蒼矢の高校時代の先輩・宮島 影斗だった。
スマホの向こうで笑い声が聞こえ、こちらの淡白な切り返しを楽しんでいるようだ。
『週末そっち行くからさ。会える?』
「断っても家に来るでしょう? いいですよ」
『話わかるね~、また葉月んち泊まるから、来いよ』
「わかりました」
『ちゃんと身体あけておけよ? 色んな意味で♪』
「切りますね」
『あー待った待った。冗談だろ、な? 蒼矢』
からかうと本当に切りかねないので、影斗は声色に真面目さをのぞかせつつ、蒼矢をなだめる。
『毎日寂しく過ごしてるんだからさ…お前なら俺の今の気持ち、理解できるだろ?』
「…そのつもりですよ。だからこうして、誘われたら必ず会ってるじゃないですか」
少しトーンダウンした影斗の声を受け、蒼矢は少し柔らかい口調で返した。
影斗が小さく笑ったのが聞こえる。
『たまにはコンタクト着けてこいよ。せっかく俺がやったんだからさ』
「いえ、眼鏡で行きます」
『…了ー解。じゃな、楽しみにしてる』
通話を切り、ペットボトルのお茶を一口飲むと、思い出したように再びスマホを手に取った。
「どうせなら、陽も葉月さんちに呼んでしまおう。…予防線じゃないけど」
双方の共通の知り合いの楠瀬 葉月を思い出し、陽に講義場所変更のメッセージを送る。
ついで、烈のチャット画面を開く。
「烈にも声かけよう。家の都合がつけば、だけど…」
しかし文面を送りかけたところで止め、烈には明日直接話すことにし、スマホを傍らに伏せた。
家には誰もいない。
父は地方出張で連泊中だし、母はそもそも国内にいない。
デスクチェアに体育座りで腰かけ、タブレットに向かい、もそもそとパンをかじっていると、チャットの通知が入った。
「…陽だ」
先ほどの酒屋の男・烈の従兄弟である要 陽からのチャットだった。
定期考査が近いので、いつものように勉強を見て欲しいとのことだった。
…そういえば、高校はそろそろ中間テストの時期か…
まるでこの世の終わりを聞かされたような、陽の悲痛な面様が目に浮かぶ。
彼の要望に応えるべく、教科書をひと揃え持って週末に家に来るよう返信しておく。
ひと息ついて、食後に貰ったバナナを剥こうをしたところで着信が入る。
「もしもし」
『だ~れだ?』
「切りますよ」
『まぁ待てって。久しぶりにかけてんだから、少しは喜べよ』
「先々週、そっち行って話したでしょう…要件は何ですか? 影斗先輩」
蒼矢の高校時代の先輩・宮島 影斗だった。
スマホの向こうで笑い声が聞こえ、こちらの淡白な切り返しを楽しんでいるようだ。
『週末そっち行くからさ。会える?』
「断っても家に来るでしょう? いいですよ」
『話わかるね~、また葉月んち泊まるから、来いよ』
「わかりました」
『ちゃんと身体あけておけよ? 色んな意味で♪』
「切りますね」
『あー待った待った。冗談だろ、な? 蒼矢』
からかうと本当に切りかねないので、影斗は声色に真面目さをのぞかせつつ、蒼矢をなだめる。
『毎日寂しく過ごしてるんだからさ…お前なら俺の今の気持ち、理解できるだろ?』
「…そのつもりですよ。だからこうして、誘われたら必ず会ってるじゃないですか」
少しトーンダウンした影斗の声を受け、蒼矢は少し柔らかい口調で返した。
影斗が小さく笑ったのが聞こえる。
『たまにはコンタクト着けてこいよ。せっかく俺がやったんだからさ』
「いえ、眼鏡で行きます」
『…了ー解。じゃな、楽しみにしてる』
通話を切り、ペットボトルのお茶を一口飲むと、思い出したように再びスマホを手に取った。
「どうせなら、陽も葉月さんちに呼んでしまおう。…予防線じゃないけど」
双方の共通の知り合いの楠瀬 葉月を思い出し、陽に講義場所変更のメッセージを送る。
ついで、烈のチャット画面を開く。
「烈にも声かけよう。家の都合がつけば、だけど…」
しかし文面を送りかけたところで止め、烈には明日直接話すことにし、スマホを傍らに伏せた。
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