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本編
第9話_惨劇のあと-6
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玄関まで連れ立って歩き、影斗は靴を履く烈の背中を眺めた。
「…しばらく気にしててやれよ」
「!」
ぽつりと漏れた声がけに、烈はふり向く。
「蒼矢を狙った[侵略者]はかなりしつこい。あれは単に興味があるとか[異界]に連れ帰るとかいうレベルじゃねぇ、本気で仕留めようとしてきてる」
「…な…!?」
「次戦もおそらくあいつを襲いに現れるだろうから、すぐ行けるように常に心づもりしとけ。なるべく独りにさせとくなよ」
影斗の助言を聞き、瞬間動揺し色めきだつ烈だったが、すぐに視線を落としてしまう。
「? なんだよ。元・恋敵からのアドバイスなんざ聞きたかねぇってか?」
「…そうじゃねぇよ」
影斗は少し茶化してみせたが、烈はうつむいたまま眉を寄せた。
「俺…いつも蒼矢の傍にいるって心に決めてたのに…葉月さんの前でも大見栄きって宣言したのに、かけらもいてやれなかった」
烈は影斗へか独り言か、足もとの土間に向けて心情を零していく。
「それに…蒼矢のこと放ったらかしにしたくせに、あいつから任されたこともなにも出来なかった。血だらけで倒れてた葉月さんや苡月を助けられなかったし、ふたりを置きざりにしてまで『転送』したのに、結局[侵略者]は倒せなかった。栞奈にも…気遣わせちまった。傷ついてるあいつをひとりで実家帰すなんて、残酷だよな、俺…」
「烈…」
「本当は全部知ってるのに、なにも話してやれないのももどかしかったし、話せないなりにフォローしてやれればよかったんだけど、うまい言葉が出てこなくて…黙ってるしかできなかった。…影斗みたいに気の利いたこと言ってやれれば、栞奈も素直になれたんじゃないかって…」
同調するように黙って聞く影斗だったが、肩を落としながら吐露される烈の言葉に、次第に目を丸くしていく。
「今日一日、後悔してばっかりだ。もっと器用に生きたい」
そして最後にぽつりと漏れた愚痴を聞いて、耐えられずに影斗は噴き出した。
「珍しー。めっちゃ落ち込んでんじゃん。らしくねぇなぁ」
「…!? なんだよ、なんかおかしいかよ?」
「そうじゃねぇけど、なんか小難しいこと考えちまってるなーって、烈にしちゃ。頭より先に体が動く奴の口から、そんなしおらしい反省の弁が聞けるとは思わなかったぜ。いやー、やっぱ可笑しいかも」
「馬鹿にしてるだろ、お前…!」
烈は、けたけた笑う影斗へ声を荒げる。
影斗は憤慨する烈を手で制し、宥めながら続けた。
「お前は頼まれた通りに動いただけだろ、別になんも反省するところねぇよ」
「! だけど…影斗ならもっと上手くやれてたって思うと…」
「だからぁ、そん時にいねぇ俺と比べたところで"たられば"でしかねぇだろ、不毛なだけなんだからさっさと忘れろ。…お前最近、色々考えるもん勝手に増やしてるみたいだけど、慣れないことしてると自分追い込んじまうだけだぞ?」
「…っ」
「無いものねだりしてたって仕方ねぇだろ。今の力量の話は一旦置いとけ」
影斗は、なにやら思い悩む烈を軽い口調で一笑に付した。
「…しばらく気にしててやれよ」
「!」
ぽつりと漏れた声がけに、烈はふり向く。
「蒼矢を狙った[侵略者]はかなりしつこい。あれは単に興味があるとか[異界]に連れ帰るとかいうレベルじゃねぇ、本気で仕留めようとしてきてる」
「…な…!?」
「次戦もおそらくあいつを襲いに現れるだろうから、すぐ行けるように常に心づもりしとけ。なるべく独りにさせとくなよ」
影斗の助言を聞き、瞬間動揺し色めきだつ烈だったが、すぐに視線を落としてしまう。
「? なんだよ。元・恋敵からのアドバイスなんざ聞きたかねぇってか?」
「…そうじゃねぇよ」
影斗は少し茶化してみせたが、烈はうつむいたまま眉を寄せた。
「俺…いつも蒼矢の傍にいるって心に決めてたのに…葉月さんの前でも大見栄きって宣言したのに、かけらもいてやれなかった」
烈は影斗へか独り言か、足もとの土間に向けて心情を零していく。
「それに…蒼矢のこと放ったらかしにしたくせに、あいつから任されたこともなにも出来なかった。血だらけで倒れてた葉月さんや苡月を助けられなかったし、ふたりを置きざりにしてまで『転送』したのに、結局[侵略者]は倒せなかった。栞奈にも…気遣わせちまった。傷ついてるあいつをひとりで実家帰すなんて、残酷だよな、俺…」
「烈…」
「本当は全部知ってるのに、なにも話してやれないのももどかしかったし、話せないなりにフォローしてやれればよかったんだけど、うまい言葉が出てこなくて…黙ってるしかできなかった。…影斗みたいに気の利いたこと言ってやれれば、栞奈も素直になれたんじゃないかって…」
同調するように黙って聞く影斗だったが、肩を落としながら吐露される烈の言葉に、次第に目を丸くしていく。
「今日一日、後悔してばっかりだ。もっと器用に生きたい」
そして最後にぽつりと漏れた愚痴を聞いて、耐えられずに影斗は噴き出した。
「珍しー。めっちゃ落ち込んでんじゃん。らしくねぇなぁ」
「…!? なんだよ、なんかおかしいかよ?」
「そうじゃねぇけど、なんか小難しいこと考えちまってるなーって、烈にしちゃ。頭より先に体が動く奴の口から、そんなしおらしい反省の弁が聞けるとは思わなかったぜ。いやー、やっぱ可笑しいかも」
「馬鹿にしてるだろ、お前…!」
烈は、けたけた笑う影斗へ声を荒げる。
影斗は憤慨する烈を手で制し、宥めながら続けた。
「お前は頼まれた通りに動いただけだろ、別になんも反省するところねぇよ」
「! だけど…影斗ならもっと上手くやれてたって思うと…」
「だからぁ、そん時にいねぇ俺と比べたところで"たられば"でしかねぇだろ、不毛なだけなんだからさっさと忘れろ。…お前最近、色々考えるもん勝手に増やしてるみたいだけど、慣れないことしてると自分追い込んじまうだけだぞ?」
「…っ」
「無いものねだりしてたって仕方ねぇだろ。今の力量の話は一旦置いとけ」
影斗は、なにやら思い悩む烈を軽い口調で一笑に付した。
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