ガイアセイバーズ8 -地中に潜む捕食者-

独楽 悠

文字の大きさ
9 / 70
本編

第1話_新たな歩み-7

しおりを挟む
川崎カワサキはひと息つき、改めて蒼矢ソウヤへ問いかけた。

「わかった。で…その別件についても、今はもうなんともないんだよな?」
「うん。全部終わった」
「それならよかった。話してくれてありがとう」
「俺のほうこそ、君たちには感謝してる。…本当にありがとう」
「ん?」
「ふたりがいてくれなかったら、こうして何事もなく過ごしてないかもしれない。…俺が今ここにいられるのは、君たちのおかげだよ」

言葉の意図が図れず、ぽかんとした表情を並べる川崎と沖本オキモトに、蒼矢はそれ以上語ることがないままくすりと微笑った。

「わるい。ちゃんとは伝えられないんだけど、感謝の気持ちだけは受けとって欲しいんだ」
「…? うん…まぁ、くれるっていうなら有難くもらっておくよ」

会話を重ねるとともに、蒼矢の表情から徐々に緊張がほぐれていった。
ふと素の表情になる彼から、内に溜まっていたのだろう本音がぽろりと漏れ出て来る。

「…俺は、自分に正直でいたかったから…影斗エイト先輩の望む関係には応えられなかった。俺も先輩も自身の想いは曲げられないから、どんなに代わりの言葉を並べたてても、傷つけてしまうことは避けられなかった」
「…」
「でも…先輩は、最後まで変わらず優しかったよ」

少し頬を染め、思い出される情景を噛みしめるように話す蒼矢に、川崎と沖本は黙ってうなずいてやった。


おおむねの目的部分を共有できたところで、少し早めのランチも食べ終え、おひらきの流れになる。

すっかりリラックスした表情の蒼矢とは対照的に、川崎と沖本はいまだに面差しを強張らせていた。
ふたりひそかにアイコンタクトを送り合い、言い出すタイミングをうかがう。

そして、蒼矢が空のプレートを手に席をたった瞬間、沖本が一声を放った。

「…髙城タカシロ!」
「ん?」
「…俺たち、もうひとつだけお前に確認しておきたいことがあるんだ」

洗いざらい事情を明かしたあとになっての問いかけに、蒼矢は立ったままふたりへ振り向き、小首をかしげた。
見当がつかないといった風な面持ちの彼へ、沖本はゆっくり問いかけた。

「……お前今、好きな誰かとつき合ってたりするのか?」

蒼矢は、やはりぽかんとしたままふたりを黙って見返す。

「……」

沈黙がおり、彼らをとり巻く空気の流れが止まる。
しかし川崎と沖本は、その時が止まったような空間の中で、見紛いようがない変化をしっかりと捉えることができていた。

「……!!」

ふたりの眼前で、蒼矢の白肌に差す赤みが頬から一気に広がり、首にまでおりていく。
今までにないくらいに見開かれた大きな瞳が、数回瞬いてから細かく震え、ふたりの視線から避けるように足もとへ落ちる。
なにかを言おうと桜色の唇が微かに開くがすぐに噤まれ、音声になる前に言葉は喉の奥へ飲み込まれる。

「…」

川崎と沖本は、蒼矢につられるように揃ってごくりと喉を鳴らしていた。
わずか数秒の光景だったが、その本人も制御しきれない感情の昂りを目にし、回答なき回答を得たのだった。


――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染は僕を選ばない。

佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。 僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。 僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。 好きだった。 好きだった。 好きだった。 離れることで断ち切った縁。 気付いた時に断ち切られていた縁。 辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。

レンレンは可愛い(*´×`*)四十路のおじさん♡Ωに覚醒しました!〜とにかく元気なおバカちゃん♡たぁくん爆誕です〜

志村研
BL
あるところに、高生さんという駄目なおじさんがおりました♡ このおじさん、四方八方に怒られてます。 でもちっとも懲りません。 自分らしさ炸裂にしか生きられなくて、分かっちゃいるけどやめられないんです。 でも、そんな人生だってソコソコ満喫してました。 \\\\٩( 'ω' )و //// …何だけど、やっぱりね。 色々もの足りなくて、淋しくて。 …愛されたくて、たまらなかったんです。 そんな時、Ωに覚醒♡ 高生さんの国では正斎子といいます。 これに成っちゃうと不幸になりがちです。 そんな訳で。 ろくな事をしない割に憎めないおじさんは、心配されてます。 だけど本人は気づきもせずに、ボケっとしてました。 そんなんだから、やらかしました。 そんな時に限って、不運を重ねました。 そんなこんなで、囚われました。 人生、終わった! もう、何もかもドン底だ! 。・゜・(ノД`)・゜・。 いや、ここからですよ♡ とにかく元気なおバカちゃん♡ 中欧のΩおじさん、たぁくん♡爆誕です! \\\٩(๑`^´๑)۶////

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...