37 / 70
本編
第8話_地中からの怪異-1
しおりを挟む
会計をすませてティーサロンを出た蒼矢とカレンは、次の行程まで再び海岸沿いの遊歩道を歩き、数分ほどで港へ隣接した商業施設へたどり着く。
赤いレンガで出来た建物周辺にはコンクリートスペースが広がっていて、丁度キャンプ用品を展示したり体験できたりするイベントが開催されていた。
アウトドアやキャンプ用の大型車両がつどい、ところどころにテントやタープなどが建てられ、大量のキッチンカーがそれらをとり囲うように、ずらっと一列に並んでいる。
「…素敵!」
イベントが開催されていることまでは把握していなかったのか、カレンは人々であふれかえるその光景と芳しいグルメの匂いに目を輝かせた。
本来は建物内のテナントを巡る予定だったが、ふたりは自然とイベント会場の方へ足が引きこまれていった。
「天気が良くてよかったわ」
「そうだね」
「ソウヤはキャンプやBBQは好き?」
「ほとんどやらないから、わからないな。君は普段からよくするの?」
「うん、週末には大学の友達とグランピングへ行ったり、ママの会社のBBQパーティに呼んでもらったりもするわ」
「へぇ…」
「英国ではBBQは日常よ! スーパーには串に刺した味付け済の肉が並んでるし、グリルでハンバーガーを作ったりもするの。ユイコさんを招待して、うちの庭でBBQしたこともあるのよっ」
「そうなんだ」
穏やかに相槌をうつ蒼矢へ嬉々として話して聞かせてから、カレンは鼻をすんすんと動かしながらキッチンカーの方へ視線をただよわせる。
「…見て、英国でも食べるような串焼き肉が売ってるわ。いい匂いね…美味しそう!」
「さっき食べたばかりで、まだお腹に入るの?」
「全然いけるわよ! デザートとはまた別に、お肉が入る別腹もあるのよ」
そう言ってウィンクすると、カレンはキッチンカーへ歩み寄っていく。
「…あ、会計は俺が…」
「いいの、払ってもらってばかりじゃわるいもの。安心して、日本円持ってるから」
ついていこうとした蒼矢を足止めして、カレンはひとりでカウンターでオーダーし始める。
やがて購入をすませた彼女は、少し頬を膨らませて戻ってくる。
手にのせられた紙トレーには、楊枝のささったブロック肉が盛られていた。
「失礼しちゃう。私の顔を見たとたん、串からお肉を外してしまったの」
「食べやすいようにしてくれたんだよ」
「…そうね。親切な人だったわ」
蒼矢からそうフォローされると、カレンは少し残念そうにため息をつきながら微笑を浮かべた。
気をとり直して楊枝をつまみ、ブロック肉を蒼矢へ差し出す。
「! え…」
「あーん」
「…!」
口元にカレンの指先を近付けられ、ふいをつかれた蒼矢は頬を染める。
彼女の満面の笑みに促されるように、ためらいながらも口を少しずつ開く。
赤いレンガで出来た建物周辺にはコンクリートスペースが広がっていて、丁度キャンプ用品を展示したり体験できたりするイベントが開催されていた。
アウトドアやキャンプ用の大型車両がつどい、ところどころにテントやタープなどが建てられ、大量のキッチンカーがそれらをとり囲うように、ずらっと一列に並んでいる。
「…素敵!」
イベントが開催されていることまでは把握していなかったのか、カレンは人々であふれかえるその光景と芳しいグルメの匂いに目を輝かせた。
本来は建物内のテナントを巡る予定だったが、ふたりは自然とイベント会場の方へ足が引きこまれていった。
「天気が良くてよかったわ」
「そうだね」
「ソウヤはキャンプやBBQは好き?」
「ほとんどやらないから、わからないな。君は普段からよくするの?」
「うん、週末には大学の友達とグランピングへ行ったり、ママの会社のBBQパーティに呼んでもらったりもするわ」
「へぇ…」
「英国ではBBQは日常よ! スーパーには串に刺した味付け済の肉が並んでるし、グリルでハンバーガーを作ったりもするの。ユイコさんを招待して、うちの庭でBBQしたこともあるのよっ」
「そうなんだ」
穏やかに相槌をうつ蒼矢へ嬉々として話して聞かせてから、カレンは鼻をすんすんと動かしながらキッチンカーの方へ視線をただよわせる。
「…見て、英国でも食べるような串焼き肉が売ってるわ。いい匂いね…美味しそう!」
「さっき食べたばかりで、まだお腹に入るの?」
「全然いけるわよ! デザートとはまた別に、お肉が入る別腹もあるのよ」
そう言ってウィンクすると、カレンはキッチンカーへ歩み寄っていく。
「…あ、会計は俺が…」
「いいの、払ってもらってばかりじゃわるいもの。安心して、日本円持ってるから」
ついていこうとした蒼矢を足止めして、カレンはひとりでカウンターでオーダーし始める。
やがて購入をすませた彼女は、少し頬を膨らませて戻ってくる。
手にのせられた紙トレーには、楊枝のささったブロック肉が盛られていた。
「失礼しちゃう。私の顔を見たとたん、串からお肉を外してしまったの」
「食べやすいようにしてくれたんだよ」
「…そうね。親切な人だったわ」
蒼矢からそうフォローされると、カレンは少し残念そうにため息をつきながら微笑を浮かべた。
気をとり直して楊枝をつまみ、ブロック肉を蒼矢へ差し出す。
「! え…」
「あーん」
「…!」
口元にカレンの指先を近付けられ、ふいをつかれた蒼矢は頬を染める。
彼女の満面の笑みに促されるように、ためらいながらも口を少しずつ開く。
0
あなたにおすすめの小説
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
レンレンは可愛い(*´×`*)四十路のおじさん♡Ωに覚醒しました!〜とにかく元気なおバカちゃん♡たぁくん爆誕です〜
志村研
BL
あるところに、高生さんという駄目なおじさんがおりました♡
このおじさん、四方八方に怒られてます。
でもちっとも懲りません。
自分らしさ炸裂にしか生きられなくて、分かっちゃいるけどやめられないんです。
でも、そんな人生だってソコソコ満喫してました。
\\\\٩( 'ω' )و ////
…何だけど、やっぱりね。
色々もの足りなくて、淋しくて。
…愛されたくて、たまらなかったんです。
そんな時、Ωに覚醒♡
高生さんの国では正斎子といいます。
これに成っちゃうと不幸になりがちです。
そんな訳で。
ろくな事をしない割に憎めないおじさんは、心配されてます。
だけど本人は気づきもせずに、ボケっとしてました。
そんなんだから、やらかしました。
そんな時に限って、不運を重ねました。
そんなこんなで、囚われました。
人生、終わった!
もう、何もかもドン底だ!
。・゜・(ノД`)・゜・。
いや、ここからですよ♡
とにかく元気なおバカちゃん♡
中欧のΩおじさん、たぁくん♡爆誕です!
\\\٩(๑`^´๑)۶////
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる