ミスキャスト!

梅津 咲火

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◇第二章◇   知人は友人になりますか?

第二十四話  「願いを聞いてくれないかな?」

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 使用人見習い2日目。
 とりあえず今日は、私は一人でお掃除を担当することになった。理由は簡単で、魔石を暴走させる可能性が一番ない仕事だから。……自分で振り返ってちょっと悲しい。

 メイド服はやっぱりまだ着慣れないけど、仕事着としてそのうち定着する……のかな?

 屋敷の庭の道をほうきで掃くことが終わったら、いったん朝ごはん。
 使用人の朝は早くて、掃き掃除が終わってちょうど遅めの朝ごはんくらいになる。それで、今朝なんて日の出と同時に起きなきゃいけなかった。

 アンナさんに起こしてもらえるように事前にお願いしておいて良かった。
 でも、いずれ自分で起きれるようにならなきゃいけないから、何か策を考えておかないとね。目覚まし時計とか売ってないのかな?

 朝ごはんは使用人用の控室で食べた。そんな部屋があるってこと、今日初めて知ったよ。

 朝食後は、またお掃除。今度は屋敷内を綺麗にしていかなきゃいけない。
 お屋敷の中は広いから、今日中に終わるかは時間との勝負。毎日これを使用人一人やってるみたいだけど……絶対、分身とかしないと終わらないと思う。

 ちなみに私はまだ新人ってことで、後で他の人が様子見とヘルプで来てくれるって。ちょっとホッしちゃった。
 さすがに一日だけで、今の私が掃除しきれるなんて思えないからね。……今後できるようにしていかなきゃいけないのには、頭が痛くなっちゃいそうだけど。

 窓ガラスの枠の上にあるホコリとか汚れを床に落とすために、パタパタとはたきで軽く叩く。
 掃除のコツは上から下に掃除をすること。そうすると、最終的に汚れが床に集まるから、効率がいいんだよね。

 これをやったら廊下に飾ってある花瓶を磨かなきゃ。高価そうだから、うっかり割っちゃわないように十分気をつけないと。

 頭の中で手順を確認しつつ、動きは中断しないようにする。時間がもったいないからね。

「……あ」

 どうして、ここにいるの?

 また彼と遭遇しちゃうなんて、私って運がないの?
 身を固くして見つめた先には、微笑む男の人が一人いた。

「久しぶりだね。どう? 調子は」
「……アル」

 数日前会った、アルと名乗った男がそこには立ってた。

 なんで、そうホイホイ会っちゃうのかな。ここって、ジョシュアさん達のお家で、外部の人ってあんまり招かれたりしないんじゃないの?

「生活には慣れた?」
「少しだけ」
「そうか、なら良かったよ。でもその割に顔色が悪いね。疲れが出てるのかな?」
「……」

 『たぶんあなたのせいです』なんて、面と向かってはさすがに言えないよね。
 言っちゃいたいような気持もあるけど、そこは我慢しなきゃ。ジョシュアさん達との知り合いでお客様なんだから、敵対しちゃうのは迷惑になるよね。

「その服、ここの使用人のだよね? 君って使用人になったの?」
「いいえ。あの、あくまで候補です」
「へぇ。正式になれるといいね。なれなかったら、私のところへ来なよ。君なら雇ってもいい」
「……考えておきます」

 できれば、それは遠慮したいな。どうしても止むを得ない最終手段かも。
 アルの傍だと、安心して仕事に取り組めないから。それ以前に、胸のうちがざわついて仕方なくなって、何もできなくなりそう。

 ところで、会った時からアルって私に対して友好的だよね。私は結構、距離を置いておきたくてそういう風に対応してるのに。
 ……どうしてなのかな?

「ところでリオン。私の願いを聞いてくれないかな?」
「……内容によります」

 突然、何を言い出すのかな? いきなりは難しいよ。仕事だってあるんだから。
 無条件で引き受けるのには、この人のことをわかってない。それに正直に言ってアルさんは信用できない。
 私の知らない場所へ連れ去って行ってしまいそうな、そんな底知れない怖さを彼からは感じているから。

「つれないね。そこは、いいですよって素直に引き受けてくれない?」
「無理です」
「リオンはそういった意味では素直だね」

 私の訝し気な視線を、アルは嬉しそうに笑っていた。
 ……結構素気無い態度をとっちゃってる自覚あるのに、気にした様子もなくて、それどころか笑顔なんて。

 …………あ、そっか。わかった。もしかしてアルって、あの、マゾ――

「違うよ」
「え」
「何かひどいことを考えたようだけど、違うよ」
「そうなんですか」
「そうだね。むしろ、私はイジメたい方かな?」
「……」

 ……それもそれで、どうなのかな。

 あと、どうして私が考えてたことがわかったみたいに否定してきたの?
 もしかして、心の中が読めちゃうとか? ……それはないよね。それとも、私の表情から読み取ったとか? それはそれですごいと思うよ。

「さて、君にお願いしたいことは一つ。難しいことではなく、単純で簡単なことだよ」
「なんですか?」
「私に、何か昼食を作ってくれないかな。もう、腹が空いて仕方ないんだ」

 その時、グウゥッとまるで鳴き声みたいな音が聞こえた。
 発生源の主は恥ずかしがる素振りもなくて、ニコリと綺麗に微笑んだ。

「……え?」
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