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◇第二章◇ 知人は友人になりますか?
第三十話 「綺麗……」
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空きの今日、どこへ行こうか迷ったけど、とりあえず王都で有名なところに行くことにした。
ここでしばらく生活するとしたら、知っておかないと困ると思うから。……それだけじゃなくって、素直に気になったっていうのもあるけど、ね。
地図上で、王都の中の名所の一つ。
あと、私が気になった場所なのは、異世界に飛ぶ前に会った人に関係があるかもしれない場所。
そこは、教会。正確に言えば大聖堂。
目的地の大聖堂はビル4階分の高さは余裕でありそうな、大きな建物だった。名前に『大』が入ってるくらいだから、当然なのかも。
市民にも一般公開されてるみたいで、入館料はとられなかった。
建物の中に一歩足を踏み入れると、目に飛び込んできた景色に言葉を一瞬失っちゃった。
「綺麗……」
透明感のある白い壁と、それに囲まれた色鮮やかなステンドグラス。幻想的で、神聖な空気を感じるよ。
ステンドグラスを通して日の光が、大理石みたいな白い床に七色の光のかけらを映してる。室内には明かりなんて全然ないけど、その光だけで十分。
照明なんていらない。むしろ、あったらそっちの方が邪魔になると思う。
ステンドグラスの中央にあるモチーフは、一人の男の人?
その周りに後光みたいに光のマークがある。その光が、それぞれ七色のガラスを使って表現されてる。
「あちらは、この世界の創造主であらせられる、ファロード神を題材にした物です」
「え……」
横からかけられた声は、女性のもの。声がした方を見ると、シスター服を身にまとった女の人がニッコリと微笑んだ。
「ようこそ、大聖堂へ。私はこちらのシスターとして神に仕えています。どのような悩みを抱え、こちらへ訪れましたか?」
「……ごめん、なさい。悩みがあってここへ来たわけじゃ、ないです」
首を振って否定した。ただ、単純に気になったから来てみただけだから。
私の答えに、女性は不思議そうに首を傾げてみせた。
「あら、そうなのですか? てっきり、救済を求めているのかと思いましたが。あなたは、迷い子のような顔をされています」
「……え」
迷い子って、迷子ってこと?
……たしかに、私は世界規模で迷子になっているといえばなってるけど。
「とても寂しそうな顔をされてるから」
「! そんなこと……」
ドクンと、嫌な感じで胸の中で動悸が激しくなった。
ない。そう言い切れたら、どんなにいいのかな。
私は、否定することなんてできない。
何を言えばいいんだろう。口ごもっちゃって、私は言葉を飲み込んだ。
それに、彼女は困ったように微笑んだ。
「気分を害してしまったかしら? ごめんなさいね」
「いえ……」
この人は、悪くなんてないよ。思ったことを指摘しただけ。
バクバクと鳴ってる心臓を、そっと深呼吸をして誤魔化して。私は話題を変えるために唇を動かした。
「この神様が、この世界を作ったんですか?」
「……はい。そうだと、伝えられています」
不自然な話題転換だけど、女の人はそれに何も言わずに乗ってくれた。
「他に、神様はいないんですか?」
日本だったら、八百万神なんていうくらい、たくさんの神様がいたのに。それにギリシャ神話だって、北欧神話だって、一人じゃなくて複数の神様が登場してた。
私の問いに、彼女は怪訝そうな表情を浮かべてしまった。
「? ええ……。他の宗徒はいません。認めたくはありませんが、邪神を崇めている集団は密やかに存在しているかもしれません」
「そう、なんですか。……ごめんなさい。遠くから来たから、宗教には詳しくなくて」
「ああ、そうなんですね。わかりました」
よかった、納得はしてないみたいだけど、邪神教徒だと勘違いされなかったみたい。
そんな勘違いされちゃったら、ややこしいことになりそう。それに、お世話になってるマクファーレン家の人達に迷惑をかけることになるよ。
彼女もホッとしたみたいで、笑いかけてくれた。
それにしても……。
「彼、一人しかいないなんて……寂しいですね」
「え?」
私が思わず呟いちゃった言葉に、彼女は目を丸くしてしまった。
そして、ふふふと小さく笑われる。
「おかしなことをおっしゃるのですね。ファロード神は全知全能の神であらせられるのです。俗世のような感情など、持ち合わせない崇高な存在です」
「……そう、ですか」
でも。私だったら、きっと寂しいよ。
もしも、一人だったら。周りに、誰もいないなんて。
異世界に送られる前にあった神様。あれがもしも、ファロードっていう神様だとしたら。
真っ白い空間に彼一人。
それってすごく、嫌じゃないのかな。
確かに、彼女の言うように感情を持っていなければ、耐えられるかもしれないけど。
「……」
目の前のステンドグラスに描かれた、彼を見上げた。そこには、慈愛に満ちた眼差しを浮かべる、一人の神様がいる。
私には、彼が泣いているみたいに見えた。
ここでしばらく生活するとしたら、知っておかないと困ると思うから。……それだけじゃなくって、素直に気になったっていうのもあるけど、ね。
地図上で、王都の中の名所の一つ。
あと、私が気になった場所なのは、異世界に飛ぶ前に会った人に関係があるかもしれない場所。
そこは、教会。正確に言えば大聖堂。
目的地の大聖堂はビル4階分の高さは余裕でありそうな、大きな建物だった。名前に『大』が入ってるくらいだから、当然なのかも。
市民にも一般公開されてるみたいで、入館料はとられなかった。
建物の中に一歩足を踏み入れると、目に飛び込んできた景色に言葉を一瞬失っちゃった。
「綺麗……」
透明感のある白い壁と、それに囲まれた色鮮やかなステンドグラス。幻想的で、神聖な空気を感じるよ。
ステンドグラスを通して日の光が、大理石みたいな白い床に七色の光のかけらを映してる。室内には明かりなんて全然ないけど、その光だけで十分。
照明なんていらない。むしろ、あったらそっちの方が邪魔になると思う。
ステンドグラスの中央にあるモチーフは、一人の男の人?
その周りに後光みたいに光のマークがある。その光が、それぞれ七色のガラスを使って表現されてる。
「あちらは、この世界の創造主であらせられる、ファロード神を題材にした物です」
「え……」
横からかけられた声は、女性のもの。声がした方を見ると、シスター服を身にまとった女の人がニッコリと微笑んだ。
「ようこそ、大聖堂へ。私はこちらのシスターとして神に仕えています。どのような悩みを抱え、こちらへ訪れましたか?」
「……ごめん、なさい。悩みがあってここへ来たわけじゃ、ないです」
首を振って否定した。ただ、単純に気になったから来てみただけだから。
私の答えに、女性は不思議そうに首を傾げてみせた。
「あら、そうなのですか? てっきり、救済を求めているのかと思いましたが。あなたは、迷い子のような顔をされています」
「……え」
迷い子って、迷子ってこと?
……たしかに、私は世界規模で迷子になっているといえばなってるけど。
「とても寂しそうな顔をされてるから」
「! そんなこと……」
ドクンと、嫌な感じで胸の中で動悸が激しくなった。
ない。そう言い切れたら、どんなにいいのかな。
私は、否定することなんてできない。
何を言えばいいんだろう。口ごもっちゃって、私は言葉を飲み込んだ。
それに、彼女は困ったように微笑んだ。
「気分を害してしまったかしら? ごめんなさいね」
「いえ……」
この人は、悪くなんてないよ。思ったことを指摘しただけ。
バクバクと鳴ってる心臓を、そっと深呼吸をして誤魔化して。私は話題を変えるために唇を動かした。
「この神様が、この世界を作ったんですか?」
「……はい。そうだと、伝えられています」
不自然な話題転換だけど、女の人はそれに何も言わずに乗ってくれた。
「他に、神様はいないんですか?」
日本だったら、八百万神なんていうくらい、たくさんの神様がいたのに。それにギリシャ神話だって、北欧神話だって、一人じゃなくて複数の神様が登場してた。
私の問いに、彼女は怪訝そうな表情を浮かべてしまった。
「? ええ……。他の宗徒はいません。認めたくはありませんが、邪神を崇めている集団は密やかに存在しているかもしれません」
「そう、なんですか。……ごめんなさい。遠くから来たから、宗教には詳しくなくて」
「ああ、そうなんですね。わかりました」
よかった、納得はしてないみたいだけど、邪神教徒だと勘違いされなかったみたい。
そんな勘違いされちゃったら、ややこしいことになりそう。それに、お世話になってるマクファーレン家の人達に迷惑をかけることになるよ。
彼女もホッとしたみたいで、笑いかけてくれた。
それにしても……。
「彼、一人しかいないなんて……寂しいですね」
「え?」
私が思わず呟いちゃった言葉に、彼女は目を丸くしてしまった。
そして、ふふふと小さく笑われる。
「おかしなことをおっしゃるのですね。ファロード神は全知全能の神であらせられるのです。俗世のような感情など、持ち合わせない崇高な存在です」
「……そう、ですか」
でも。私だったら、きっと寂しいよ。
もしも、一人だったら。周りに、誰もいないなんて。
異世界に送られる前にあった神様。あれがもしも、ファロードっていう神様だとしたら。
真っ白い空間に彼一人。
それってすごく、嫌じゃないのかな。
確かに、彼女の言うように感情を持っていなければ、耐えられるかもしれないけど。
「……」
目の前のステンドグラスに描かれた、彼を見上げた。そこには、慈愛に満ちた眼差しを浮かべる、一人の神様がいる。
私には、彼が泣いているみたいに見えた。
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