【完結】身代わりで男装した王女は宮廷騎士の手で淫らに健気に花開く

酉埜空音

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:身代わり国王の執務ー5:

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 ローテローゼは黙々と執務をこなした。
 そうすることで、なんとか平常心を保っていたと言っても良い。何かしていないと、心がバランスを崩してしまいそうだったのだ。
「陛下、少し休憩なさっては?」
 と、マティスが紅茶を運んで来る。
「……そこに置いといてくれる?」
「いえ、置くスペースがありません。こちらの丸テーブルまで陛下にご足労頂かねばなりません」
 へ、と、顔を上げれば、部屋の隅にわざわざ設置した丸テーブルでマティスがニコニコ笑っている。
「……さ、陛下こちらへ」
「でも……」
「すぐに来ないと、ここでキスして裸に剥きますよ」
 瞬時に真っ赤になったローテローゼは
きゃー、と叫んでるテーブルへと着いた。
「……はい、召し上がってください」
「いただきます」
 美味しい、とローテローゼの頬が緩んだ。

 そしてその日の午後、執務室に籠って書類と格闘しているローテローゼの元へ、宰相がやってきた。
 大荷物を抱えて入室してきた宰相の後ろには、もう一人誰かが居た。
 とっさにマティスが「誰だ」と言いながら腰の剣に手をやった。が、宰相が目線でそれを制した。
「落ち着きなさい、マティス。元老院議長だよ」
「はっ、失礼いたしました」
 マティスは、まじまじとその人物を見た。健康的な老翁だったのにげっそりと見る影もなくやつれてしまった元老院議長。心労の大きさを物語っている。深々と一礼して王の傍へやってきた彼もまた、大荷物を持っている。
「その大荷物は、何でしょう?」
 さすがにローテローゼが尋ねる。
「元老院の倉に押し込められていたものを発掘いたしました。古式ゆかしい古来よりの伝統衣装です。長らく仕舞いっぱなしでしたので、虫干しを致しませんと……」
 手伝います、と言いながらマティスが荷物を受け取り、手際よく衣装を並べる。
 けほ、と、誰かが噎せた。
「なるほど黴と埃の匂いがするな……とても着れたものではないでしょう」
 眉を寄せた議長が、失礼しますと窓を少し開けた。外からは、馴染みのある薔薇の芳香が飛び込んできた。
 ああ薔薇の香りだ、と、誰もが安堵する。
「議長、そのまましばらくあけておいて」
「陛下、承知いたしました」
「書類を飛ばさないように気を付けなくちゃ……」
 言いながらローテローゼが散らばっていた書類を手早く片付ける。
「虫干し、わたしも手伝うわ」

 にっこり笑って立ち上がったローテローゼは、ドレス姿ではなく国王の私服を着ている。
 髪も、首の後ろで一つに束ねてすっきりとしているし、ヘアアクセサリの類もない。そのため、パッと見たところ国王に見える。
 だが、シャツの袖を捲った腕は白く細いし、だいたいにおいて動きが大人しく柔らかいため、王をよく知る人物なら違和感を覚えるだろう。
「ローテローゼさま、今宵あたりからいよいよ謁見、出迎え、夜会、と人前に出る行事が増えて参りますな……」
 と、宰相がつぶやく。
「ええ、そうなのよ……。これは、避けられない執務よ」
「左様ですな……」
 ここまでは、それでも何のかんのと部屋に引きこもっていられたが、外国や国内の要人相手となるとそうも言っていられない。
「お兄さまの外交の場に同行していたから公的な話題にはついていけるけれど……」
 私的な書簡のやりとりをしているとか、ゆっくり歓談の約束があるとか、そういう『私的』な話題になったときが困る。意外と筆マメなベルナールがかわした膨大な書簡全てを読んでから対面するほどの余裕がないのだ。
「マティス、忙しいところ申し訳ないんだけれど、念のため、お兄さまの私的な書簡や日記がしまってある場所を調べて欲しいの。お兄さまのことだから、特記事項を、わかりやすくまとめているかもしれないわ」
 承知いたしました、と、マティスは頷く。
 しかし腹心の部下で幼馴染でもある自分と、双子の妹に日記や私的書簡を見られたと知れば、ベルナールはどんな顔をするだろうか。

――緊急事態、文句は受け付けませんのであしからず。

 マティスは胸の中でそっと呟いた。
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