【完結】身代わりで男装した王女は宮廷騎士の手で淫らに健気に花開く

酉埜空音

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:身代わり国王の執務ー6:

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「そういえば、お兄さまとアナスタシアの駆け落ち先はわかったの?」
 丁寧に衣装を広げながらローテローゼが言う。
 これには、元老院議長がため息混じりにこたえた。
「それが……ヴィーノルッツ州へ向かう道を通過したということしかわかっておりません」
「ヴィーノルッツ? 隣国との国境よね。国境を越えたのかしら?」
 ローテローゼが手を止めて首をかしげる。
「さすがに国を出たということは……ないとは思うのですが……」
「そうよねぇ。仮にも国王が、通行手形も持たず違法に国を出ることはないわよね……」
「と、思いたいですなぁ……」
 いかんせん駆け落ちですからな、と、宰相もどこか歯切れが悪い。
 それにしても、他国へ駈け込まれたら、探して連れ戻すのは困難になる。うっかり兵を差し向ければ戦になりかねず、要人を送り込むには先方の了解が居る。
 それにしてもなぜ国境へ? と、首を傾げたローテローゼがぽん!と手を叩いた。
「あ、そうよ! 国境の町、ロウサンテよ! そこに違いないわ」
「ローテローゼさま?」
「あのね、その町は――結婚するために親の承諾や許可書がいらない唯一の町よ。ある意味、貴族の令嬢たち憧れの土地よ!」
 あ、と、男たちも頷いた。
 そこは、現在はノワゼット王国の領土ではあるが、古来より、隣国サンテンス王国、ファヌ国、スカラー国の国境が複雑に入り組んだ町であり、町の所有権や国境をめぐっての争いが絶えたことがない。
 先々代の王が力づくでノワゼットの支配下に置いたものの、四つの国の文化や法律がごちゃ混ぜに存在し、一種の自治区となっている。
「さっそく、追手を差し向けます」
 元老院議長があわただしく部屋を出ていった。
「……二人が、無事に見つかると良いのだけれど……」
 ローテローゼが笑ったところで、忙しなく扉がノックされた。外務大臣からの急ぎの遣いらしい。ローテローゼは表情を引き締めてさっと机に座り、さっとマティスがローテローゼの姿を隠すように立ち、宰相がゆっくりと扉を開ける。
 転がるように部屋に飛び込んできたのは、若い男の役人だった。
「国王陛下の判断を仰ぎたいとのことでした」
 いきおいよく差し出された書類をマティスが受け取りさっと目を通す。それをローテローゼが静かに受け取る。その瞬間、その役人がわずかに首を傾げた。
「どうした?」
 思わずマティスが尋ねる。
「い、いえ、陛下が一瞬、ローテローゼさまに見えたもので」
「なんだって? おいおい、しっかりしろ。瓜二つの双子であらせられるとはいえ、男女の別があるぞ?」
「そうですよね……」
 役人は、ローテローゼの胸元あたりをじろじろ見ている。宰相が咳払いをすると役人は「失礼しました」と頭を下げる。
「どうだ? ベルナールさまが女性に見えるか?」
「いえ、マティスさま……巨乳じゃない、まっ平だ……」
「男性であらせられるからな」
「でも陛下は、こんなに髪が長かったかな?」
「ああ、戴冠式に古式ゆかしい衣装をお召しになることが決まって、急遽、付け毛をしているのだ。昔の王族方は、男女ともに、急所である首周りを守るために毛が長かったそうだよ」
 と、咄嗟に宰相が言う。
 内心動揺しながらローテローゼが書類を読む。宰相と二、三会話をした後サインをして宰相もそこにサインをする。それを受け取った役人は、苦笑いを浮かべた。
「ああ、寸分たがわぬ国王陛下のサインだ……なんで俺、陛下をローテローゼさまだと思ったんだろう」
 不思議そうな顔の役人が退出したあと、三人は大きなため息をついた。
「……ひやひやしたわね」
「はい……」
 身代わりも楽じゃない、と、全員が思った。
「ああもう、お兄さま、早く戻ってきて!」
「まったくもって、同感です」
 マティスが頷きながら窓の外へ視線を投げた。
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