【完結】身代わりで男装した王女は宮廷騎士の手で淫らに健気に花開く

酉埜空音

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:想定外は続くー1:

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「王位簒奪者よ、我に玉座と国を返すがよい」
 ばさりとローブを翻しながら、自称・先王の異母兄が玉座に突進してくる。すらりと剣を抜いたマティスが階段を下りて応戦する。それと入れ替わるようにして女性騎士たちが玉座に駆け寄り、守りを固める。
 ローテローゼは、硬直したまま動けずにいた。頭は真っ白になり、手足は小さく震える。周りの音が引いていき、目の前の出来事がゆっくりと動く。
 まるで現実味が感じられないが、襲われる恐怖だけははっきりとしていた。
「ほう、銀色の騎士――貴様が宮廷騎士だな。王族に剣を向ける無礼を平然とするか」
「その言葉、そっくりそのまま返す。ベルナールさまに剣を向けるとは無礼討ちにされても文句は言えないぞ」
 いよっノワゼット王国国王陛下、今日も綺麗だね、という、無礼かつ的外れな掛け声が某怪我人の皇子から飛んだが、それは綺麗に黙殺された。
 自称・先王の異母兄が剣を鋭く突き出し、マティスが剣の腹で弾く。弾かれた拍子に男の体が傾いたかとおもえば下から突きあげてくる。予測不能な剣の動きだが、マティスはそれらを完璧に防ぐ。
(マティス、頑張って……)
 ようやく指を組む余裕が出てきたローテローゼは、ただただ祈るような心地でマティスを見ていた。
 マティスの身に何かあったらどうしたらいいのだろうか。
(わたし、まだ何も伝えていない……!)
 人々が固唾をのんで見守る中、マティスはローブの男の剣を叩き落とし、呻く男の喉元に切っ先を突きつけた。その凛々しさに、ローテローゼは状況を忘れて見惚れてしまった。
「お前は――誰だ?」
 マティスが当たり前の問いかけをした。
「ふっ……我が名はエルフェ。先王の異母兄である。長らく、異母弟の手によってノワゼット王国最北端の離宮にとじこめられていた」
 ローテローゼは素早く宰相を呼んだ。
「陛下?」
「王国最北端に離宮なんてあった?」
「いえ……かつて離宮だった建物は存在しますが、今は、その土地の領主の館となっています」
「ならば……至急その土地を調べて。領主の無事とか……領主や民の素行を」
 承知いたしました、と、宰相が頷く。
「先王の異母兄殿下、その証は?」
 マティスが、硬い声で尋ねる。
「これだ」
 エルフェは、胸元に下げたペンダントを掲げて見せた。
「王の第一子のみが持つことが許されるペンダントだ。見ろ――この花は薔薇の花、エルフェだ。即位したあと、ここに複雑な印が刻まれて王印として活用するはずだったのだ」
 まさか、と、ローテローゼが息をのむ。
「さ、宰相」
「はい」
「アレが本物だったら……あの方は本当に、正当な王位継承者かもしれないわね」
 ローテローゼの肩に置いていた宰相の手に、ぐっと力が込められた。
「――ありえません。あってはならんのです」
 再び、マティスとエルフェが激しく剣を交え、ついにエルフェが膝をつきマティスがその背を膝で押さえつけて仮面をはぎ取った。
 見物人が、ざわついた。
「貴様――本当に先王の異母兄か?」
 マティスを睨みつける男の顔は、先王に全く似ていない。
 いや、それどころか――。

「いくらなんでも、若すぎる……」

 マティスが捕らえた男は、騎士団員に囲まれて連行されていく。だが、騎士たちも腰が引けている。本物の王だったら、大変な不敬にあたる。本能的に、身構えてしまうのだ。
 その奇妙な余韻が残ったままの謁見の間で真っ先に動いたのは、ローテローゼだった。
 すっくと立ちあがり、戴冠式での騒動、ヴァーン皇子重体、今回の騒動――これらについて、改めて謝罪した。
 自身の言葉で、自身の口から謝罪をしないと、気が済まなかったのだ。
 ローテローゼがはっきりと喋った途端に、まるで女のような声じゃないか、と、囁く声がある。ローテローゼはそれを否定せねばと体をそちらに向けかけたが、すぐに動きを止めた。
「ノワゼット国王、このたびはお騒がせしてすまなかった。いやはや、大騒ぎで楽し……いや、なかなかの大騒動だったね」
 と、割って入ったのは言うまでもなくヴァーン皇子だった。
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