異世界に来た俺の話

四季織

文字の大きさ
24 / 38

24 王都に戻る

しおりを挟む
 俺達は第二騎士団の馬車で王都へ帰って来た。
 俺が拉致されて、4日後のことだった。

 俺は丸一日薬で眠らされて、遠く離れた町の聖堂へ連れていかれていたんだそうだ。
 王都に戻って、念のため医者に診てもらったけど、薬を嗅がされた影響もなにもなかった。
 俺を聖女だと思っていたから、体に差し障る薬は使わなかったんだろう。


 俺が拉致された日。
 帰りが遅い俺を案じて、イオさんとオルは集まりがあった店まで迎えに来てくれた。
 ところがとっくに帰ったと言われるし、探しても俺は見つからない。

 イオさんは焦るオルを宥めて、国内の治安に当たる第二騎士団に捜索願いを出してくれた。
 と、同時に王都中の同郷ネットワークで声をかけたらしい。

 本当にイオさんには感謝してもしきれない。

 神殿を疑っていたユーシス殿下はすぐに俺の居所を掴んで、第二騎士団と早馬で救出に向かってくれた。

 で。
 第二騎士団から詳細を聞かされ、「救出を待つように」と言われた言葉を無視して、オルとイオさんは集結した村出身者と俺の救出に向かったんだって。
 なんと、全員走って。

「並みの馬は俺らが乗ったら潰れるからなぁ」
「まぁ、走った方が馬より速いしなぁ」

 え。馬より速いの? 人間が?

 何度も頭を下げてお礼を言う俺とオルに、初めて会うのに村出身者達は気さくで豪快だった。

「いいってことよ」
「気にするな」
「嫁さんが無事で良かったよ」

 あぁ。あの村の気質だな。
 俺はひっそりと涙を拭った。

「まぁ、村のやつの大事な嫁に手を出されたんじゃ、殲滅するしかないしなぁ」

 なんか不穏な言葉が聞こえた気がするんだが……気のせいだろう。
 


 それから、7日ほどしたあと。
 宿屋にいた俺達のところに、ユーシス殿下がやってきた。
 俺の体調窺いと説明に訪れたんだ。

 今は、眼鏡に職員風の装いに戻って柔和な笑みを浮かべてるのに、胡散臭くて仕方がない。
 オルがあんなにユーシス殿下を嫌がったのは、本能的にこの人の裏を察してたからなのかな。

 というか。
 市役所でアルフォガンプという名字を聞いたときに、王族って気づくべきだったんだそうだ。
 国王一家の名字で、この国の国名らしいから。

「お前達。自分の住んでる国の名前くらい知っとけ」

 あとからイオさんに呆れられたんだった。


 オルが警戒したまま俺を抱えて離さないので、ユーシス殿下には離れたソファに座ってもらった。

「まずは、お詫びとお礼を」

 ユーシス殿下は市役所で会ったときのように、穏やかに話し始めた。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る

桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

タチですが異世界ではじめて奪われました

BL
「異世界ではじめて奪われました」の続編となります! 読まなくてもわかるようにはなっていますが気になった方は前作も読んで頂けると嬉しいです! 俺は桐生樹。21歳。平凡な大学3年生。 2年前に兄が死んでから少し荒れた生活を送っている。 丁度2年前の同じ場所で黙祷を捧げていたとき、俺の世界は一変した。 「異世界ではじめて奪われました」の主人公の弟が主役です! もちろんハルトのその後なんかも出てきます! ちょっと捻くれた性格の弟が溺愛される王道ストーリー。

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

処理中です...