異世界転移した先は陰間茶屋でした

四季織

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番外編 勇者と聖女とおまけの俺1

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「ユーシス・アルフォガンプです」

 眼鏡をかけて上等な洋服を着た人は、温和な笑みでオーナーと俺に握手を求めてきた。
 これが王都から来た神殿の状況に詳しい人だった。

「第15王子殿下です」

 案内役のリロイ様が付け加える。

 え?!! 王子? 王子様?
 なにしれっと言ってくれちゃってんの、リロイ様!

 唖然とする俺の横で、オーナーと灯さんは全く動じてなかった。
 多分、灯さんは同行してくる段階で聞いたろうから分かる。

 オーナーだよ。
 そんな、ふぅんて顔で握手する相手なの? 最高権力者の息子だよ?

 それに、もう一人。
 ユーシス殿下の隣に座っていたのは、明らかに渡り人ですって顔をした爽やかイケメンだった。

「北小路颯人です」
「渡り人で、勇者です」

 ちょっ、ちょっと待ってリロイ様!
 紹介が雑! 落ち着いて?! 俺がな。

 なんで誰も動じてないの? 異世界転移のヒーローだよ?
 
 きょろきょろしてたら、目の端に頷く灯さんが見えた。
 多分同じ気持ちなんだろう。

 でも、この人も聖女だった。
 モブ渡り人って俺だけじゃん。


「小野灯さんには話をしたのですが」

 ユーシス殿下が先を続ける。
 王都で起こった神殿の事件、神官長が変わったこと、今後の神殿についてと灯さんの処遇、それらをざっと説明してくれた。

 それから、この店に来る前、孤児院に寄って灯さんの力の発動も調べてきたらしい。
 勇者と聖女は対だから勇者が力を貸してみたけど、雨を降らすほどの大きな奇跡は起きなかったそうだ。
 そのために、わざわざ勇者が同行してきたのか。

「宜しければ、ぽめ太さんにも一度ご協力願いたいのです」

 聖女の奇跡が起きたとき、側にいた俺が何か影響あるのか調べたい、殿下はそう言って小さな水晶を取り出した。
 魔力の波形を調べる魔道具らしい。

 まず殿下自らが触って安全をアピールしたのち、何故かオーナーが触った。

「どんな感じ?」
「んー、ただの冷たい玉だな」

 俺がおそるおそる触れてみても、確かに冷たいただの玉だった。

 俺の手の横に灯さんも手を乗せる。
 水晶が光ったり消えたり点滅を始めた。切れかけの電球みたいだ。

「ぽめ太さんに魔力はありませんね。力の増幅を促す影響もないようです」

 魔力があると水晶が光るのだそうだ。
 灯さんは間違いなく聖女の力を持っているけど、魔力が安定していないらしい。
 現に勇者がその玉を手に取ると、パァッと明るく輝き出した。

「すごーい!」
「へぇ、提灯より明るいんだな」

 言い方! もうちょっと驚いて、オーナー!
 さっきから何、この人、感動が欠落してんの?

「奇跡の発動については他にも確認してますので、もうしばらくご猶予ください」

 ユーシス殿下が締めくくったことで、ここでの用件は終わったようだった。

 あとは、渡り人同士で話をさせてもらった。
 勇者が俺達より年下ってこともそうだけど、なにより殿下が伴侶だってことが一番大きな衝撃だった。

 他にも親しい渡り人がいるようで、その人と連絡を取るためにスマホみたいな魔道具を技師と製作中らしい。
 さすが勇者になる男だ。イケメンってだけじゃなくて頭もいいんだな。

 ちょっと前に会ったばかりなのに、北小路くんと灯さんは、もう「颯人くん」「灯さん」って呼び合ってた。
 見た目と違って、灯さんって物怖じしないし打ち解けるのが早いんだよね。

 二人はしばらく領主の館に逗留して、視察もしていくらしい。
 こちらにいる間また会おうと約束して、北小路くんとユーシス殿下は帰っていった。



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