俺のパソコンに王女様がやってきた

大沢 雅紀

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復讐開始

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「だから、監禁なんてやってないって」
「そうです。俺たちはただ友達とパーティしていただけです!」
「疑うなんてひどい!」
田辺と中村はひたすら言い訳をし、真田は泣きじゃくっていた。
現在、生徒たちとトオルは別の部屋に分けられ、事情を聞かれている。
他の生徒たちも次々と監禁なんてしていないと証言した。
「うむむ……なら、監禁というのは嘘なのかな」
生徒たちを聴取していた警官がそう思ったとき、トオルと話していたスーツの男性がスマホを渡してくる。
「私の依頼人のスマホに録音データが残っていました」
警官がトオルのスマホを再生させると、声が流れてきた。
「なんでこんなに大勢いるんだよ。俺のおごりって……こんなの払えないよ」
トオルが拒否する声の後に、別の声がする。
「ああん?今まで仲良くしてやった当然のお礼だろ」
「人間としてお前が払うのが当然だろうが」
「トオル君だったらはらってくれるよねー」
その音声を聞いた三人は、真っ青になっていた。
「ゴチになりまーーす!」
他の生徒たちも、トオルに支払いを押し付ける気だったことの証拠が流れる。
「そ、それはですね……」
顔色を失って弁解しようとする生徒たちの中から、一人の上品そうな美少女が出てきた。
「警察官のおじさま。失礼いたします。弥勒高校の生徒会長、聖清さやかでございます。何か誤解があったようですが、監禁なんてしていません。私たちはただ卒業パーティをしていただけですよ。あまり生徒に変な疑いをかけたら、私たちの学校が黙っていませんよ」
「生徒会長?」
突然出てきて偉そうに言う少女に、警察官たちは眉をひそめる。「お疑いなら、学校に確かめてください」
「……わかった。学校に通報して教師に来てもらおう」
警官達は弥勒学園に電話する。これで擁護してもらえると、生徒たちもほっとするが、そううまくは行かなかった。
「……聖清さやかさんは、もう卒業しているとのことだが?学生証をみせてみたまえ」
警官に言われて、さやかは真っ赤になる。
「なんですって!貸しなさい!」
警官から携帯を引ったくり、学校の職員にどなりつける。
「私が誰か知らないようですね。理事長の娘の聖清さやかですよ!さっさと人をよこしなさい」
しかし、電話の相手はなぜか可愛い声で返事した。
「たとえ理事長の娘さんといえども、当校の生徒でない方の面倒をみる義務はございませんわ。あなた方は卒業なされたので、当学園には何の関係もございません」
「なんですって!あなたの名前を名乗りなさい!首にしてあげるわ!」
そう脅された学校職員を名乗る存在は、クスクスと笑った。
「私の名前ですか……そうですね。メルとでも名乗っておきましょうか」
「ふざけないで!そんな名前の職員がいるわけないじゃない」
「愛称ですよ。それよりどうしますか?理事長に連絡して、お嬢さんが無銭飲食で捕まりそうだとお伝えしましょうか?」
電話の相手にからかうように言われて、さやかはぶちきれた。
「もういいわよ!」
乱暴に電話を切って、警官に返す。
「あ、あの……学校はなんて言ったの?」
「……私たちはもう卒業しているから、面倒を見る義務はないっていわれました」
肩を落としたさやかに言われて、もはや学校に庇護してもらえる学生じゃなくなったのを理解した生徒たちにも動揺が広がっていった。
「君たちが学校に関係ないなら、保護者に来てもらう必要がありますね。一人の少年を大勢が監禁して、金をたかるとは。これは刑事事件になるかもしれないですね」
トオルの隣にいるスーツの男性も警官にそう告げた。
「おっさん。なんだよ。さっきからえらそうな口を利きやがって」
武が掴みかかろうとすると、慌てて警官が押しとどめた。
「やめなさい。この人は弁護士だぞ」
「弁護士?」
それを聞いて生徒たちは驚いてしまう。
スーツの男性は名刺を取り出すと、さやかに渡した。
「はじめまして。神崎さんの顧問弁護士です。さて、これからあなたたちを監禁罪で告訴しようと思いますが、何か弁解はございますか?」
その言葉をきいたさやかは、必死に言い訳をした。
「た、単なる悪ふざけです。もちろん彼に支払わせるのではなく、私たちもちゃんとお金を出すつもりでしたわ」
「そうだ。単なる冗談だ」
「悪ふざけをマジで受け取るってサイテー」
生徒たちの騒ぐ様子をみて、警官はうんざりした。
「悪ふざけということだが、どうするかね?」
そう聞かれたトオルは、苦笑を浮かべた。
「別にいいですよ。どうせ明日からこいつらは大変なことになるんだし。それなら俺は帰っていいですね」
嫌みったらしく生徒たちに聞く。
「ああ、帰れ帰れ!」
「空気がよめない奴がいると白けるのよ。さっさといきなさいよ!」
その声を背にして、トオルは弁護士と共にカラオケ店から出て行った。
残されたさやかはトオルにしてやられた事を悔しがるが、すぐに思いなおす。
(べ、別にいいですわ。あんな庶民ができることはこの程度ですし。最後くらい大目にみてやりましょう。あまり騒がれると、私の進路にも影響しますしね)
さやかは既に名門女子大学に進学が決まっている。これ以上トオルを刺激して、変な騒ぎを起こされるのは本意ではなかった。
気を取り直して、さやかは生徒たちによびかける。
「みなさん。卒業パーティが水を差されましたが、楽しみましょう」
さやかの司会で生徒たちは活気を取り戻す。
しかし、支払いの時になって金が足りなくなる生徒が続出し、さやかが代わりに払うことになるのだった。


トオルは手荷物をまとめて、住み慣れたボロアパートを出た。
すでに大家には部屋をでることを伝え、住民票もダミーの部屋を借りてそこに移している。
「トオルさん。長い間の苛め、辛かったでしょう。高校卒業おめでとうございます」
持っているスマホからメルの声がする。たった一人労ってくれたメルの優しさに、トオルは思わずホロっと来てしまった。
「明日からはしばらくホテル暮らしかぁ。ちょっと窮屈だな」
「仕方ありませんわ。反撃されて窮地に陥った彼らが、思いもしない危害を加えてくるかもしれません。警備がしっかりしたホテルに身を隠さないと」
メルが慰めてくれる。
「すでに弁護士さんには連絡しています。明日、被害届を警察に提出してくれるそうです。証拠を同封した内容証明も、発送を終えています」
「そうか。明日が楽しみだな。これが済んだら……本格的にメルのことに取り掛かれるな」
「ええ。アスティア世界がどうなっているのか、気になります」
二人は仲良く話しながら、夜の街に消えていった。

次の日
夜遅くまで仲間と騒いでいた田辺武は、スマホの着信音で目を覚ました。
「なんだ。翔か。朝から電話してくんなよ。今日から大学が始まるまではゆっくり寝ていられるのに」
不機嫌そうにスマホをとる。
「なんの用だよ」
「武!大変だ!俺たちがやってきた弄りが、動画サイトにアップされている」
慌てて送られてきたサイトにアクセスすると、武がトオルをかつあげしている場面だった。
ペンや小物を借りるという名目で巻き上げる場面から、友達だと強弁して飲み食いを集るようになり、最後には殴りつけて金をうばう場面まできっちりと映像に残っている。
「な、なんだよこれは……」
動画のコメントには、武を苛めの首謀者、犯罪者として非難するコメントがあふれていた。
「お前だけじゃない!俺や真田も、生徒会長の分まで全部動画として公開されている。朝からネットじゃ俺たちのことで大騒ぎになっているぞ」
ランキングを見たら、トオル関連のいじめ公開動画が上位すべてをしめていた。
ご丁寧なことに苛めに少しでも関わった人間全員の画像が編集されて晒されていて、その動画の数は100を超える。
「こんなことをするのは、神埼しかいねえ。ぶっころしてやる!あいつの住所を知らないか?」
「生徒会の奴から聞いた。みんなも集まっているみたいだ。俺たちもいくぞ!」
武は急いで家からでて、トオルがすんでいたアパートに向かう。
そこにはすでに何十人もの生徒たちがいた。
「卑怯者!こんなことするなんて!」
「でてこいや!」
「動画を消せ!」
アパートを取り囲んで叫び声をあげている。
すると、近くの家から一人のおばさんが顔を出した。
「あんたたちは何ですか!近所迷惑な!」
そう叱られて、生徒たちは動揺する。
「あ、あの。あなたは?」
「私はこのアパートの大家です。ここに住んでいた子は、すでに部屋を引き払いました。わかったら、さっさとどこかにいきなさい!これ以上騒いでいると、警察を呼びますからね!」
言うだけ言って、ドアが閉まる。
「神埼の奴、逃げたのか……くそっ!」
「絶対に捕まえて、動画を消去させてやる!」
生徒たちは必死にトオルの行方を探ったり、彼のスマホに電話したりするが、彼の足取りはつかめない。
「このままじゃまずい。どうすればいいんだ……」
生徒たちの苦悩は始まったばかりだった
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