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30. 新しい人形

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「うーん、やっぱりオオカミもいいけどここは狐かな?」
と人形の完成形を想像する。“作成”スキルを使えば確かに人形の完成形を作ることは容易いがそれでは愛着が湧かない。だからこそ、僕は材料までしか出さないようにしているのだ。
そうして僕は作成スキルによって、数種類の色の布と糸、それに綿を作成し、製作を始めた。
「ただいま~ナギエいる~?」
しばらく集中していると、クロエが帰ってきた。
「あれっ?何やってるの?」
と僕の手元を覗き込み、
「…ぬいぐるみ…?」
と言葉をこぼす。
「うん、久しぶりにね。最近面白い事も無いしさ、こうやって暇潰しになることしないと暇すぎて色々とやる気が下がりそうだしね。」
と言いながら僕は手を動かす。ちくちくと尻尾の部分を縫う。
「ふぅん、そうなんだ。じゃあ私ちょっと出かけて来る。」
と言って彼女は出かけていった。そうして4時間後、
「よし…できた…疲れた…」
僕の目の前には9本の尻尾を持った真っ白な狐のぬいぐるみがちょこんと座っていた。
「ふ~できたー!」
と言いグイーっと伸びをする。背骨からバキバキと音がする。大体この音を聞くときはルイトのどこかしらの関節が大変なことになっているからこういった形でこの音を聞くのはなかなかに新鮮だ。
「この子の名前はどうしようかな…狐…確か外国だとフーシエンとか言ってたな…じゃあシエンにしようかな…よし、君のことは“シエン”だ。」
と言うと、シエンと名付けた狐のぬいぐるみの目の部分につけている真っ黒なボタンにはっきりとした光沢があらわれた気がした。
「ん~そろそろ晩御飯の時間か…よし、シズー、ご飯だよ~。」
とシズを呼ぶ。
わしわしと喉元を掻いてやる。
「お前はまだ小さくて可愛いなぁ。いつになったらおっきなドラゴンになるのかねぇ。」
と言うと、
「え?シズならもうこの校舎よりもおっきいよ?」
とシズが言った。
「あれ?シズって喋れたっけ?」
と言うと、
「私とクロエさんの2人で教えましたよ。」
とダイヤが言う
「え?マジで?僕なんかより全然親できてるじゃん…僕のいる意味って…」
と、項垂れていると、
「そ、そんな落ち込まなくても…」
とダイヤがと言い、
「そ、そうだよ、ナギままはいてくれるだけでもいいんだよ。」
とシズも言ってくれる。うぅ…自分の子供に慰められる親って一体…と考えていると
「そうですよ!あなたがいるだけでも救われる人だってきっといますよ!」
と聞きなれない声がする。
ん?と思い後ろを向くと、シエンが宙を浮かんでいた。
「えっと…一応確認だけど、今の声はシエンでいいんだよね?」
と、問うと、
「はい、もちろん私です。ナギエさん。これからもよろしいくお願いします。」
と礼儀正しい口調で自己紹介をした。
「うん、これからよろしく。」
と自己紹介をする。
「ただいま…て…えぇ!?ふ、増えてる…ダイヤみたいなのが増えてる…か、可愛い…」
とクロエが言う…どうやらクロエが帰ってきたようだ。
「クロエ、おk「ちょっと⁉︎何なんですかあなた?」
「わーふわふわだ~」
…どうやら僕らのことは眼中にないらしい。
「…クロエさん、お帰りなさい。そろそろ夕食時ですのでナギエ様とご一緒に夕食を食べに行かれてはどうですか?」
とダイヤが提案してくる。
「そうだね。じゃあナギちゃんいこっか。」
とその提案をのんで僕を誘ってくる。まぁいいけどその前に…
「どこにいくんですかぁ~っ!は、話してください~」
とクロエの腕の中でシエンがもがく。
「あ、後で好きなだけも触ればいいからさ、ちょっと一回置いてってもらってもいいかな?」
と言うと、
「な、ナギエちゃん!?売るの?私のこと売っちゃうの?ねぇ、それはちょっとひどくないですか?いっくら生みの親とはいえそれは許されなくないですか?」
とシエンが叫ぶ。
「はいはい。じゃあ早く行こうか、ほらシエンを離して。ご飯行くよ。」
と言うと、渋々だが、手放して僕と一緒に食堂へ向かう。
「で?今日はどこに行ってたんだい?」
とクロエに今日あったことを聞いた。
・一方その頃ナギエ&クロエの寮室
「はぁ、はぁ、何?今の…」
とシエンは肩で息をしながら先輩であろうオオカミのぬいぐるみに聞いていた。
「彼女はクロエさん。ナギエ様のご友人であり、ルームメイトの方ですよ。」
と説明してくれた。
「ありがとうございます…えと…」
と言葉を詰まらせるシエンに対して
「私はダイヤです。ぜひ、ダイヤとお呼びください。」
と言う
「ご丁寧にありがとうございます。あのついでなんですけど、あの綺麗な龍は?」
「あぁ、シズさんのことですね。彼女は結晶龍のシズです。彼女はそうですね…ナギエさんの娘さんという認識でよろしいかと思います。…それよりも一つお願いをしてもいいでしょうか?」
と言われ少し身を硬くしながら、
「な、何でしょうか?」
と聞くと、
「あなた、“化ける”ことはできますか?」
と聞かれた。化ける…変化するということだろうか。
「…やってみます。」
と言い、私はイメージをする…そして身体中に魔法力を通して目を開ける…すると、
「あれ?目線が少し高い?」
と言い、下を見ると人間の足があった…
「えっと…これはどう言うことでしょうか?」
とダイヤに聞くと、
「完全な“人化”ではありませんが、きちんとできていますよ。」
と言い、私に手鏡を見せてくる。そこには焦茶色の長髪に狐の耳をはやし、9本の尻尾を持った可愛らしい幼女が写っていた。
「えと…これ私ですか?」
「はい、あなたです。」
わ、私って人…というか獣人になれたんだ…えへへ…よぉしこれで私を売ったナギエちゃんを驚かせてやろう!と私は構想を寝るのだった。
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