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62. 初めまして。ミナトです。

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「だぁああ!疲れたぁ。」
と叫び僕はゴロリと用意されていたベッドに寝転ぶと、自分の手を見た
「本当にこの世界にこの体で生きることができるとはな。」
と呟く。眺めていた手を握り、腕で目の当たりを覆う。
「クロエ。君が本当に…ノヴァンタールの血筋だとしたら…」
と呟き、僕は眠りについた。

・翌日…
「誰だテメェ?」
僕はもらった学生服に袖を通し、扉を開くとそこには銀色の髪をしたオオカミの耳を持った人がいた。
「あ、おはよう。」
と挨拶をするがその獣人は
「いや誰だよ。」
と言った。そこで思い出した。
「ああ、そっか。今は僕、ナギエじゃなかったな。」
「はぁ?何を言っているんだ?」
「ああ、悪い。こっちの話だ。…俺はミナト。平民だ。」
「なんだ。平民か。あ、俺はルプス・フォン・フェルナンデスだ。よろしく。」
「あ、うん。よろしく。」
と言い僕は手を繋ぐ。…本当は名前知ってるんだけどと言う言葉は黙っておく。そうして僕は食堂に行き、朝食のプレートをもらうと、見知った顔…ルイトがいた。
「おはよう。ルイト。よく眠れた?」
「ああ。お前も…ってそんなこと気遣うまでもないか。」
と言いながらパリッとホットドッグを齧っていた。ちなみにだが、今日の朝食はホットドッグとミニシーザーサラダ、コーンスープとオレンジジュースという物だった。ホットドッグの中に入っている腸詰がパリッとしているしハーブが効いているしで美味しかった。もぐもぐうまうましていると、
「そういえばさ、お前何か感じないか?」
と、ルイトが聞いてきた。そう言われて周りを見渡してみるが、食堂にあまりこれと言って変化はない。
「わからないな。何か変わったか?」
と聞くと、
「まず考えてみてさ、1人部屋って今まであり得なかったじゃん。」
「…そういやそうだったな…」
と言う。確かに今まで僕らが入っていた生徒寮は基本2人で一部屋なのだが、今僕は1人部屋だ。まあ新しく入ってきたから1人部屋だったのかな?と思っていたのだがどうも違うらしい。
「まあ早い話、寮が変わったんだよ。ほら模擬戦の判詞があったじゃん?」
「ああ、確かフォーレッタがバカやって模擬戦で貴族チームが勝ったら、平民は強制自主退学しろ…だったっけ?」
「そうそう。その事後なんだけどさ、平民が勝ったらどうなるかを決めてなかったじゃん。」
「…そういえばそうだったな…」
と記憶を遡る。確かにそんな話をした覚えはない
「それでナギエ達が寝ている間に、僕らが話をつけて貴族用の学生寮と、平民・低位貴族寮を入れ替えてやったんだよ。いやぁ、あの時のフォーレッタの顔ときたら…本当痛快だったよ。」
と一緒に朝食を取っていたルプスが言った。
「あっ、俺のセリフとんなよ!」
「おお、わりーわりー。」
と2人が騒いでいると、
「そこの3人!そろそろ出ないと授業に間に合わなくなるよ!」
と寮母さんに言われ、時間を確認する。周りでまだ朝食を片付けていないのは僕らだけだった。
「「や、ヤベェ~!」」
と2人は叫ぶ。
(全く、何やってるんだか…転移魔法使えるの黙っておこうかな?)
と思う今日この頃だった。
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