転生したら、周辺環境がクソだったので、人形と共に改革していく 〜せっかく転生したのならゆっくりのんびり生きたい〜

92． 異変①

「ラ、ラオ？本当にラオなの？」
とナギエは震える声で再度聴いた。
「はい。お嬢様、それにご学友の皆様ようこそ。私、この屋敷で執事長をしておりますラオと申します。」
とラオが頭を下げる。
「ず、随分とお元気ですね。あの失礼ですが年齢は？」
とステラが恐る恐るといった風に聞くと、
「そうですね…お嬢様が今、高等部ですから…大体83ぐらいですかね？」
と首を傾げながら言った。
「随分と長生きだな…俺の村の長老ですら70歳ちょいで死んだのに…」
とルプスが驚いていた。
「そうだね。でも最近はアリア領内だと平均寿命が急激に伸びてね、最近は神子様が生まれたんじゃないかとまで言われてるんだよ。」
と言いながら1人の男性がこちらにやって来た。
「お父さん！ただいま！」
とナギエが言う。
「おかえり。大きくなったな。」
と目を細める。
「あら？もう帰ってきたの？予想よりも早かったわね。」
と赤いワンピースを着た女性が部屋から出てくる。
「お母さんもただいま。」
「おかえり。そっちの子たちはお友達？」
と聞かれたので、
「初めまして。ミナトと言います。」
「初めまして。ルプスです。」
と僕とルプスが挨拶をする。
「初めまして。ナギエの母のレイテシアです。シアって呼んでね。」
とシアさんがニコっと笑った。
「ルプス君は多分アステルヤードさんの所の子かな？初めまして、ナギエの父のシェルホードだ。シエルでいいぞ。」
とナギエのお父さんも自己紹介をした。
「あ、そうだ。ねえお父さん、東の森にある廃屋まだ残ってる？残ってるなら使いたいんだけど…」
とナギエが思い出したように言うと、
「ああ、ただあそこはだいぶ埃っぽいぞ？」
「私たちが片付けるから大丈夫。ね、クロちゃん？」
「そうね。」
「え？君、クロエかい？これはまた美人になったな。お父さんたちきっと喜ぶよ。もう顔は出したのかい？」
「いえ。これから行こうと思ってます。」
「そうか。まあこれに関してはとやかくは言えないからな。」
と言うとシエルさんは鍵束の中から一つの鍵を外し、ナギエに持たせた。
「これが言っていた鍵だ。じゃあ言っておいで。」
「今晩はみんな一緒にお夕飯を食べましょうね。うちの料理長が腕を振るってくれるそうよ。」
と言いシエルさん夫妻は僕らを送り出してくれた。
「わかった！行ってくる！」
そうして僕らは屋敷を出ると、ナギエの“ゲート”を使ってその廃屋まで一気に移動した。
「ここ？」
とステラが聞く。
「そうだよ！エリクドラ来る前はよく放課後にここで過ごしてたんだ。木漏れ日が窓から差し込んできて結構いい所なんだよ。」
と言いながら近ずく。
「なあ、なんか話し声が聞こえないか？」
とルプスが言う。それを聞いて僕は探知魔法を使う。
「確かに誰かいるね。7…いや8人かな？」
と言っていると、
「誰だ？」
と中から数人武装した人が出てきた。全員フードを目深にかぶっていて顔は見えなかったが、ヒシヒシと敵意だけは感じた。
「これは和解とかは無理な感じかな？」
と言うと、
「物分かりが良くて助かるな。じゃ、死んでもらうとしよう。」
と真ん中にいるリーダー格の男がどこからか大剣を取り出した。
「ルイト、前衛1人だけで大丈夫そうか？」
と聞くと、
「サポートしっかりしてくれよ？」
と返ってきた
「悪いけど、あんたたちに殺られるような人間じゃないの。」
とナギエが啖呵を切る。
「あなたは後衛でしょ。」
とクロエが冷静なツッコミを飛ばした。
「ふざけやがって！まずはお前から血祭りに上げてやる！」
とリーダー格は大剣を振り上げた。