おいでませ!?DIVERPG世界でセカンドライフの時間だよ!

祁季みのる

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■第1楽章:融合した世界

EPISODE 13:研究所攻防戦

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 トネリコ達が行動を開始頃合い、“旧九州地方”にある“第六機関議長・マロン”の研究所でマロンは少しイラついた感じでいた。


「まさか、4番目の被験体が殺られるなんてっ……!それなりに、上手くいっていた被験体だったのにっ!」


 マロンは机を強く叩いては、残っている3人の被験体の資料を見ては傍にあった地図を見ては焦った表情をしていた。


「早いうちに“桜花浪漫”を潰さなきゃいけないわ……、その為にも3体の被験体を向かわせないといけないけど……まだ、調整中……」

「それならぁ、いい“薬”を渡してあげるわよぉ?」

「!?、シャルロットじゃない?こんな所に来るなんて、珍しいわね?それに、“薬”って何を持ってきたのよ?」

「ふふっ、マロンちゃんの実験にとって必要なモノよぉ?安定しないんでしょ、“マナ”と“フラグメント”が波長が合わなくてぇ?それを安定させて、定着させてくれる“薬”を分けてあげようかなぁーと思ってぇ?」


 シャルロットはソファに寝転がりながらも、手に持っていた紫色の小瓶をマロンに見せるように妖しく差し出すと、マロンは紫色の小瓶を受け取り息を飲むように小瓶を見つめていた。


「これはぁ、シャルロットちゃんが作ったわけじゃなくてねぇ?クーロン統括議長がくれたんだけどぉ?だ・か・ら、条件付きでマロンちゃんにあげるぅ!」

「条件付き?いったい、どんな条件かしら?」

「ふふっ、3番目を貸して欲しくてぇ」

「いいわ、それを貸してあげるわ!クーロン統括議長が作ったモノならば、確実に成功するのは確かだものねっ」

「あはっ、話が早くて助かるぅ~!」


 シャルロットは深い笑みを浮かべては、マロンが奥の部屋に入っていくのを確認すると妖しく嗤うとソファから立ち上がる。


「この混乱にまざって、アンタを殺してあげるわ……トネリコ」



 トネリコ達が“旧九州地方”の上空へと辿り着くと、大陸の中心辺り大きな研究の建物が見えてくると建物の屋上に魔導空挺を停める。


「フェイトくん、オズくん」

「はい!」

「どうしました?」

「もしも、自分達の身の危険を感じたら脱出を優先にしてね?」

「わかった!」

「ちゃんと、トネリコさんを抱えて逃げますから大丈夫ですよ」

「じゃあ、潜入しようっか!優先的な目的は、可動させようとしている被験体にされている人達の停止だからね?」


 トネリコ達は建物の中へと入ると、静か過ぎる程の不気味な静寂があってトネリコ達は警戒しながらも地図を確認して保管庫へと急いだ。

 早めに停止をさせなければ、スノウのような人を増やしてしまう。


「(絶対に、スノウ以外の犠牲者を出したらアカンのやっ)」

「此方です」

「この先は、2つ道が分かれているね」

「左側の通路の先は、厳重にされているみたいですね」


 オズワルドが端末で内部の地図を確認していると、二つの道があり左側はロックのマークが記されていた。


「なら、この左側は特に大事な場所って事だから……危険もあるね」

「じゃあ、オレは右側の方に行って実験体にされていない子供達を助け出すよ!転送石があるから、子供達を連れ出せるから」

「じゃあ、アタシとオズくんで厳重にされている方に行ってみようっか」

「そうですね。もしかしたら、そっちの方に被験体にされた人達が収容されている可能性があると思いますから」


 トネリコ達は互いを見てから小さく頷き、フェイトが右側の通廊へと走っていくとトネリコとオズワルドは右側の通廊へと歩みを進める。

 右側の通廊を歩いていると先程の道よりも暗く機械的な壁などが増えていき、その光景は無機質で冷たい空間なんだと誰でも分かるようなものである。


「トネリコさん」

「オズくんっ?」


 オズワルドは何かを感じて前を歩いていたトネリコを片手で引き寄せると、奥の道から薄めの緑色の髪色でオカッパな髪型をしており薄めの茶色の瞳色をした少しツリ目をした少女と、灰色の髪色のショートで頭には折れて短い2本の角があり、切れ長なツリ目をした青色の瞳色をしている青年が此方を睨んで見ていた。


「ミュウ、侵入者だ」

「えー、面倒くさいよーエルク」

「でも、やらないと」

「はいはいー、お兄ちゃんは寝てんの?」

「まだ、寝ている」

「まったく、お寝坊だなー」

「キミ達は?」

「ボク?ボクは、2番目の被験体“ミュウ”だよ!おねーさん達は、ボク達に処分されるんだから覚えていなくてもいいけど!」


 ミュウは満面な笑みを浮かべては大きなハサミのような双剣を持ちトネリコへと向かうが、オズワルドが刀剣で防ぎ回し蹴りをミュウに食らわせるがミュウはハサミで防いで軽く後ろへと跳んで回避する。


「君達の相手は、俺がします」

「優男じゃん!へぇ、ナイト気取り?」

「どう思われても、全然気にしてませんので」


 オズワルドは刀剣を軽く左側へと振れば、エルクの槍を防いで空いている手に手斧を持ちエルクへと下から振り上げるとエルクは回避するがエルクの左腕を掠めていく。


「コイツ、強い感じがするんだけど!」

「本気を出さないと、いけないかもしれないな……ミュウ、いけるか」

「ボクは、全然!エルクは?」

「……多分、大丈夫」

「オズくん、気をつけて……多分、同じ感じがするから」

「わかってます。そうなる前に、瞬時に終わらせるつもりでいますから」


 トネリコが心配そうに呟くと同時に、オズワルドは身を低くして見えない動きとなりエルクの後ろに立っていて血のついた刀剣を振るうと同時に、エルクは軽く首を傾げると同時にエルクの首は切り落とされ床へと落ちると心臓を貫かれていた身体も床へと倒れ込む。


「エルク!?」

「君も楽になりたいでしょ?……おやすみの時間だ」

「っ!?」


 オズワルドは無表情でミュウの胸を刀剣で貫いていて、ミュウは悔しそうで何処となく安堵したような表情をして軽く吐血する。

 オズワルドが刀剣を抜くとミュウは床へと倒れていき、オズワルドは倒れたミュウを見てから奥を軽く睨んで見ていた。


「居るのは、わかってますよ」

「驚いたなぁー、騒がしいから何だろうと思ったら……そっかぁ、先生の知り合いが言ってた内容のやつが来たのか~」


 奥の厳重に閉ざされていた扉は開いており其処から、黒いフード付きのコートを着た凄く背の高い青年だった。
 だが、明らかにオズワルドは先程よりも空気がピリついている事に気付いているからなのか警戒は鋭くさせている。


「アナタが、最後の被験体かな?」

「あぁ、そうだけど?ってか、声に気付かないわけ?オズワルド、……トネリコ」

「?」

「どういう事ですか」

「オズくん?」

「本人は居ますから、これは何かしらの技術なんでしょうけど……反吐が出るな」

「ククッ、そう苛つくなよ」

「!?」


 黒いフード付きのコートを着た人物はフードを外すと、その姿は黒紫色をしたロングウルフカットで尻尾を三つ編みにしており、切れ長なキツめのツリ目をした暗めの青緑色の瞳をしている凄く背の高い青年だった。

 その姿は、“ホムンクルス化”する前のレーヴェだった。


「どういう、事……」

「俺は、俺だけど?トネリコ、忘れたのか?あんなに、長年と一緒に冒険してきたじゃん?」

「っ……」

「トネリコさんを惑わすな、クソ偽物」


 オズワルドは先程よりも早い動きをしてレーヴェ(?)の首を狙うが、レーヴェ(?)は不敵な笑みを浮かべては腕に隠していたダガーで防いでは別のダガーでオズワルドを狙うが、オズワルドは手斧で塞いで跳び退き刀剣と手斧を構える。


「……多分ですけど、レーヴェさんの生前時の何かしらのデータを入手していたんでしょう」

「生前のデータを?」

「それを使って、“レプリカホムンクルス”を作製したと考えるべきかと」

「へぇ?相変わらず、オズワルドは頭の回転が良いらしいなぁ?そうだ、先生が俺を作り上げたんだ!様々な膨大なデータと、それに適合する身体!それが俺、ラムダってわけだ」


 ラムダは不敵な笑みを浮かべオズワルドは気付いたが一歩遅れてしまい、ラムダはトネリコの目の前へと瞬時に移動してはダガーを下から振り上げていた。


「トネリコさんっ!!?」

「!?」


 だが、ダガーはトネリコに当たる少し前に砕けてラムダは軽く仰け反り首ギリギリに黒い大きな大鎌が通り過ぎる。


「気色悪いぃーな、自分のレプリカなんて」

「レーヴェ」

「ククッ、会いたかったぜ?“オリジナル”」

「あ?」

「これで、準備は準備万端ってわけだ」

「!?」


 レーヴェは何かに気付いてトネリコをオズワルドへと押し退けるのだが、ラムダは不敵な笑みを浮かべては“ターゲットはお前だ、オリジナル”って呟くと何かの薬が入った頑丈な注射器をレーヴェの首裏に刺して注入していた。


「レーヴェ!?」

「っ!?っあ、あぁあああっ!?!?」


 レーヴェが頭を強く押さえていると、レーヴェの額に何かの術式の印が刻まれていきレーヴェの身体に透明な鎖が絡みついていく。


「さて、こっからだ」

「レーヴェさんに、何をした?」

「これからが、楽しいショーだろ?」

「何を……!?」


 オズワルドは異変に気付いてトネリコを自身の後ろへとやり、刀剣を前に出せば黒い鉤爪を装着したレーヴェが目の前に立っていた。


「っ……」

「レーヴェっ?」

「…………」

「ククッ、アハハハッ!!!残念ながら、レーヴェは“此方のモノ”ってわけだ」

「……クソ馬鹿イヌ、が」


 オズワルドは目の前にいるレーヴェに悪態つきながらも、オズワルドは素早くやってくるレーヴェの攻撃を全てを刀剣と手斧で防いでいる。


「なんで、……レーヴェ……」

「抗えない術式に呑まれたな、“オリジナル”っ!!アハハッ!!……さっさと、オズワルドを殺せ“オリジナル”」

「オズくんっ!?」

「っ…、大丈夫です」


 オズワルドは手斧を軽く上へと投げてから、素早くレーヴェへと剣撃を放ちながらもレーヴェの左腕に刀剣が掠める。
 その時に、レーヴェが少しだけ動きを止めたと同時に落ちてきた手斧を掴んだオズワルドはレーヴェの頭を手斧の柄で勢いよく殴りつける。


「っ!?」











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