神様の巫女 〜妖と暮らす少女、少女を気に入る貴神〜

ぬん

文字の大きさ
30 / 32
プロローグ〜開幕〜

第二十九話

しおりを挟む

______……痛い……。けど、私はまだ……生きている。

「…………ん……」

 目を開けると、私は黒御殿の自分の部屋で眠っていた。
 部屋には自分一人だけ。隣の部屋では他のみんなの寝息が聞こえてくる。

(ということは、無事終わったんですね……)

 意識はまだ朦朧としているが、身体中が痛い気がする。黒御殿の高さよりも高い位置から落ちたから当たり前か。
 でも、1番痛みを感じるのは、兄者に絞められた首元。
 兄者相手に本気でやりあって生きて帰れただけでも奇跡だ。
 意識を失う前に覚えている最後の記憶は、血の塊の上で倒れている兄者の姿。

「あ……二……じゃ」

 首を絞められた際に喉が潰れたのか声が上手く出せない。身体も動かそうとすると骨がミシミシと音を立てて、激痛が走る。
 でも、私は行かなければならない。兄者に確かめなければならないことがあるから。
 彼はきっと、中階層にある鉄窓の間にいるはず。
 そこは愛妾部屋同様、分厚い鉄扉に守られた監獄部屋だ。

 意識がまだ浮動状態の中、歩けるはずもなく、私は床を這って兄者がいるであろう場所に向かおうとした。
 包帯で固定され、思いどおりに動かない手足を無理やり動かす。
 痛みなんてどうでもいい。今兄者に会いに行かないと……今会って、喧嘩した後に謝らないと、もう二度と兄者と元の関係に戻れない気がするから。

「その体でどこに行くの?」

 床を這う私に誰かが被さる。
 聞き覚えのある声のようだが、誰なのか分からない。特定するのも面倒くさい。きっと隣で寝ていた誰かが私に気付いたんだろうと思い、構わず進んだ。

「行くな。戻れ」
「ど……いテ」
「行けば死ぬ。烏水は諦めろ。君を庇った傷が癒えても戦犯として処刑される。彼は助からない」

 そんなことは分かってる。だから、会うなら今しかない。今を逃す訳にはいかない。

「これは警告だ。戻れ。せっかく助かった命を落とすつもりか」
「あな……た、だれ」
「私は死神だ」
「し……にガみ」
「私は魂を狩り、世の生命の均衡を保たなければならない。狩り時がくれば、私は誰の魂であろうと狩らねばならない。君の順番も、そう遠くない。寿命を縮めるような真似はするな」
「……どうでも、イい」
「は?」
「どう! でもイい。わた、し……ハ、いま、あい……に、いかな、いと」
「死神からの警告を無視すると? 命を無下にするつもりか」

 うるさい。死神だか誰だか分からない奴と話している暇など、私にはない。時間が惜しい。自分の命に縋るくらいなら、依頼なんて受けていない。
 例え死に行く運命だったとしても、喧嘩別れのまま気まずい関係で兄者と地獄で再会したくない。

「秋花。私の言うことを聞け」
「うるさい……」
「『うるさい』って」
「あ、なタ……が! ほ、ンモのの、死か……み、なら……兄……じゃを、助け……て」
「…………え……?」
「生、死……の神、なら……わた、しの…よ、め……い、あげる……。から、兄者……たす……け……て…………」

ああ……寝ている暇なんてないのに……。
兄者と最後に、仲直りしたいのに……、意識が、飛んで行く……。





「秋花?」

 力尽きた彼女は、私の方を一度も振り向くことなく、一方的に願いを言って眠りに落ちてしまった。

「……ホント、人間って勝手だなぁ」

 身勝手な頼み……助けを乞う分際で礼儀も何もない、本来なら相手するに値しない。
 それなのに、顰めっ面で畳で気を失う彼女に、私の心は何とも言えない愛しさで満たされた。
 それは思わず、笑みが零れ落ちてしまうほどに……

「分かった。この恵那和が、然と聞き取った。君の命を代償に、願いを叶えてあげる♡」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二十五時の来訪者

木野もくば
ライト文芸
とある田舎町で会社員をしているカヤコは、深夜に聞こえる鳥のさえずりで目を覚ましてしまいます。 独特でおもしろい鳴き声が気になりベランダから外を眺めていると、ちょっとしたハプニングからの出会いがあって……。 夏が訪れる少し前の季節のなか、深夜一時からの時間がつむぐ、ほんのひと時の物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...