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しおりを挟む——『菊乃……良い子だね』
プッシャああああああああああ!!!!
「……え……?」
途端、僕の腕を掴んだ手は、赤黒い飛沫に消し去られた。
——『さあ、菊乃……昨日のおさらいをしよう』
そして僕は、手を吹き飛ばした男の喉を斬った……ポケットの中に入れられていた、折りたたみ式ナイフで。
「ぎゃああああああああああ!!!!!!!」
男が血を流して倒れると、状況を察知した他の参加者達は雄叫びをあげ、一斉に出口の方へと向かった。
「子供が!
誰かぁ!
助けてくれ!」
「開けろぉ!!!」
逃げようと扉を叩くも、何故か扉は開かない。
——『菊乃、まず最初に確認しなければならないのは、相手の数と位置。
特に、位置には絶対に注意を削いではいけない』
「来るなぁ!!!!!」
追いかけて、追い詰めて
——『次は、相手を殺すために使う自分の武器だ。
でもこれは、手持ちに限らず、周囲を見て武器になりそうな物すべてを指す。
武器と化すものを一瞬で見抜くことが大事だ。重そうな物やガラスのように割れそうな物を探せばいいよ。形にはこだわらなくていい』
「金ならやる!! 金ならやるからぁああぁあ!!!」
恐怖心を植え付け、命乞いをさせて
——『ここで注意しなければならないのは、手持ちの武器以外の武器は、相手の武器にもなるという事を頭に入れておく事』
肉を裂き、眼球を抉り
——『人によって位置のズレなどの多少の違いはあるが、他人を瞬殺できるポイントは、大体皆同じだ。
急所と言ってね。
まずは喉元。正面から喉仏を抉るようにナイフを突き刺すんだ』
苦しみを与え、地獄を見せる。
——『そして鳩尾。身体の中心、お腹の少し上辺りを狙うといい。
でも、即効性はないから、致死量の血が流れるまで相手はまだ生きている。菊乃はまだ小さくて、反撃されると手も足も出せないから油断してはいけないよ』
「あっははははは!!!……」
これはいつもと同じ光景だ。
気づけば僕は腹の底から笑って、人を襲っている。もう誰も生きてはない。血を流して、バラバラになった身体が床に転がっているだけ。
パパとママと逃げる時、僕がいつも通ってきた道の光景と同じだ。
「組長……これ……」
「……志水に払う金は、ちと安過ぎたか」
「は?」
「2億……いや、それ以上の価値はある。期待以上や。
お疲れやったな、菊乃ちゃん」
ぐうぅ……
口で返事するよりも先に、お腹で返事をしてしまった。動いたからお腹空いたなぁ。
「ええもん見させてもろたお陰で、君の使い道を決められそうや。
とりあえず、パーティーはお開きや。
菊乃ちゃん、粗末になったけどお腹空いたんやったらそこら辺のもん全部食べてええよ」
空腹が限界だった僕は、待っていましたと言わんばかりに余っている机の上の食べ物に手を出した。だが机の上には死体が乗っていて、料理が下敷き状態に。
「んん!」
なんとかして抜き出したフライドチキンにかぶりつこうとした時だ。
ペチッ!
「馬鹿、食うなや」
若に手を叩かれて、チキンのお預けを食らった。それに、何故か若の顔がさっきよりも険しい。
「食べていいって」
「こんな血付いとるもん食えるか!」
せっかくのご飯……組長からも食べていいって言われたのに。血なんて少し付いているくらいで味変わらないのに。
「来い」
「でも……」
「ええから!」
何故若に怒られたのか、僕は分かっていない。多分、若も僕が状況を理解していない事を分かっているだろう。でも若は、汚れた僕の手を引いて会場を後にした。
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