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(17)デートにしたかった男
上映会場は満員となりつつあった。
ケイトとジョルジオが座るロイヤルプレミアム席がある会場は映画館で一番大きな会場である。二人がいる場所は最奥の席の後ろの壁上部にある。バルコニーのような造りをしていて、スクリーンから向かって中央がロイヤルプレミアム、その両隣にプレミアム、その両隣にゴールド席と配置してありプレミアムまでなら一般市民も頑張れば手に届く料金で観覧出来た。ロイヤルはさすがに王族用の為、いくらお金を積んでも利用不可である。
今日はここに明かりが点いている。人々は王族が来たのかと噂しあったが、中身は庶民二人組だった。
「ジョルジオ君。どうも下から見られている様な気がするんだけど」
「見られているでしょうね。王族席ですからね」
「どうしよう緊張してきた」
「向こうからこちらは視えませんよ」
前面の大きなガラスはマジックミラーである。だからこちらからは見えても向こうからは見えない。このガラスは他にも視聴者にとって見やすい距離と位置でスクリーンが視える様にしてあった。
「人もいっぱいになってきたよ」
最初に渋っていた割には雰囲気を楽しんでいるように見え、ジョルジオが微笑む。
勇者は単に要らないからとこの招待券を自分にくれたのに、本当は敵に塩を送られたようでモヤッとしたのだが、この小さなプライドに目をつむれる価値がケイトの笑顔にはある。
譲ってくれて有難う勇者様。
男のプライドはオブラートより軽かった。
照明が暗くなり、音楽が止む。
時間だね、とケイトが呟いた。
今から上映されるのは
"魔王討伐よりも勇者には大事な使命があった"
が宣伝文句の映画である。
おい待て。魔王討伐は何かのついでか!
と、誰かのつっこみが聴こえるような…気の所為ではないだろう多分。
いや、それより。
まだ魔王討伐も済んでいない内から、というかこの映画はいつ撮影したのか!?等、疑問の映画だ。
この映画は実は魔族が人間界で暴れ始める前に業界トップの配給会社で制作が決定し、主演俳優らキャスト、映画監督も決まり制作発表の記者会見へ、の段階でクレームがついた。何でも
『勇者役俳優はどうでもいいが相手役が気に食わない。あれをどうにかしない限りは制作活動は一切停止。なければこの企画自体は全面的に中止』
とダブル主演の一人へのクレームだった。配給会社は神殿と王家からも同じ事を言われたのだ。配給会社はかなり動転した。
当時のマスコミは騒…がずにいた。
相手役俳優は実力人気ナンバーワンの俳優だった。所属事務所も業界最大手で、事務所はマスコミに圧力をかけて情報漏洩を厳しく取り締まったからだ。俳優は麗しく類稀な美貌を持った人だった。国宝級どころか全大陸宝級の美貌と言われ、とある王国からは王の伴侶として望まれている程の美形。他薦により事務所入りしてから俳優の道へ進み、デビューから主演しかした事のない無敵の彼に初めて黒星が付いたのだ。演技での事ではないらしい。そこは別に問題視されておらず、されているのは俳優の容姿であった。どれもこれも屈辱的な話であった。
『相応しくない』と断じられた彼のプライドはズタズタとなった。
では相手役とはそんなにも美しいのか。
原作を紐解いてみよう。
原作は"勇者公認小説。世紀のラブストーリー!"とのキャッチコピーが書いてある。これからしてすでに敬遠したくなる雰囲気がある。ここは我慢して内容である。
簡単に言うと勇者が魔王討伐の旅先で出逢った男娼と恋に落ちた。待て、討伐の旅の最中にお前は娼館に行ったんかい。というツッコミはお約束。訪れた先で彼は娼館ナンバーワンを指名して見るなり一目惚れをしてしまう。相手の男娼はそうでも無かった。だから勇者は何日も通った。何日滞在したのか、暇を見つけて通ったのか定かではない。遊びでないのをくどくどと口説いた。男娼は靡(なび)かない。客と従業員という線引きが崩れる事は無かった。(ちょっと略)男娼は娼館を辞めて田舎に引きこもる。娼館にいたら会いたくないのに会いに来るのだ。だから。会いたくないのに『その指輪があれば必ずお前を見付けられる』と贈られた指輪は手放さなかった。(略)魔王討伐を終えた勇者が言葉通り男娼を見つけ出し晴れて婚姻を果たす。その後の二人は仲睦まじく、立場が入れ替わるように勇者よりも男娼の方が勇者を愛し、可愛らしく想われた勇者は死んでも死ねないくらい幸せになりました。
とか言う、ストーリーだけなら取り立てて目新しさも捻りもなく、特別に特筆すべき事のない、よくある筋立ての小説だ。
うっかり(略)の中に隠れてしまったが、男娼は実は魔族だったのだ。素性を隠して娼館と自由契約をしていた設定だった。
魔族は人間とは違い、桁違いな美貌を誇る者が存在する。男娼はそれだったのだ。
という設定だった。
ケイトとジョルジオが座るロイヤルプレミアム席がある会場は映画館で一番大きな会場である。二人がいる場所は最奥の席の後ろの壁上部にある。バルコニーのような造りをしていて、スクリーンから向かって中央がロイヤルプレミアム、その両隣にプレミアム、その両隣にゴールド席と配置してありプレミアムまでなら一般市民も頑張れば手に届く料金で観覧出来た。ロイヤルはさすがに王族用の為、いくらお金を積んでも利用不可である。
今日はここに明かりが点いている。人々は王族が来たのかと噂しあったが、中身は庶民二人組だった。
「ジョルジオ君。どうも下から見られている様な気がするんだけど」
「見られているでしょうね。王族席ですからね」
「どうしよう緊張してきた」
「向こうからこちらは視えませんよ」
前面の大きなガラスはマジックミラーである。だからこちらからは見えても向こうからは見えない。このガラスは他にも視聴者にとって見やすい距離と位置でスクリーンが視える様にしてあった。
「人もいっぱいになってきたよ」
最初に渋っていた割には雰囲気を楽しんでいるように見え、ジョルジオが微笑む。
勇者は単に要らないからとこの招待券を自分にくれたのに、本当は敵に塩を送られたようでモヤッとしたのだが、この小さなプライドに目をつむれる価値がケイトの笑顔にはある。
譲ってくれて有難う勇者様。
男のプライドはオブラートより軽かった。
照明が暗くなり、音楽が止む。
時間だね、とケイトが呟いた。
今から上映されるのは
"魔王討伐よりも勇者には大事な使命があった"
が宣伝文句の映画である。
おい待て。魔王討伐は何かのついでか!
と、誰かのつっこみが聴こえるような…気の所為ではないだろう多分。
いや、それより。
まだ魔王討伐も済んでいない内から、というかこの映画はいつ撮影したのか!?等、疑問の映画だ。
この映画は実は魔族が人間界で暴れ始める前に業界トップの配給会社で制作が決定し、主演俳優らキャスト、映画監督も決まり制作発表の記者会見へ、の段階でクレームがついた。何でも
『勇者役俳優はどうでもいいが相手役が気に食わない。あれをどうにかしない限りは制作活動は一切停止。なければこの企画自体は全面的に中止』
とダブル主演の一人へのクレームだった。配給会社は神殿と王家からも同じ事を言われたのだ。配給会社はかなり動転した。
当時のマスコミは騒…がずにいた。
相手役俳優は実力人気ナンバーワンの俳優だった。所属事務所も業界最大手で、事務所はマスコミに圧力をかけて情報漏洩を厳しく取り締まったからだ。俳優は麗しく類稀な美貌を持った人だった。国宝級どころか全大陸宝級の美貌と言われ、とある王国からは王の伴侶として望まれている程の美形。他薦により事務所入りしてから俳優の道へ進み、デビューから主演しかした事のない無敵の彼に初めて黒星が付いたのだ。演技での事ではないらしい。そこは別に問題視されておらず、されているのは俳優の容姿であった。どれもこれも屈辱的な話であった。
『相応しくない』と断じられた彼のプライドはズタズタとなった。
では相手役とはそんなにも美しいのか。
原作を紐解いてみよう。
原作は"勇者公認小説。世紀のラブストーリー!"とのキャッチコピーが書いてある。これからしてすでに敬遠したくなる雰囲気がある。ここは我慢して内容である。
簡単に言うと勇者が魔王討伐の旅先で出逢った男娼と恋に落ちた。待て、討伐の旅の最中にお前は娼館に行ったんかい。というツッコミはお約束。訪れた先で彼は娼館ナンバーワンを指名して見るなり一目惚れをしてしまう。相手の男娼はそうでも無かった。だから勇者は何日も通った。何日滞在したのか、暇を見つけて通ったのか定かではない。遊びでないのをくどくどと口説いた。男娼は靡(なび)かない。客と従業員という線引きが崩れる事は無かった。(ちょっと略)男娼は娼館を辞めて田舎に引きこもる。娼館にいたら会いたくないのに会いに来るのだ。だから。会いたくないのに『その指輪があれば必ずお前を見付けられる』と贈られた指輪は手放さなかった。(略)魔王討伐を終えた勇者が言葉通り男娼を見つけ出し晴れて婚姻を果たす。その後の二人は仲睦まじく、立場が入れ替わるように勇者よりも男娼の方が勇者を愛し、可愛らしく想われた勇者は死んでも死ねないくらい幸せになりました。
とか言う、ストーリーだけなら取り立てて目新しさも捻りもなく、特別に特筆すべき事のない、よくある筋立ての小説だ。
うっかり(略)の中に隠れてしまったが、男娼は実は魔族だったのだ。素性を隠して娼館と自由契約をしていた設定だった。
魔族は人間とは違い、桁違いな美貌を誇る者が存在する。男娼はそれだったのだ。
という設定だった。
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~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
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