26 / 41
(26)大食いしよう!①
大食いをしよう。
運命に失望した時に。
宿命に絶望した時に。
どうせどうにもならないのなら、一時でも忘れたい。ぶつける何かがあったって、良いじゃないか!
いや、戦うんだ。
これは戦いへの前哨戦なのだ。
俺は負けない。
「………………だからって、これは無いんじゃないですか………」
「"だから"は何に掛かるんだいジョルジオ君。
俺に君の考えた事を説明してくれるかな」
「いえ、そんな」
ジョルジオは戦々恐々な思いで対面で座るケイトを見る。ケイトの前に陣取る料理を込みで見る。
ケイトの前には重量して3.5キロ超えの料理がででん、と置いてある。熱々の大型鉄板の上に魔獣ステーキ肉が、鶏(に似た生物)の唐揚げが、特大サイズの海老(に似た生物)フライが、厚切り豚(に似た生物)カツが、牛(に似た生物)カルビの焼き肉が盛りに盛られ、それ等に隠れてガーリックパスタにオムライスと炒飯が合盛りで並び、しかも炒飯の上には何故かとろけるチーズがてんこ盛りで盛られた、この全て載った一品が店の大盛り標準メニューであった。目安、と注釈があり読むと『※大体三キロ。店長の気分で前後します』なる文章があったが嘘八百もいい所であろう。後はあっても前は神賭けて無いはずである。
しかもケイトは甘い清涼飲料水があるのに食後に爆盛スイーツ盛り合わせまで注文していた。
………………………………恐ろしい。
ジョルジオが内心怯えた。
これを戦に臨むかの様な表情でカラトリーを握り締めて見つめるケイトがいる。
「完食出来なかったら…」
「元々自腹だし問題なし」
シャキーン!と構える。
「無理ですって……」
「限界までやるよ。いや、全部食ってやる。俺の男気を見せてやるよ!」
「………………」
ケイトの心の振り子は左右に振るだけでは飽き足らず、勢い余って回り過ぎて異次元に飛んでしまったらしい。男気って、その顔で。
自分は普通盛りのステーキ定食、ただし本日の日替わりスペシャルメニュー"特別提供魔獣肉ステーキ定食"を頼んでジョルジオは呆れて目を細めた。
例の大物魔族の事件から壁を作ろうとするケイトをそうはさせまいとジョルジオがひたと寄る。
にこやかに。ケイトと会っている時は当然裏表なく心底にこやかに。それ以外では狙った獲物は逃さない獣の様に、あるいは追尾システム装備の兵器の様なしつこさで。虎視眈々とにこにこしながら壁を潰していく。
今日は王国のみならず、大陸中に支店を構える飲食店大手、その名も悪名高き"食い倒れ食堂"。
"食い倒れ"は"食わせて倒す"がいつの間にかそうなっていた店名だ。倒す相手は勿論お客様だ。何故。何故客を倒す必要性があるのかは謎のまま、創業から数えて五百年以上が経つ。
大盛りが売りの大衆食堂だが、その大盛りが他の食堂と一線を画す。この食堂の大盛りとは他所の大盛りの倍が普通なのだ。今ケイトが食べようとしている量はこの店の大盛りとされいるメニューの普通量である。
メニューの種類は基本的にジャンクフードと言われる危険な料理だ。基本であって、普通の食堂にある様な普通な料理がない訳では無い。比較すると圧倒的にジャンク品が好まれるだけで。一皿上に野菜類がなく、油と脂と糖質の連合軍で出来た不健康で中毒性のある食べ物たちが人々の心を掴んで離さない。
大昔から変わらぬ方向性と味付けで経営し絶大な支持を得ている食い倒れ食堂は、今や国民の健康を導く立場の政府にとっては政敵の扱いなっている。
が、これも表面上の事で、公務員は普通に食べに来る。健康を気にする者は皆、健康茶を片手に通っている。幼い頃から家族総出で食べに来る場所なのだ。中毒なのか誰もが程よく洗脳されている。
手伝いましょうか?
と言いかけてジョルジオはやめた。
自力で浮上しているのなら見守ってやった方が良いのだ。
というか、口を挟めない雰囲気があった。
悪魔に魂を売り払い仇を目の前にした人間みたいな形相のケイトだが、魂の売り場所を間違えてるとしか思えない。
ケイトはジョルジオへ謝罪しにお宅突撃訪問をした日に沈むだけ沈んで、数日間ずっと鬱々と過ごした。その間にちゃんと表情にも態度にも出さず普段通りに仕事をこなした。けれど職場を離れ独りになると気分は元にいた場所に戻る。
その場所に心はうずくまって夜が明ける。
目覚ましのアラームが鳴れば空元気の現実世界がいつも通り始まる。
無難に一日をやり過ごす。
休日にテーブルの上に無造作に放置してあった紙袋がふと視界に映った。
やっと認識した。
書店員に貰った本だ。
ベッドから起き上がりテーブルの上の袋から本を取り出した。
ページをめくる。
勇者と伴侶で当て書きした小説。
あの映画の原作。
最後まで見れなかった。でも、ここにはある。見れなかった終章がある。
やめた。
運命に失望した時に。
宿命に絶望した時に。
どうせどうにもならないのなら、一時でも忘れたい。ぶつける何かがあったって、良いじゃないか!
いや、戦うんだ。
これは戦いへの前哨戦なのだ。
俺は負けない。
「………………だからって、これは無いんじゃないですか………」
「"だから"は何に掛かるんだいジョルジオ君。
俺に君の考えた事を説明してくれるかな」
「いえ、そんな」
ジョルジオは戦々恐々な思いで対面で座るケイトを見る。ケイトの前に陣取る料理を込みで見る。
ケイトの前には重量して3.5キロ超えの料理がででん、と置いてある。熱々の大型鉄板の上に魔獣ステーキ肉が、鶏(に似た生物)の唐揚げが、特大サイズの海老(に似た生物)フライが、厚切り豚(に似た生物)カツが、牛(に似た生物)カルビの焼き肉が盛りに盛られ、それ等に隠れてガーリックパスタにオムライスと炒飯が合盛りで並び、しかも炒飯の上には何故かとろけるチーズがてんこ盛りで盛られた、この全て載った一品が店の大盛り標準メニューであった。目安、と注釈があり読むと『※大体三キロ。店長の気分で前後します』なる文章があったが嘘八百もいい所であろう。後はあっても前は神賭けて無いはずである。
しかもケイトは甘い清涼飲料水があるのに食後に爆盛スイーツ盛り合わせまで注文していた。
………………………………恐ろしい。
ジョルジオが内心怯えた。
これを戦に臨むかの様な表情でカラトリーを握り締めて見つめるケイトがいる。
「完食出来なかったら…」
「元々自腹だし問題なし」
シャキーン!と構える。
「無理ですって……」
「限界までやるよ。いや、全部食ってやる。俺の男気を見せてやるよ!」
「………………」
ケイトの心の振り子は左右に振るだけでは飽き足らず、勢い余って回り過ぎて異次元に飛んでしまったらしい。男気って、その顔で。
自分は普通盛りのステーキ定食、ただし本日の日替わりスペシャルメニュー"特別提供魔獣肉ステーキ定食"を頼んでジョルジオは呆れて目を細めた。
例の大物魔族の事件から壁を作ろうとするケイトをそうはさせまいとジョルジオがひたと寄る。
にこやかに。ケイトと会っている時は当然裏表なく心底にこやかに。それ以外では狙った獲物は逃さない獣の様に、あるいは追尾システム装備の兵器の様なしつこさで。虎視眈々とにこにこしながら壁を潰していく。
今日は王国のみならず、大陸中に支店を構える飲食店大手、その名も悪名高き"食い倒れ食堂"。
"食い倒れ"は"食わせて倒す"がいつの間にかそうなっていた店名だ。倒す相手は勿論お客様だ。何故。何故客を倒す必要性があるのかは謎のまま、創業から数えて五百年以上が経つ。
大盛りが売りの大衆食堂だが、その大盛りが他の食堂と一線を画す。この食堂の大盛りとは他所の大盛りの倍が普通なのだ。今ケイトが食べようとしている量はこの店の大盛りとされいるメニューの普通量である。
メニューの種類は基本的にジャンクフードと言われる危険な料理だ。基本であって、普通の食堂にある様な普通な料理がない訳では無い。比較すると圧倒的にジャンク品が好まれるだけで。一皿上に野菜類がなく、油と脂と糖質の連合軍で出来た不健康で中毒性のある食べ物たちが人々の心を掴んで離さない。
大昔から変わらぬ方向性と味付けで経営し絶大な支持を得ている食い倒れ食堂は、今や国民の健康を導く立場の政府にとっては政敵の扱いなっている。
が、これも表面上の事で、公務員は普通に食べに来る。健康を気にする者は皆、健康茶を片手に通っている。幼い頃から家族総出で食べに来る場所なのだ。中毒なのか誰もが程よく洗脳されている。
手伝いましょうか?
と言いかけてジョルジオはやめた。
自力で浮上しているのなら見守ってやった方が良いのだ。
というか、口を挟めない雰囲気があった。
悪魔に魂を売り払い仇を目の前にした人間みたいな形相のケイトだが、魂の売り場所を間違えてるとしか思えない。
ケイトはジョルジオへ謝罪しにお宅突撃訪問をした日に沈むだけ沈んで、数日間ずっと鬱々と過ごした。その間にちゃんと表情にも態度にも出さず普段通りに仕事をこなした。けれど職場を離れ独りになると気分は元にいた場所に戻る。
その場所に心はうずくまって夜が明ける。
目覚ましのアラームが鳴れば空元気の現実世界がいつも通り始まる。
無難に一日をやり過ごす。
休日にテーブルの上に無造作に放置してあった紙袋がふと視界に映った。
やっと認識した。
書店員に貰った本だ。
ベッドから起き上がりテーブルの上の袋から本を取り出した。
ページをめくる。
勇者と伴侶で当て書きした小説。
あの映画の原作。
最後まで見れなかった。でも、ここにはある。見れなかった終章がある。
やめた。
あなたにおすすめの小説
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。