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(32)大食いしよう!⑦
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昔むかし。というか今もこれからも。
聖剣は密かに製作主があれやこーれーと色々と機能を付けていった結果、人格が生まれてしまっていました。作者はあれ?と気付いていたけれど、まあいいやと放置しておりました。
剣は使用資格のある勇者がやって来るまで毎回放ったらかしにされていたのですが、来たら来たでチヤホヤされて育った為、少し我が儘で子供っぽい性格になっておりました。
代々の勇者は聖剣を専用台座から大根を引っこ抜く様にして引っこ抜く時も、使う時も丁寧に優しく蝶よ花よと腫れ物を扱う如くな対応をしておりましたが、そんなこんなで気の遠くなる年月が経って魔王が生まれてしまったある時、当時の勇者が聖剣を名のある鍛冶屋へ持ち込もうとしました。いえ、実際持ち込みました。理由は『使えないから』だそうで、使えないとは勇者が聖剣を使えないのではなく、勇者にとって聖剣は今いち相性が良くなく、剣のくせに斬るものを選ぶ生意気な備品だったからだそうな。聖剣としては自分は魔王を倒し世界を本来有るべき姿に戻す鍵の役目を果たせば良いので、そんな雑魚とか変な魔獣とかで使われたくありませんでした。誇り高き備品でした。
が、勇者としては使える物は使わなければ気が済みません。何より主従を分かっていない困ったちゃんなど本当に困ります。いっそばっくり二つ折りにしてやろうとか、横に45度の角度に曲げてブーメランで戻って来るか実験してやろうかとか、輪にして網を被せて釣りの時にでも使うか等々、無表情かつ冷徹な表情で実に大人げない事を思っておりました。取り敢えずは我慢して、でも酷使していたのです。
―――やっぱり作り変えよう。
思い立ったが吉日です。一応腐っても聖剣ですから敬意を表したと見せかけて世界鍛冶屋選手権大会で優勝した工房へ聖剣を持って行きました。
………………ジョルジオが疑問を口にする。
「君、鍛冶屋出身だったっけ?」
『失敬だな君たち勇者族は!』
勇者族って何だよ。
ジョルジオが突っ込む。
さて鍛冶屋の職人は聖剣を褒め讃えました。
姿形、輝き。天上の剣のようだ!と。実際その通りだったのですが、勇者は何も言いません。実際溶かす段になってオルハリコンだのを作る温度でさえ、聖剣は涼しい顔してやり過ごしておりました。が、勇者が『仕方無いから手を貸そう』と悪い笑顔で親切心を発揮し自分と聖剣の周りだけに強固な結界を張ると、人差し指に一滴よりも極小の大きさの青白い炎を球状に出してみせました。
『ヤバい。溶けるっ』
聖剣は一気に青ざめます。
その青白い炎は舐めたらいかん温度をしていたのです。
虚勢を張ったら自爆への道まっしぐらです。
聖剣は泣いて赦しを乞いました。
「……製造元が大神様と一緒だから出来るんだよね、あの人。俺とは違って」
『………………俺の心は死んだわ。心の臨死体験だったわ』
聖剣の呟きにジョルジオは頷いた後、さっさと聖剣レプリカを返した。
******
爆盛スイーツが運ばれて来た。
ケイトのにこにこは止まらない。ジョルジオは笑顔が怖い。
「…ケイトさん、止めましょうよ、持ち帰れないですよこれ」
「じゃ、これだけはちゃんと食うよ」
これだけは。
ジョルジオが虚無の心境で呟く。
結局ケイトの食べ切れなかった分はジョルジオが強奪して完食した。持ち帰って自宅で食べる気だったケイトはただでさえ童顔に見られる原因の、くりくりした大きな目を更に大きく見開いたが、何も言わずジョルジオの好きにさせた。『お酒飲んだ後って腹が減る』からの行動だと思い放置したのだが、生憎ジョルジオは酔っていなかった。チート級の勇者には負けるが状態正常化の魔法が使えるのだ。業務時以外は使用形態が常時でないから酔いたい気分なら酔える。
さっきまでは、ほろ酔いくらいなら問題ないと思っていたがケイトを見て状態正常化でまともになったジョルジオは血の気が引いた。
魔法を使うまでもなく、酔いは冷めた。
これは大真面目に止めなければならないヤツだった―――――!
もう遅い。
黙ってケイトの好きなようにさせ、見守るしかない。いやいやフォローもしますけども。
大量のアイスクリームに奮闘中のケイトを頬杖をついて引きつり笑顔で愛でる。
フフフ。口から文字が出そう。
「ジョルジオ君も一緒に食べないかい?このアイス高級品だよ実は」
フ。
笑いが止まる。
「………………誰ですか一人で頑張ると言った人は」
「後で後悔しても知らないよ」
そ の く ち が い う の か!
くっそー。
とは言え、一つの容器の物を二人で食べるって恋人同士みたい。やっぱ採用。
「……じゃあ、仕方な…」
「はい」
皿とスプーンとフォークを渡された。ジョルジオが眉を落とす。
前言がどうのと言ってないで食べると言えば良かった。店員さんもすぐに取り皿(大型)とか持って来るとか信じられない。
………………ああ。俺はなんて勿体無い事を。
ジョルジオの心境などお構い無しのケイトは食べる。
………………いつもより食べれてる。から、もう大丈夫だ。
ジョルジオの金髪に彼を重ねる。
神様の面談時に見た映像と同じくビジネススーツ姿。ジョルジオが自分のスーツを戦闘服と言っていたから、ならばあれも戦闘服なのだろう。
神様面談した時はすでに過去に行ってしまったと言っていた。
生まれる前にはすでにいなくて、生まれている今、まだいる?
いやいや、でも、魔王討伐されたって話をまだ聞いてないからいて当然なんだよな?
……………時系列がどうなっているのか分からない。神様の所での話だし、深く追求してはいけないのかも知れないと思い直す。
いなかったらいないで惑わされないで済むのに、と思ってしまっても悪くないよね。
と恨み言を思わず思ったりもして。
物思いにふけるケイトのスプーンは止まらない。先ほど渡された大皿に取り分けたアイスその他を『甘い甘い、甘死にしてしまう』と思いつつ戦っていたジョルジオが、ええぇ~と慄いた。
ケイトの口の中はもう冷たい。
でもいなくなったら。
食べる。
いなくなったら。
でも食べる。気の所為か歯がかちかち言ってきた。
いなくなったら。
「ケイトさんストーップ!!」
スプーンを持つ手首を掴まれた。ゆるゆるとジョルジオに視線を向ける。
「?呼んだ?」
視線が合うとジョルジオが無表情でケイトからまだスイーツが半分残った容器を奪った。無言で自分のスプーンを突っ込む。ケイトが軽く目を見開いたが構わず無視して口に運んだ。
「ジョルジオ君」
また気を遣わせてしまった。
ジョルジオはテーブルに備え付けの注文用タブレットで何やら頼んだ。すると、すぐにさっと店員が運んで来てジョルジオがケイトの方に目を向けた。ケイトの前に置かれたのは湯気の立った温かい飲み物だった。
「飲んで下さい、それ」
口の中に運ぶスプーンの動きは止まらない。
優しいなあ。
まだカチカチ上下の歯が鳴る音と冷えた身体で少し震える我が身をさすりながらケイトはいつでも自分に気を遣ってくれるジョルジオを見た。
聖剣は密かに製作主があれやこーれーと色々と機能を付けていった結果、人格が生まれてしまっていました。作者はあれ?と気付いていたけれど、まあいいやと放置しておりました。
剣は使用資格のある勇者がやって来るまで毎回放ったらかしにされていたのですが、来たら来たでチヤホヤされて育った為、少し我が儘で子供っぽい性格になっておりました。
代々の勇者は聖剣を専用台座から大根を引っこ抜く様にして引っこ抜く時も、使う時も丁寧に優しく蝶よ花よと腫れ物を扱う如くな対応をしておりましたが、そんなこんなで気の遠くなる年月が経って魔王が生まれてしまったある時、当時の勇者が聖剣を名のある鍛冶屋へ持ち込もうとしました。いえ、実際持ち込みました。理由は『使えないから』だそうで、使えないとは勇者が聖剣を使えないのではなく、勇者にとって聖剣は今いち相性が良くなく、剣のくせに斬るものを選ぶ生意気な備品だったからだそうな。聖剣としては自分は魔王を倒し世界を本来有るべき姿に戻す鍵の役目を果たせば良いので、そんな雑魚とか変な魔獣とかで使われたくありませんでした。誇り高き備品でした。
が、勇者としては使える物は使わなければ気が済みません。何より主従を分かっていない困ったちゃんなど本当に困ります。いっそばっくり二つ折りにしてやろうとか、横に45度の角度に曲げてブーメランで戻って来るか実験してやろうかとか、輪にして網を被せて釣りの時にでも使うか等々、無表情かつ冷徹な表情で実に大人げない事を思っておりました。取り敢えずは我慢して、でも酷使していたのです。
―――やっぱり作り変えよう。
思い立ったが吉日です。一応腐っても聖剣ですから敬意を表したと見せかけて世界鍛冶屋選手権大会で優勝した工房へ聖剣を持って行きました。
………………ジョルジオが疑問を口にする。
「君、鍛冶屋出身だったっけ?」
『失敬だな君たち勇者族は!』
勇者族って何だよ。
ジョルジオが突っ込む。
さて鍛冶屋の職人は聖剣を褒め讃えました。
姿形、輝き。天上の剣のようだ!と。実際その通りだったのですが、勇者は何も言いません。実際溶かす段になってオルハリコンだのを作る温度でさえ、聖剣は涼しい顔してやり過ごしておりました。が、勇者が『仕方無いから手を貸そう』と悪い笑顔で親切心を発揮し自分と聖剣の周りだけに強固な結界を張ると、人差し指に一滴よりも極小の大きさの青白い炎を球状に出してみせました。
『ヤバい。溶けるっ』
聖剣は一気に青ざめます。
その青白い炎は舐めたらいかん温度をしていたのです。
虚勢を張ったら自爆への道まっしぐらです。
聖剣は泣いて赦しを乞いました。
「……製造元が大神様と一緒だから出来るんだよね、あの人。俺とは違って」
『………………俺の心は死んだわ。心の臨死体験だったわ』
聖剣の呟きにジョルジオは頷いた後、さっさと聖剣レプリカを返した。
******
爆盛スイーツが運ばれて来た。
ケイトのにこにこは止まらない。ジョルジオは笑顔が怖い。
「…ケイトさん、止めましょうよ、持ち帰れないですよこれ」
「じゃ、これだけはちゃんと食うよ」
これだけは。
ジョルジオが虚無の心境で呟く。
結局ケイトの食べ切れなかった分はジョルジオが強奪して完食した。持ち帰って自宅で食べる気だったケイトはただでさえ童顔に見られる原因の、くりくりした大きな目を更に大きく見開いたが、何も言わずジョルジオの好きにさせた。『お酒飲んだ後って腹が減る』からの行動だと思い放置したのだが、生憎ジョルジオは酔っていなかった。チート級の勇者には負けるが状態正常化の魔法が使えるのだ。業務時以外は使用形態が常時でないから酔いたい気分なら酔える。
さっきまでは、ほろ酔いくらいなら問題ないと思っていたがケイトを見て状態正常化でまともになったジョルジオは血の気が引いた。
魔法を使うまでもなく、酔いは冷めた。
これは大真面目に止めなければならないヤツだった―――――!
もう遅い。
黙ってケイトの好きなようにさせ、見守るしかない。いやいやフォローもしますけども。
大量のアイスクリームに奮闘中のケイトを頬杖をついて引きつり笑顔で愛でる。
フフフ。口から文字が出そう。
「ジョルジオ君も一緒に食べないかい?このアイス高級品だよ実は」
フ。
笑いが止まる。
「………………誰ですか一人で頑張ると言った人は」
「後で後悔しても知らないよ」
そ の く ち が い う の か!
くっそー。
とは言え、一つの容器の物を二人で食べるって恋人同士みたい。やっぱ採用。
「……じゃあ、仕方な…」
「はい」
皿とスプーンとフォークを渡された。ジョルジオが眉を落とす。
前言がどうのと言ってないで食べると言えば良かった。店員さんもすぐに取り皿(大型)とか持って来るとか信じられない。
………………ああ。俺はなんて勿体無い事を。
ジョルジオの心境などお構い無しのケイトは食べる。
………………いつもより食べれてる。から、もう大丈夫だ。
ジョルジオの金髪に彼を重ねる。
神様の面談時に見た映像と同じくビジネススーツ姿。ジョルジオが自分のスーツを戦闘服と言っていたから、ならばあれも戦闘服なのだろう。
神様面談した時はすでに過去に行ってしまったと言っていた。
生まれる前にはすでにいなくて、生まれている今、まだいる?
いやいや、でも、魔王討伐されたって話をまだ聞いてないからいて当然なんだよな?
……………時系列がどうなっているのか分からない。神様の所での話だし、深く追求してはいけないのかも知れないと思い直す。
いなかったらいないで惑わされないで済むのに、と思ってしまっても悪くないよね。
と恨み言を思わず思ったりもして。
物思いにふけるケイトのスプーンは止まらない。先ほど渡された大皿に取り分けたアイスその他を『甘い甘い、甘死にしてしまう』と思いつつ戦っていたジョルジオが、ええぇ~と慄いた。
ケイトの口の中はもう冷たい。
でもいなくなったら。
食べる。
いなくなったら。
でも食べる。気の所為か歯がかちかち言ってきた。
いなくなったら。
「ケイトさんストーップ!!」
スプーンを持つ手首を掴まれた。ゆるゆるとジョルジオに視線を向ける。
「?呼んだ?」
視線が合うとジョルジオが無表情でケイトからまだスイーツが半分残った容器を奪った。無言で自分のスプーンを突っ込む。ケイトが軽く目を見開いたが構わず無視して口に運んだ。
「ジョルジオ君」
また気を遣わせてしまった。
ジョルジオはテーブルに備え付けの注文用タブレットで何やら頼んだ。すると、すぐにさっと店員が運んで来てジョルジオがケイトの方に目を向けた。ケイトの前に置かれたのは湯気の立った温かい飲み物だった。
「飲んで下さい、それ」
口の中に運ぶスプーンの動きは止まらない。
優しいなあ。
まだカチカチ上下の歯が鳴る音と冷えた身体で少し震える我が身をさすりながらケイトはいつでも自分に気を遣ってくれるジョルジオを見た。
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