29 / 41
(29)大食いしよう!④
ケイトが耳を手で塞ぐ。塞いでも聴こえる声に頭の中がぐるぐるして目眩がした。固く目を閉じて床にしゃがみこむ。話している内容は分からないけれど二人(主に小柄な方)の騒がしい声が聴こえ続けては心の中や耳の奥で乱反射して細かい傷が出来ている気がした。
「……さん」
知ってる声がした。
ジョルジオの声が聴こえる。
「……さん!」
もう放っておいて欲しい。
「………………ケイトさん」
はっきりと。あの二人の声をかき消して、真っ直ぐに耳に届く。
「ケイト!!」
頭の上から降ってくる声と同時に肩に手を置かれた。
「大丈夫ですか!?」
大丈夫だし大丈夫じゃない。けれどこれは言えない事だからケイトは答えなかった。
「ああ、あの変なものは消してしまいたいんですけど。いいですよね?」
変なもの?
ジョルジオの言葉と同時にパチンと音がした。
はっとして、ケイトはつい顔を上げてしまった。完全に顔を上げきる前に視界に映ったのは辺り一面の灰色の霧と一緒に消えて行った本物勇者達の姿だった。
「………………………………あ」
ただの白い空間。ケイトの視線の先ほ始まりも終わりも境界線の無い世界だった。
呆然と呟いたケイトの肩を掴んでいた手は離れる。それに気付く間もなく背中に手が回っていた。抱きしめらたと即座に分かったが感情の理解が追いつかなくて戸惑った。
「………………ジョルジオ君?」
「………すみませんケイトさん。俺のせいです」
「何が」
「本当にすみません」
「今のは忘れて下さい」
「…ケイトさん?」
ジョルジオに名を呼ばれケイトが我に返る。テーブルの向こうにはジョルジオがちゃんといる。
「何?何かした?」
ジョルジオの顔から下に目線を下げると空っぽの皿が見えた。
はっとして戦慄する。
―――――――完食してた!
いつの間に。一口で食べたとでも言うのか。
「大丈夫ですか?ぼーっとしてましたよ、悪酔いしたんじゃないですか」
「だから酔っているのはジョルジオ君、君」
「お腹いっぱいで眠くなってるんじゃないですか?」
「だ、大丈夫。俺はね、実は完食出来ない悔しさを味わいにも来たんだ」
「…はい?」
「あ、な、何でもない、うん、大丈夫」
「……………」
ジョルジオがコップに入った水を飲む。
「ケイトさん、俺ちょっと席外しますね」
「あ、うん」
「いいですか、知らない人に声掛けられても返事しちゃ駄目ですよ」
「そんな人いないから」
「(その外見に似合わない)その極盛りメニューだけで目立ちますから(虫除けの俺がいなくなったら)絶対誰か彼かは来るでしょう。心配だなー」
「子供扱いしないでくれないかな。俺大人だし。会社員だよ」
失礼な!と少しだけむっとしたケイトにジョルジオが何とも言えない表情をした。
以前、さり気なく調べて判った事だが、ケイトはきちんとしたスーツを着てても社会人と見てもらえない為、内勤業務に回されたのだと言う。
「……じゃ、ちょっとだけ。すぐ戻ります、ホントにすぐ戻りますから、知らない人について行っちゃ駄目ですからね、詐欺ですからね」
「いいから行っといで」
ああ、と思い出してケイトが席から立ち上がったジョルジオに声を掛けた。
「足元に気を付けてね」
「酔ってませんから」
さり気なくケイトの表情を確認してジョルジオはテーブルから離れた。
離れた時には色んな意味で心配で後ろ髪を引かれっばなしだった。
「………………心配だ」
「……さん」
知ってる声がした。
ジョルジオの声が聴こえる。
「……さん!」
もう放っておいて欲しい。
「………………ケイトさん」
はっきりと。あの二人の声をかき消して、真っ直ぐに耳に届く。
「ケイト!!」
頭の上から降ってくる声と同時に肩に手を置かれた。
「大丈夫ですか!?」
大丈夫だし大丈夫じゃない。けれどこれは言えない事だからケイトは答えなかった。
「ああ、あの変なものは消してしまいたいんですけど。いいですよね?」
変なもの?
ジョルジオの言葉と同時にパチンと音がした。
はっとして、ケイトはつい顔を上げてしまった。完全に顔を上げきる前に視界に映ったのは辺り一面の灰色の霧と一緒に消えて行った本物勇者達の姿だった。
「………………………………あ」
ただの白い空間。ケイトの視線の先ほ始まりも終わりも境界線の無い世界だった。
呆然と呟いたケイトの肩を掴んでいた手は離れる。それに気付く間もなく背中に手が回っていた。抱きしめらたと即座に分かったが感情の理解が追いつかなくて戸惑った。
「………………ジョルジオ君?」
「………すみませんケイトさん。俺のせいです」
「何が」
「本当にすみません」
「今のは忘れて下さい」
「…ケイトさん?」
ジョルジオに名を呼ばれケイトが我に返る。テーブルの向こうにはジョルジオがちゃんといる。
「何?何かした?」
ジョルジオの顔から下に目線を下げると空っぽの皿が見えた。
はっとして戦慄する。
―――――――完食してた!
いつの間に。一口で食べたとでも言うのか。
「大丈夫ですか?ぼーっとしてましたよ、悪酔いしたんじゃないですか」
「だから酔っているのはジョルジオ君、君」
「お腹いっぱいで眠くなってるんじゃないですか?」
「だ、大丈夫。俺はね、実は完食出来ない悔しさを味わいにも来たんだ」
「…はい?」
「あ、な、何でもない、うん、大丈夫」
「……………」
ジョルジオがコップに入った水を飲む。
「ケイトさん、俺ちょっと席外しますね」
「あ、うん」
「いいですか、知らない人に声掛けられても返事しちゃ駄目ですよ」
「そんな人いないから」
「(その外見に似合わない)その極盛りメニューだけで目立ちますから(虫除けの俺がいなくなったら)絶対誰か彼かは来るでしょう。心配だなー」
「子供扱いしないでくれないかな。俺大人だし。会社員だよ」
失礼な!と少しだけむっとしたケイトにジョルジオが何とも言えない表情をした。
以前、さり気なく調べて判った事だが、ケイトはきちんとしたスーツを着てても社会人と見てもらえない為、内勤業務に回されたのだと言う。
「……じゃ、ちょっとだけ。すぐ戻ります、ホントにすぐ戻りますから、知らない人について行っちゃ駄目ですからね、詐欺ですからね」
「いいから行っといで」
ああ、と思い出してケイトが席から立ち上がったジョルジオに声を掛けた。
「足元に気を付けてね」
「酔ってませんから」
さり気なくケイトの表情を確認してジョルジオはテーブルから離れた。
離れた時には色んな意味で心配で後ろ髪を引かれっばなしだった。
「………………心配だ」
あなたにおすすめの小説
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。