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第一章 転生、そして冒険者に
#21 刀と剣
しおりを挟むさて、みんなと話しながらの食事は美味しく平らげられたし、おかわりのエールも丁度無くなったし。
「いずれにしても、明日次第だね。さて、と、食事も堪能したし、そろそろ裏庭に行ってくるよ」
「アタイらも食べ終わったことだし、どうする?部屋戻るか?」
「そうだねぇ~…私はぁ食休みぃしようかなぁ~」
「ウチは…ナオトはんの邪魔やなければ、裏庭一緒に付いてってもええ?」
「邪魔ってことはないから付いてきても別に構わないけど…見ててもつまらないと思うよ?」
武器創ってちょっと素振りしてみるだけだからなぁ…面白いことは何も無いと思うけど。
見られて困ることも多分無いから断る理由も無いんだけどな。
「あ、大丈夫や。ウチもちょっと酔い覚ましで外の空気に当たりたいだけやから」
「なるほど、そういうことね、了解」
「んじゃ、アタイとマールは部屋戻ってるなー」
「ナオちゃん~頑張ってねぇ~。シーちゃんはぁまた後でぇ~」
「ほな、ちょっと行ってくるわ」
みんなで席を立って、マールとアーネは部屋に行くため階段の方へ、俺とシータは裏庭の案内を頼みにウォルの所へ。
丁度空いたテーブルの食器を片付けて厨房の方へ戻ろうとしていたウォルを見つけたから、近づいて声を掛けた。
「ウォル、食事終わったからさっき言ってた裏庭への案内頼めるか?」
「ん、これ片付けたら案内する。ここでちょっと待ってて」
「忙しいとこ悪いな、よろしく頼むよ」
「ん、平気」
ってことで、片付け後のウォル待ちになった。
そういやシータは宿暮らし長そうだから裏庭知ってそうな気もするけど…。
「シータって、ここでの宿暮らし長いんだよね?もしかして裏庭の場所知ってた?」
「ん?あー、確かに宿暮らしは長いんやけど、裏庭は用無いし行ったことはあらへんよ。せやから場所は知らへんのや」
「え、でも、さっき酔い覚ましに外って…」
「あ、いや、それは…その、ナオトはんが行くんなら丁度良いから便乗しようかな思て……」
あぁ、酔い覚ましは口実で、裏庭ってのを見たかっただけなのかもな。
普段用が無いんなら、丁度俺が行くのは良い機会だったってことか、なるほどね。
「そっか、うん、それなら丁度良かったね」
「その、邪魔はせぇへんから、よろしくお願いするわ…」
別に最初っから便乗して行きたいって言えば良かっただけなのに、変なとこで見栄張るなぁ…あぁ、アーネとマールの手前だったからか。
っと、片付け終わったウォルが来たな。
「にーちゃんお待たせ。裏庭はこっちだよ」
「分かった、付いてくよ。行こうかシータ」
シータに声を掛けたらコクンと頷いて、ウォルが先に裏庭のある方へ歩き出したから、それに付いてく俺とシータ。
厨房側の廊下を少し歩いて右側に折れて、更に少し歩いて左側に折れた先に裏口っぽい扉があった。
あの扉の先が裏庭か?ここの通路は一般宿泊者が普段から普通に使って大丈夫なんだろうか、後で聞いとこう。
今日だけじゃなくて、毎朝素振りくらいはしようかと。
「ここから裏庭に出られるよ」
そう言ってウォルが開けたその扉を一緒に通り抜けると…綺麗に狩り揃えられた芝生、左側には花壇やちょっとした菜園と井戸、物置小屋があり、右側にはベンチが2つあった。
広さ的には素振りするくらいなら申し分ない感じだ。
「うん、いい感じの広さだな。これなら十分鍛練出来そうだ」
「ん。もっと広いとこが良かったら、ちょっと先に公園があるから、そっちに行けばいいと思う」
「いや、大丈夫、ここを使わせてもらうよ。ここに来る時は許可とか必要?」
「ううん、特には無いよ。いつでも自由に来て大丈夫」
そっか、普通に来て大丈夫なのか。
じゃあ、これから毎朝通うことにしようかな…何かやる気出てきたぜっ。
「うん、了解。助かったよ、ありがとなウォル」
「ん。じゃあ戻るね」
「あぁ、またな」
案内の役目を終えたウォルは踵を返して戻って行った。
その内またチップでも弾んでやるかな。
さて、早速刀剣創りといきますかっ、右手刀、左手片手直剣の二振りで刀剣流ってね。
そういう設定のキャラなんだよなぁ…それ用の技までご丁寧に考えてあるし、多分使えるはずだから今からそれを確認しようってさ、思ってるわけですよ。
正直、称号のせいだかもう分からなくなってる程、ワクワクが止まらない俺がいるわけで…。
よしっ、まずは右手の刀から…厨二病時代に考えてた通りのイメージで……創造っ!
キィィィィィイイン…シュゥゥゥゥゥ……
おぉ…何だかそれっぽく出てきたぞ、地面に対して水平にして握ってた右手に柄が現れて、そこから刀身が徐々に横一文字で実体化してきて…最後に蒸気みたいな煙出して完成したわ。
吸い込まれそうな漆黒の刀身で鍔と柄に赤い模様が付いてる…今の格好にバッチリ合う、まさに厨二病疾患者垂涎の品ではなかろうか。
そうだ、鞘も創らないと…って、あれ?もう左腰に鞘まで出来てた……ま、まぁ出来てたんだからオッケーってことで、そのまま続けて左手の片手直剣もいくぜっ!
キィィィィィイイン…シュゥゥゥゥゥ……
刀と同じように、こっちは左手を地面に対して垂直にして握ってたから縦にヒルトが現れて、そこから刀身が上方垂直に伸びてって実体化…これも最後に蒸気みたいな煙出して完成。
ブレードはさっき創った刀と同じ漆黒でやや細め、ガードはちょっと独特な感じで指の方までカバーされてるのと、ポンメルと合わせてこれまた赤いラインや模様が入ってる。
こっちは背負う形だから鞘じゃなくて背に固定できる留め具が一緒に出来てた。
何にしてもこれでメインウェポン完成!早速分析解説だなっ!
[対象者:遊佐 尚斗の装備を表示]
【ステータス(隠蔽中)(装備品)】
《装備》
武器(右):闇黒刀・絶刹那(笑)
付与:自動修復(―)
絶対切断(全)
武器(左):闇黒剣・ダルクブラウヴァー(笑)
付与:自動修復(―)
絶対貫通(全)
衣服(全):影装・ブラウシェーダ(笑)
付与:自動修復(―)
自動洗浄(―)
気配遮断(極)
防具(全):闇鎧・ダルクダージュ(笑)
付与:自動修復(―)
絶対防御(全)
え、ちょっと待って、創った武器に笑われるのは百歩譲って分かるとして、何でオーガ作の服と防具にまで笑われてんの?ご丁寧にそれっぽい名前まで付いてるし…いやまぁデザイン的に笑われててもおかしくはないんだけどさぁ……これオーガに笑われてるみたいで何かイヤだわ…くっ……。
「……ナオトはん………今、何したん……?」
あ、シータいたの忘れてた…ワクワクし過ぎだろ、俺。
「え、あー、うん、ちょっと…収納から出すのに特殊なやり方をして、ね…」
くっ…苦しいか、この言い訳……でも、たった今創りました、とは言えないしな…これで勘弁して欲しいところだけど。
「そ、そうなんや…そんな出し方もあるんやな……初めて見たわ」
「何かあるみたいだね…格好良さげだったから、ついつい試してみたくなって…さ」
「なんや格好ええっちゅーか、今出来たみたいに見えたわ…」
う、鋭い…だがここは押し切るっ!
「そ、そうだよねっ、音とか見た目効果とか付いてるから、そう見えるよねぇ…こんな出方するとは俺も思ってなかったよ、ははは」
「まぁ、何にせよおもろいもん見せてもろたわ。で、それがナオトはんの武器なん?」
ホッ…一応誤魔化せたみたいだ、一安心。
「あぁ、うん。刀と剣、2本使うんだ、俺」
「へぇー、剣2本なんや、しかも両方共真っ黒やね」
「うん、そうなんだよ。基本黒が好きなのと、属性のせいかな?」
「属性…ナオトはんの属性って、もしかして……闇…?」
「そう、闇なんだよ…性格的に似合ってないのは分かってるんだけど…ね」
確かに属性は闇になってるんだけど、この世界の闇属性とは多分違う気がする、俺オリジナルの闇黒魔法から来てるみたいだし。
あと闇だけじゃないんだけど、まぁ細かくは言わなくてもいいか。
この職種選択した時点で付いた属性なんだから、性格も闇っぽくなれば良かったのに。
そうしたらもう痛いとか思わないで堂々とこの格好で胸張れたんじゃないかなぁ。
「…俺は闇……故に唯一人、孤高を貫くのみ………」とか言ってソロで突っ走ってた気がする。
「そ、そうだったんや…ということは、闇属性の魔法剣士ってわけや…」
「そうなる…のかな?やっぱりパーティーに誘ったのマズかったとか思った?」
「ううん、ちゃう、ちゃうねん。魔法剣士ってだけで珍しかったのに、属性まで珍しかったから……ちょっとまた驚いただけや」
「そっか、何かごめん、驚かせてばっかりで。ほら、来てすぐだからこの世界の常識とか全然分かってないし…」
「そんなん謝ることないて。ナオトはんが漂流者なんは分かってたことやし…なんや、ウチもマジックユーザー、しかもアルテビュータやん。せやから同じ属性魔法使うとは思ってなかったんや」
アルテビュータ?マジックユーザーって種類とかあったりするのか?もしかして…。
「えっと、アルテビュータって…何?」
「あー、ナオトはんには分からんかったか。えっとな、マジックユーザーってのは、ウチらの世界では魔力を基に魔法を行使する者の総称なんや。でな、行使する魔法の種類によってそれぞれ呼称があってな、属性魔法を使うマジックユーザーのことをアルテビュータって言うんや」
「そうなんだ、マジックユーザーって言ってもいろんな種類があるんだ…。他にはどんなのがあるの?」
「せやな、簡単に言うと、属性魔法を使うアルテビュータ、精霊魔法を使うエレメトリア、補助魔法を使うアシスポータ、神聖魔法を使うセイクリティア、邪霊魔法を使うイビレイザー、付与魔法を使うグラッディギーヴァ、この6つやな」
「結構種類あるんだね…属性魔法の属性はいくつあるの?」
「アルテビュータの属性は、風火地水氷雷光闇の8属性やね。他には聖、邪、無属性もあるけど、アルテビュータには含まれへんのや」
ふむふむ、なるほど…ってことは、8属性がアルテビュータ、無属性がアシスポータ、聖属性がセイクリティア、邪属性がイビレイザーってところかな…。
でも俺、属性は闇だけど闇黒魔法だからその6つの系統外になるんだろうな…あと邪属性も付いてるけど邪霊魔法ってのは使えないからイビレイザーってことにもならない、つまり俺はこの世界のマジックユーザーではないってことになるのか?やっぱり。
「なるほどね…ただ俺、属性は闇だけど特殊な魔法使うから、シータと同じアルテビュータにはならないんじゃないかな…多分」
「え?そうなん?闇属性魔法は使えないってこと?」
「うん、スキルも持ってないし、使えないと思う」
「そ、そうなんや…でも、それで闇属性って…」
「あー、恐らくその特殊な魔法っていうのが闇属性に近い魔法に分類されてるんじゃないかなーって…さっき教えてもらった6つには当てはまらない魔法だけど」
「ってことは、ナオトはんオリジナルの魔法ってことやね…流石は漂流者ってとこやわ」
オリジナルもオリジナル、どの世界でも俺しか使えない…はず、俺考案なんだから。
黒歴史もいいところだけど…。
「まぁ、まだ使いこなせてはいないんだけどね、来たばっかりだし。ちなみにシータは何属性使うの?」
「あ、ウチは火と風と雷の3属性や」
「へぇ、3属性持ちとか結構凄いんじゃない?」
「いや、3属性くらいまでなら結構おるで。4属性とかになるとちょっと珍しい部類になるん。ウチが知ってるアルテビュータで最高峰は『魔導帝サトリ・キュウジ』で、全属性使えるって話や」
ぶっ、それ明らかに漂流者じゃねーか…つまりチートだろ。
しかも魔導帝とか言われてるし、相当有名なんじゃないか?
「名前だけ聞くと漂流者だよね、その人…」
「そう、漂流者や。しかもそのサトリ・キュウジは無属性も使えるらしいから、アルテビュータでもあり、アシスポータでもあるって聞いたわ」
「そりゃ凄いな…魔導帝とか言われてるくらいだから何か功績とか上げた人?」
「この大陸やない国の漂流者やから話だけしか分からんけど、なんや数千単位の魔物の大群を一人で退けてその国を守ったらしいで」
おぉ、結構派手にやってるな…スタンピードってやつの鎮圧か。
別大陸、確か7つあるって言ってた大陸のどこかの漂流者ってことだから、会うこともそうそう無いだろうな…ま、縁があればってところか。
今は気にすることもないか、まずはこの大陸、この国、この都市だけでも充分だし。
「それは大層な功績だね…属性魔法って凄いんだな」
「極めると広範囲攻撃魔法として優秀やから。まぁ、膨大な魔力量があってこそやけどな」
「そこは漂流者だから能力値も並大抵じゃないんだろうね。その、魔物の大群が押し寄せることって結構あったりするの?」
「この大陸では稀やと思う。冒険者のいない国とかでは魔物自体が間引かれないからそれなりの頻度であるって聞いたことがあるけどな」
冒険者がいない国とかもあるんだ…ま、この国じゃ稀ってことだからそこまで警戒する必要もないのかな?
なんて思ってたらフラグ立ちそうな気もしなくはないなぁ…でもまぁ別にいいか、あったらあったで何とかするだろうし、冒険者達で。
ちょっと脱線したな、魔法の話だった。
「そういえば、マールってアコライトだよね…神聖魔法とか使えそうだけど」
「そや、マールは神聖魔法使えるで。ただ、職種としてセイクリティアとイビレイザー、グラドギーヴァのマジックユーザーは無いんや。聖属性と邪属性、あと付与魔法はちょっと特殊やから専用の職種、マールみたいなアコライトとかになるんよ」
「そうなんだ…でも職種は違うけど、広義に取るとアコライトはセイクリティアのマジックユーザーと同じってことだよね?」
「その通りやけど、専用職種があるとやっぱりそっちで知られて広まっとるよ」
そうなんだ…まぁ、間違いではないのが分かったからいいか。
とりあえず何となく理解出来たけど、これ、その内シータに詳しく教えてもらった方が良さそうだな…。
でも今はまず当初の目的を優先しよう。
「うん、何となくだけど聞いたところは分かったよ。その内でいいからマジックユーザーのこと、詳しく教えてもらってもいいかな?」
「そらもちろん、ウチでいいならいつでも聞いてや」
「何も知らないから本当に助かるよ。ありがとな、シータ」
「そんなん大したことあらへんのやから、礼なんていらへんよ。それよかなんや邪魔してもうたみたいでごめんな、気になって口に出してしもうて…」
そりゃ、あんなの見たら誰でも聞きたい知りたいってなるわな…別に構わないんだけど、誤魔化すのがちょっと大変だな、やっぱ。
もうちょっとお互い信頼関係深めてからちゃんと説明しよう。
「いや、それこそ構わないよ。気になるものは気になるしね」
「もう口出しせぇへんで黙って見とるさかい、ウチのことは気にせんといてな」
黙って見られてると緊張しちゃいそうな気がするんだけど…まぁ、大丈夫か。
それよりワクドキが勝ってるはずだしなっ。
「うん、じゃあそうさせてもらうかな」
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