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第二章 冒険者稼業の始まり
#15 目的地への道中にて
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※会話無しの説明回です。
―・―・―・―・―・―・―・―
門から出て右方向に延びていた街道を暫く進んだ俺達、シータの言う通り街道は整備されていて見晴らしも良く、なるほどこれなら魔物が出てきてもすぐ分かるだろうから、魔物の方からもそうそう寄ってこないだろうって感じの長閑な風景を伴った街道だった。
目的地の泉に着くまで、俺はこっちの世界の常識や知識に関して、姫達は俺が元いた世界のことなんかをお互い聞いたり話したりしながらのんびり歩いてた。
例えば、魔物について。
この世界では人類の脅威、知性はなく意思疎通は不可能であり、魔物以外のものに対しては必ず襲い掛かってくるものとして認識されている、これがこの世界での魔物だそうだ。
魔物は魔石から流れる魔力を元に活動するものの総称で、人間や動物と体内の造りが違い、血液は無くてその代わりに魔力を流して身体を稼働させているらしく、核となる魔石が体内で砕けるとその魔力の流れが失くなり、それに伴い流れの失った魔力が肉体をも溶かしていき、やがて魔石だけを残し消えていく…溶けると言ってもドロっとした感じじゃなく分解されて塵みたいにサラサラになっていくとのことだった。
でもそれだと昨日の夕食に出た魔物の肉はどうやって調理したのかと疑問に思って聞いてみたら、魔石を砕かず魔物を倒す…身動きを取れなくして魔石だけを抜き取り、その際肉体に流れていた魔力もごっそりその魔石を使って吸い取ることで、肉体を溶かすこと無く残すことが出来るっぽい。
俺が昨日森で倒してきた魔物は、ぶっちゃけ無限収納のお陰で溶けずに済んだからディモルさんの所で解体出来たってことなんだろうけど、でも魔石を砕きさえしなければ流れを失った魔力がすぐさま肉体を溶かすことは無いみたい。
なんでも魔石は原型を留めてるから魔石自体が機能しなくなっても魔力自体が惰性で流れてるからってことらしい、それで2,3日は持つって話。
ただ魔力が残ってる肉は、ちゃんと魔抜きっていうのをしておかないと食えたもんじゃないんだってさ、そこは動物の血抜きみたいだと思った。
多分昨日査定のために解体した4体の肉は、ディモルさん達が細かい手順を抜きにして解体したって言ってたから魔抜きってやつをしてないっぽいんだよね…だから食えたもんじゃないと思う。
まぁカマキリクモサソリのスパルティスだけは食えたとしても口にはしたくないけど…やっぱり虫系はちょっと……。
それから姫達の国とかこの国について。
姫達の国もこのマーリレンス大陸にあって、シータ曰く、この大陸は7つある大陸の中で2番目に大きいらしい。
ビルトスマーニア獣連邦国はこの大陸の西方にある『霊獣樹海』…大陸の約3分の1を占める大樹海の南側一体を領地として、20から30の獣人種族が同盟を組んで国を動かしてるんだそうだ。
それだけの獣人種族がいて揉め事も無いんだから、よっぽど仲が良いんだなって思ってたら、実はそうでもないらしい…とは言っても一部の獣人種族が騒がしいだけで、概ね良好な関係ではあるみたいだけど。
特に騒がしいのは猿人族と犬人族で一番顕著だそうだ…それって犬猿の仲ってやつじゃ……だったら猫と鼠なんて天敵じゃないかと思ったら、猫人族と鼠人族はめちゃくちゃ仲が良いことで有名らしい…。
あと、シータの狐人族と狸人族も割と仲が良いみたいだから、俺が元いた世界の常識とかは当て嵌まらないんだろうな…犬猿はたまたまってことで。
猿人族と犬人族も騒がしいことは騒がしいんだけど、お互い啀み合って争うような感じじゃなくて、どっちかっていうと何事でも競い合うような感じで騒がしいんだと…ようするに祭り好きってことなんだろうなぁ。
その他の獣人種族達はそれなりの関係を保っていて、全体的に見るとバランス良くまとまっているから何の心配も無いんだってさ。
シータの狐人族、マールの兎人族、アーネの虎人族、そしてラナの犬人族の領地は隣接して固まっていて、昔からよく遊んでいたって…所謂幼馴染ってやつだ、羨ましい限り。
で、大樹海の北側は、って言うとエルフ達が住む『スピーレリメント精霊王国』で、隣国しかも同じ樹海に住んでいるから獣人とエルフは割と密接に関わり合いがあり、種族は違えどかなり親密らしい…種族差別も無く仲が良いっていうのはホントにいいことだと思う、うん。
シータ達が冒険者になるために国を出てくる前には、よくエルフのお姫様がお忍びで遊びに来てたんだって、歳も近いらしくみんなで一緒になって遊んでたみたい。
まぁ、シータ達もお姫様だからね、一応。
姫には見えないけどって思ってるのは内緒で。
大樹海の東側には『竜背連峰』っていう大きな山脈があり、マーリレンス大陸をほぼ中央で分断するように連なっていて、そこは『ヴェルドグライア公国』というドワーフ達が住む国なんだそうだ。
こっちはこっちで大樹海でしか手に入らない特殊な鉱石があって、それをドワーフ達へ、その鉱石を加工したものを獣人やエルフ達へ、とお互い有益な関係を築けているみたい。
その山脈を挟んで俺達が今いる、ここブラストヘルム皇国がある。
大陸一の国土を誇ってるみたいで、俺が辿り着いたガルムドゲルンのような城塞都市はそこそこな数あるらしい。
城塞と言っても国家間の争いのためとかでは無く、やっぱり魔物からの脅威を防ぐための城塞だった。
ブラストヘルム皇国は人種が中心の国だけど、この大陸内にある国々が特徴的なせいか、獣人、エルフ、ドワーフ等の他種族に対してかなり好意的で種族間の隔たりは全く無いんだそうだ。
まぁこれはこの国に着いた時に何となく分かってたことだけど…ラナとか姫達、他の冒険者達のパーティー編成とか、あとは街を行き交う人達を見てたら、そういう差別的なのは無いんだなーって思ったし。
シータが言うには皇族が主体になってそういう他種族大歓迎みたいな風潮を作ってるから国全体が自然とそうなってるんじゃないかって。
あと国政もいろいろと頑張ってるみたいで、何処の街に行っても多少の貧富の差はあれど、最低限の生活が保障されてるらしく、スラムっていうのが存在しないとか。
マール曰く、その代わり教会の孤児院とかそういった保護施設がかなり充実していて、それも皇族が主体になってサポートしてるってことだった。
それとこれが一番驚いたんだけど、何とこの国には異世界モノでは定番の奴隷制度が無い…つまり奴隷は存在しないんだって。
これも皇族主体の風潮らしいんだけど、何でも階級制度はあっても、そもそも皇族がそういった階級関係を気にしてないから誰も気にしなくなったみたいで、貴族や平民とかの身分差別も無い…つまりみんな同じ人なんだからそんなもので差別するのは馬鹿馬鹿しい、と豪語してるんだそうだ。
別大陸には存在するところもあるらしいんだけど、そういうとこから奴隷を連れてきて入国しようものなら、まず奴隷を解放してからじゃないと国には入れないよ、っていう徹底振りなんだってさ。
この国以外の獣人やエルフ、ドワーフ達の国でも奴隷制度はないらしいから、この大陸の何処にも奴隷は存在しないってことになる。
ここまで聞いて、つまり…皇族は獣人も、エルフも、ドワーフも、そして身分差関係なく人も、みんな大好きなんだなぁ…ってことだと思った。
何か会ってみたくなったかも、どんな人達なのか凄い気になってきた…身分差気にしないっぽいし、一介の冒険者でも会えるチャンスはあるんじゃないかな、と。
ブラストヘルム皇国がこういう国だから、獣人やエルフやドワーフも、この国に来て一旗上げようと思ってる人がそれなりにいるらしく、姫達もその例に漏れず、冒険者になるならこの国でって決めてたみたいだ。
そしてここ、ガルムドゲルンは比較的皇都グラウデリアに近い城塞都市の一つなんだけど、それでも乗合馬車を使って3日はかかるんだって。
姫達が冒険者になるために国から出て来た時、出来るだけ皇都に近くて自分達の力で何とか来れる街が、このガルムドゲルンだったってことだ。
だから姫達も皇都にはまだ行ったことが無いみたいで、何でも乗合馬車はそれなりにお金が掛かるらしく、じゃあ野宿しながら歩いてってなると、道中それなりの魔物が出る地帯があってゴールドランク以上になってから行こうって決めてたっぽい。
でもラナが抜けてからはポイントも稼げず、逆にランクが下がる寸前まで来てたから皇都に行くのはほぼ諦めてたってさ。
それより何より今のランク降格寸前を回避するのが最優先だったみたいだし、しょうがないって言ってた。
まぁ、いずれは俺も行ってみたい、というかオーガに会うために行かないとって思ってるから、その時は姫達と行こうかなって…いくらパーティー組んだからって、姫達が俺と一緒でもいいっていうなら、ってのが大前提だけど。
後は俺が元いた世界の話から派生して漂流者の話。
大した話はしてないんだけど、この世界との大きな違い、魔力っていうモノが無いから魔物も当然いないってこととか、その代わり科学っていうのが発達してるってこと、それからこの世界である程度広まってるであろう魔導具の中には、多分俺の元いた世界にあったものを基にして創られてる…例えば宿屋にあったお風呂とかトイレ、あとは冷えたエールが出てきてたから冷蔵庫とかかな、他にも俺が知らないだけで広まってるものもあるんじゃないかと予想はしてる。
ただ、機能は同じだけど動力源が全く違うだろうから、もう別物って言ってもいいんじゃないかとは思うけど。
その話をしてて、こういった魔導具はいつくらいから有ったのか聞いてみたら、普及し始めたのが20年前くらいじゃないかなってシータが言ってた。
初めて漂流者が来たのはそれくらいなのか?って思ってたらアーネが400年位前にこの世界─ミクシディアの危機を救ったっていう伝説の勇者達が漂流者だったって話もあるらしく、結局いつぐらいから漂流者がこの世界に流れ着いてたのかは分からなかった。
気になったついでに今現在活動中の他の漂流者はどれくらいいるのか聞いてみたら、シータは昨日の夜言ってた『魔導帝サトリ・キュウジ』と、最上位精霊と契約した精霊魔法のマジックユーザー『精霊の護り手ヤクモ・タマムラ』って人を、マールは最上級神聖魔法の使い手のホーリービショップ『聖司祭ヒカル』と『聖女ヒカリ』っていう兄妹を、アーネは『ブレイブ・グロリアーズ』っていう召喚勇者パーティーっぽいのと『第一〇四召喚勇者師団』っていう名前だけ聞くとクラス召喚された漂流者達がいいように国に使われてるんじゃないかといった感じの部隊を教えてくれた。
どれもこの大陸じゃなくて別大陸で名を挙げてるらしいけど、じゃあこの国にはそこまで名の知れてる漂流者はいないの?って聞いたら、さっき言った漂流者ほどじゃないけど、一応皇国お抱えの漂流者パーティー『烈華絢蘭』っていうのがいるっぽい。
ただ、あんまり良い噂は聞こえてこないって話だった…問題有りの漂流者なのか?ヒロシみたいに……。
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門から出て右方向に延びていた街道を暫く進んだ俺達、シータの言う通り街道は整備されていて見晴らしも良く、なるほどこれなら魔物が出てきてもすぐ分かるだろうから、魔物の方からもそうそう寄ってこないだろうって感じの長閑な風景を伴った街道だった。
目的地の泉に着くまで、俺はこっちの世界の常識や知識に関して、姫達は俺が元いた世界のことなんかをお互い聞いたり話したりしながらのんびり歩いてた。
例えば、魔物について。
この世界では人類の脅威、知性はなく意思疎通は不可能であり、魔物以外のものに対しては必ず襲い掛かってくるものとして認識されている、これがこの世界での魔物だそうだ。
魔物は魔石から流れる魔力を元に活動するものの総称で、人間や動物と体内の造りが違い、血液は無くてその代わりに魔力を流して身体を稼働させているらしく、核となる魔石が体内で砕けるとその魔力の流れが失くなり、それに伴い流れの失った魔力が肉体をも溶かしていき、やがて魔石だけを残し消えていく…溶けると言ってもドロっとした感じじゃなく分解されて塵みたいにサラサラになっていくとのことだった。
でもそれだと昨日の夕食に出た魔物の肉はどうやって調理したのかと疑問に思って聞いてみたら、魔石を砕かず魔物を倒す…身動きを取れなくして魔石だけを抜き取り、その際肉体に流れていた魔力もごっそりその魔石を使って吸い取ることで、肉体を溶かすこと無く残すことが出来るっぽい。
俺が昨日森で倒してきた魔物は、ぶっちゃけ無限収納のお陰で溶けずに済んだからディモルさんの所で解体出来たってことなんだろうけど、でも魔石を砕きさえしなければ流れを失った魔力がすぐさま肉体を溶かすことは無いみたい。
なんでも魔石は原型を留めてるから魔石自体が機能しなくなっても魔力自体が惰性で流れてるからってことらしい、それで2,3日は持つって話。
ただ魔力が残ってる肉は、ちゃんと魔抜きっていうのをしておかないと食えたもんじゃないんだってさ、そこは動物の血抜きみたいだと思った。
多分昨日査定のために解体した4体の肉は、ディモルさん達が細かい手順を抜きにして解体したって言ってたから魔抜きってやつをしてないっぽいんだよね…だから食えたもんじゃないと思う。
まぁカマキリクモサソリのスパルティスだけは食えたとしても口にはしたくないけど…やっぱり虫系はちょっと……。
それから姫達の国とかこの国について。
姫達の国もこのマーリレンス大陸にあって、シータ曰く、この大陸は7つある大陸の中で2番目に大きいらしい。
ビルトスマーニア獣連邦国はこの大陸の西方にある『霊獣樹海』…大陸の約3分の1を占める大樹海の南側一体を領地として、20から30の獣人種族が同盟を組んで国を動かしてるんだそうだ。
それだけの獣人種族がいて揉め事も無いんだから、よっぽど仲が良いんだなって思ってたら、実はそうでもないらしい…とは言っても一部の獣人種族が騒がしいだけで、概ね良好な関係ではあるみたいだけど。
特に騒がしいのは猿人族と犬人族で一番顕著だそうだ…それって犬猿の仲ってやつじゃ……だったら猫と鼠なんて天敵じゃないかと思ったら、猫人族と鼠人族はめちゃくちゃ仲が良いことで有名らしい…。
あと、シータの狐人族と狸人族も割と仲が良いみたいだから、俺が元いた世界の常識とかは当て嵌まらないんだろうな…犬猿はたまたまってことで。
猿人族と犬人族も騒がしいことは騒がしいんだけど、お互い啀み合って争うような感じじゃなくて、どっちかっていうと何事でも競い合うような感じで騒がしいんだと…ようするに祭り好きってことなんだろうなぁ。
その他の獣人種族達はそれなりの関係を保っていて、全体的に見るとバランス良くまとまっているから何の心配も無いんだってさ。
シータの狐人族、マールの兎人族、アーネの虎人族、そしてラナの犬人族の領地は隣接して固まっていて、昔からよく遊んでいたって…所謂幼馴染ってやつだ、羨ましい限り。
で、大樹海の北側は、って言うとエルフ達が住む『スピーレリメント精霊王国』で、隣国しかも同じ樹海に住んでいるから獣人とエルフは割と密接に関わり合いがあり、種族は違えどかなり親密らしい…種族差別も無く仲が良いっていうのはホントにいいことだと思う、うん。
シータ達が冒険者になるために国を出てくる前には、よくエルフのお姫様がお忍びで遊びに来てたんだって、歳も近いらしくみんなで一緒になって遊んでたみたい。
まぁ、シータ達もお姫様だからね、一応。
姫には見えないけどって思ってるのは内緒で。
大樹海の東側には『竜背連峰』っていう大きな山脈があり、マーリレンス大陸をほぼ中央で分断するように連なっていて、そこは『ヴェルドグライア公国』というドワーフ達が住む国なんだそうだ。
こっちはこっちで大樹海でしか手に入らない特殊な鉱石があって、それをドワーフ達へ、その鉱石を加工したものを獣人やエルフ達へ、とお互い有益な関係を築けているみたい。
その山脈を挟んで俺達が今いる、ここブラストヘルム皇国がある。
大陸一の国土を誇ってるみたいで、俺が辿り着いたガルムドゲルンのような城塞都市はそこそこな数あるらしい。
城塞と言っても国家間の争いのためとかでは無く、やっぱり魔物からの脅威を防ぐための城塞だった。
ブラストヘルム皇国は人種が中心の国だけど、この大陸内にある国々が特徴的なせいか、獣人、エルフ、ドワーフ等の他種族に対してかなり好意的で種族間の隔たりは全く無いんだそうだ。
まぁこれはこの国に着いた時に何となく分かってたことだけど…ラナとか姫達、他の冒険者達のパーティー編成とか、あとは街を行き交う人達を見てたら、そういう差別的なのは無いんだなーって思ったし。
シータが言うには皇族が主体になってそういう他種族大歓迎みたいな風潮を作ってるから国全体が自然とそうなってるんじゃないかって。
あと国政もいろいろと頑張ってるみたいで、何処の街に行っても多少の貧富の差はあれど、最低限の生活が保障されてるらしく、スラムっていうのが存在しないとか。
マール曰く、その代わり教会の孤児院とかそういった保護施設がかなり充実していて、それも皇族が主体になってサポートしてるってことだった。
それとこれが一番驚いたんだけど、何とこの国には異世界モノでは定番の奴隷制度が無い…つまり奴隷は存在しないんだって。
これも皇族主体の風潮らしいんだけど、何でも階級制度はあっても、そもそも皇族がそういった階級関係を気にしてないから誰も気にしなくなったみたいで、貴族や平民とかの身分差別も無い…つまりみんな同じ人なんだからそんなもので差別するのは馬鹿馬鹿しい、と豪語してるんだそうだ。
別大陸には存在するところもあるらしいんだけど、そういうとこから奴隷を連れてきて入国しようものなら、まず奴隷を解放してからじゃないと国には入れないよ、っていう徹底振りなんだってさ。
この国以外の獣人やエルフ、ドワーフ達の国でも奴隷制度はないらしいから、この大陸の何処にも奴隷は存在しないってことになる。
ここまで聞いて、つまり…皇族は獣人も、エルフも、ドワーフも、そして身分差関係なく人も、みんな大好きなんだなぁ…ってことだと思った。
何か会ってみたくなったかも、どんな人達なのか凄い気になってきた…身分差気にしないっぽいし、一介の冒険者でも会えるチャンスはあるんじゃないかな、と。
ブラストヘルム皇国がこういう国だから、獣人やエルフやドワーフも、この国に来て一旗上げようと思ってる人がそれなりにいるらしく、姫達もその例に漏れず、冒険者になるならこの国でって決めてたみたいだ。
そしてここ、ガルムドゲルンは比較的皇都グラウデリアに近い城塞都市の一つなんだけど、それでも乗合馬車を使って3日はかかるんだって。
姫達が冒険者になるために国から出て来た時、出来るだけ皇都に近くて自分達の力で何とか来れる街が、このガルムドゲルンだったってことだ。
だから姫達も皇都にはまだ行ったことが無いみたいで、何でも乗合馬車はそれなりにお金が掛かるらしく、じゃあ野宿しながら歩いてってなると、道中それなりの魔物が出る地帯があってゴールドランク以上になってから行こうって決めてたっぽい。
でもラナが抜けてからはポイントも稼げず、逆にランクが下がる寸前まで来てたから皇都に行くのはほぼ諦めてたってさ。
それより何より今のランク降格寸前を回避するのが最優先だったみたいだし、しょうがないって言ってた。
まぁ、いずれは俺も行ってみたい、というかオーガに会うために行かないとって思ってるから、その時は姫達と行こうかなって…いくらパーティー組んだからって、姫達が俺と一緒でもいいっていうなら、ってのが大前提だけど。
後は俺が元いた世界の話から派生して漂流者の話。
大した話はしてないんだけど、この世界との大きな違い、魔力っていうモノが無いから魔物も当然いないってこととか、その代わり科学っていうのが発達してるってこと、それからこの世界である程度広まってるであろう魔導具の中には、多分俺の元いた世界にあったものを基にして創られてる…例えば宿屋にあったお風呂とかトイレ、あとは冷えたエールが出てきてたから冷蔵庫とかかな、他にも俺が知らないだけで広まってるものもあるんじゃないかと予想はしてる。
ただ、機能は同じだけど動力源が全く違うだろうから、もう別物って言ってもいいんじゃないかとは思うけど。
その話をしてて、こういった魔導具はいつくらいから有ったのか聞いてみたら、普及し始めたのが20年前くらいじゃないかなってシータが言ってた。
初めて漂流者が来たのはそれくらいなのか?って思ってたらアーネが400年位前にこの世界─ミクシディアの危機を救ったっていう伝説の勇者達が漂流者だったって話もあるらしく、結局いつぐらいから漂流者がこの世界に流れ着いてたのかは分からなかった。
気になったついでに今現在活動中の他の漂流者はどれくらいいるのか聞いてみたら、シータは昨日の夜言ってた『魔導帝サトリ・キュウジ』と、最上位精霊と契約した精霊魔法のマジックユーザー『精霊の護り手ヤクモ・タマムラ』って人を、マールは最上級神聖魔法の使い手のホーリービショップ『聖司祭ヒカル』と『聖女ヒカリ』っていう兄妹を、アーネは『ブレイブ・グロリアーズ』っていう召喚勇者パーティーっぽいのと『第一〇四召喚勇者師団』っていう名前だけ聞くとクラス召喚された漂流者達がいいように国に使われてるんじゃないかといった感じの部隊を教えてくれた。
どれもこの大陸じゃなくて別大陸で名を挙げてるらしいけど、じゃあこの国にはそこまで名の知れてる漂流者はいないの?って聞いたら、さっき言った漂流者ほどじゃないけど、一応皇国お抱えの漂流者パーティー『烈華絢蘭』っていうのがいるっぽい。
ただ、あんまり良い噂は聞こえてこないって話だった…問題有りの漂流者なのか?ヒロシみたいに……。
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