異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─

虹音 雪娜

文字の大きさ
54 / 214
第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン

#01 調査依頼

しおりを挟む


「…っかしーなぁ……こっちでいいはずなんだけどなぁ……あーもーなんだよこれっ………」

「…う~ん……今ぁ私たちがぁいるのってぇ…この辺りぃでしょぉ~…?」

「…あー、ほら、さっきのここ、もしかしてこっちやったんやない…?」

「………」





 アーネが持って広げた地図を覗き込みながら、マールとシータがあーだこーだ言ってる。
 俺もそんな皆の後ろから隙間を見つけて地図を覗き込もうとした…まぁ、俺はマップ見ろって話なんだけど、この地図も一応確かめとかないとな、と思って。


 今俺達がいるのは、ガルムドゲルンから南西に歩いて2日くらいの所にある山中の洞窟の中。
 何でも『慟哭の洞窟』って呼ばれてる場所らしく、山の麓付近の村では時折呻き声のようなものが聴こえてくる…ってのが由来だとか。

 で、なんで俺達が今現在こんな所にいて、こんなことをしてるのかっていうと…時は酒場で宴を開いた次の日に遡る───





―・―・―・―・―・―・―・―





「さてとっ。どれにすっかなーっ」

「ランクアップしたからクエストの幅が広うなってなんや嬉しいなっ」

「そうだねぇ~。失敗もぉ気にしなくてぇ良くなったしぃ~、気分的にもぉ楽にぃなったぁよねぇ~」

 朝から冒険者ギルドにやって来てギルドボードの前で今日受けるクエストを探してる姫達3人…気持ちウキウキしてる感じに見える。
 そう見えるのはギルドの中が彩り鮮やかに、華やかさが増してることも少し影響してるかな……昨日俺達が摘んできた花が至る所に飾ってあるし。
 
 昨晩はギルド酒場での祝宴で大いに飲んで食べて騒いで…結構な時間、酒場を閉める直前くらいまでいた。
 その後皆と別れて俺と姫達はメルさんの宿屋へ。

 帰り際に──


「ナオトさぁん!」

「おう、ラナ。今日はありがとな。また今度一緒に飲もうな」

「はいっ、もちろんですぅ!あ。明日もギルドに来てくれますかぁ?」

「(結構酔いが回ってるなぁ、ラナ…)あぁ、そのつもりだよ。明日からもよろしくな」

「はぁい!お任せくださぁい!えへへー」

「…(すんごい尻尾フリフリしてるんですけど…めっちゃ可愛い)」

 ポンポンっ

「えへへっ、ナオトさぁん…(ギュー」

「(あ…頭撫でたら抱き着いてきた…ホント可愛い生き物だなこれ)」


「「「「「あああぁぁぁああっ!!」」」」」


「テメェナオトっ!何してやがるんだっ!!」

「それは許されねぇぞっ!!」

「「「そうだそうだっ!!」」」

 ゴンッ、ガンッ、ガツッ、バシッ、ビシッ!

「「「「「いってぇっ!!」」」」」

「ウルセェぞオマエ等!とっとと帰って明日のために休みやがれっ!」

「「「「「……は、はい………」」」」」

「じゃあなナオト、今日は楽しかったぜ。また飲もうや」


 ──なんてこともあったけど。

 そうそう、帰り際といえばラナとリズに買ってきてたお礼のお菓子もちゃんと渡した。
 なんかお土産みたいになった感があるけど、まぁそこは気にしないでおいた。

 そのまま宿屋に戻ってゆっくり休んで、今朝は姫達と一緒に朝食を取り、ギルドまでやって来て今に至る、と。


「どう?なんかいいクエストあった?」

「んー…そうやなぁ……あ、これなんかどうや?『調査依頼(ウェラーメ村)』やって。ゴールドランクやからナオトはんにはちょっとあれやけど」

「調査依頼か…そんなものもあるんだな。あぁ、ランクは別に気にしなくていいよ」

「…どれどれ……んっと「村の近くの山中にある『慟哭の洞窟』の調査をお願いしたい。詳細は村長のモラットまで」だってよ。ちょっとしたダンジョン探索ってところか?」

「洞窟のぉ探索ぅ…大丈夫ぅかなぁ~…?」

 シータが選んだ調査依頼…洞窟の調査らしいけど詳しい内容はその村に行ってみないと分からないっぽい。
 こういうアバウトな依頼内容のものもあるんだな…簡単なのか難しいのか話を聞いてみないと判断つかないし、結構博打っぽい気がするんだけど。

「その、ウェラーメ村ってのはここから近いのか?」

「んー…どうやろ?ウチは聞いた事あらへんからなんとも…」

「アタイも知らねぇなぁ。ラナに聞きゃ教えてくれるんじゃねぇか?」

「じゃぁ~受けるかぁどうかはぁ~、場所を~聞いてからにぃするぅ~?」

「それでもいいか。じゃあそれ持ってラナのとこ行くか」

 受けるか受けないかは一旦置いといて、村の場所だけでも聞いてみようってことで依頼書を持ってみんなでラナがいる受付カウンターへ。

 今日は真ん中の窓口だった…そしてやっぱり一番長い待ち列になってた。
 急いでるわけでもないし、最後尾についてのんびり待つこと数分…俺達の番に回ってきた。

「おはようラナ」

「あっ、ナオトさんっ、おはようございますっ!」

「おっす、ラナ」

「おはよぉ~ラーちゃん~」

「おはよ、ラナ」

「うんっ、みんなおはようっ」

 元気一杯朝の挨拶を返してくれるラナ…朝からこの笑顔、ファンの皆が一日の活力にしてる意味が分かる気がするわ…。

「昨日は楽しかったよ、ありがとな」

「いえっ、こちらこそ!その…また、よければ誘ってもらえると嬉しいです…」

「うん、その時はもちろん誘うよ」

「はいっ、楽しみにしてますねっ。早速今日のクエストを受けに?」

「あー、うん、一応目星は付けてきたんだけど、その前にちょっと聞きたいことがあって」

「クエストに関してですか?なんでしょう?」

「えっとな、これなんだけど…」

 クエストボードから剥がして持ってきた依頼書をラナに見せてやって、と思ってシータの方へ振り向いたら、ちゃんと意図を汲み取ってもらえたみたいで依頼書をラナの前に差し出してくれた。

「えっと…ゴールドランクの『調査依頼(ウェラーメ村)』ですね」

「そのな、ウェラーメ村っていうんはどの辺りにあるんか知りたくてな」

「あ、なるほど、村の位置が知りたかったのね。えっと…ちょっと待ってね…地図地図……」

 カウンターの中でちょっと屈んでゴソゴソしだしたラナ…多分カウンター下に袖机みたいなのがあるんだろう、そこから地図を探してるっぽい。

「…っと、あった。ちょっと古いかもだけど、これがブラストヘルム皇国の周辺地図ね」

 引っ張り出してきた地図をカウンター上に広げて俺達に見せてくれた。
 A3サイズくらいの羊皮紙に書かれた地図だった…如何にもファンタジーっぽくていいとは思うんだけど、確か普通に紙も普及してる…よな?この世界に来てすぐの時お世話になった、ファルシェナさんの所でもらったこの街の地図と硬貨の一覧、あれは普通紙だったはずだけど…まぁ、分かればいいから別に気にするほどのことでもないか。

「ここがガルムドゲルンで…ウェラーメは……あ、ここですね」

 ラナが最初に俺達が今いるガルムドゲルンを地図上で指差し、その指をスーっと左寄りの下へ動かしていって、ウェラーメ村のある場所で止めた。
 地図上だと当然の事ながらそれ程離れてないように見えるけど、実際どれくらいかかるのかな?

「ここから南西に向えばいいのは分かったけど、距離的にはどれくらい?」

「そうですね…こっち方面の街道は途中までしか整備されてなかったと思うので、乗合馬車もあまり無いんですよね…。行くなら徒歩になると思うんですけど、この距離だと…2日くらいですかね」

 歩いて2日…元の世界でそんな距離歩いたこと無いけど、今のこの身体なら余裕でいけそうなんだが。
 スキルとかだけじゃなく身体能力もチート級とか恵まれ過ぎじゃないか?とは思うけど、かなり助かってるなぁ…ありがたい。

「2日ね…。だそうだけど、どうする?」

 姫達の方を向いてこのクエストを受けるかどうか聞いてみた。
 俺的には受けてもいいかな、とは思ってる…クエストの具体的な中身は行ってみないと分からないっていうちょっとした賭けみたいな部分はあるけど、初の遠出っていうところがいいなって。
 なんかこう、ワクワクするものがある…元の世界じゃ絶対面倒だと思ってたはずだけど、今の状態なら何でも出来るって感じだし、何より…一人じゃないってことが一番の理由かな。
 姫達と一緒ならどんな事でも楽しめそうな気がしてる。

「2日ってぇと…野営しないとだな」

「だねぇ…。野営するようなぁクエストなんてぇ~久しぶりぃ過ぎるねぇ…」

「まぁでも今はナオトはんもいるしな…ウチはええんやないかと思う」

「そーだな、いいんじゃねぇか?」

「二人がぁいいならぁ~、私もぉいいよぉ~」

 どうやら受ける方向で話がまとまったみたいだ。
 野営するとなるといろいろまた準備が必要だよな…この後ニル婆の店に行くのは確定だな。

「ほな決まりやな。ラナ、このクエスト受けるわ」

「うん、わかった。じゃあゴールドランクの『調査依頼(ウェラーメ村)』、受諾するね。調査依頼だから依頼書にサイン貰ってくるの忘れないように。あと、期限はないけど内容の詳細は村に行ってからになるから、一応気を付けて行ってきてよ」

 ラナがカウンター上の魔導具を使って依頼書を複製した…控えを作ったってことか。
 元の依頼書はシータが受け取って魔法袋にしまい込んだ。

「了解や。戻りは遅うなると思うけど、心配し過ぎんようにな」

「だな。ラナの心配性の方が心配だわ」

「それはっ…もうどうしようもないのっ!とにかくみんな無事に戻って来てねっ!」

「行ってみないことには何とも言えないけど、危なくなったら引き返してくるよ。多分大丈夫だと思ってるけど」

 俺がみんなを全力で守ればいいだけだしな。
 よっぽどの事が無い限り戻っては来れるはず…チートもあるし。

「んじゃ、ちょっくら行ってくるわっ」

「行ってくるねぇ~、ラーちゃん」

「頑張ってくるわ。お土産は…期待せぇへんでな?」

「みんなが無事戻って来てくれるのが何よりのお土産だってば」

「じゃあそのお土産は俺が責任持ってラナに届けるよ」

「はいっ、よろしくお願いしますねっ!」


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。 それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。 それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく… これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。 ――― 感想・指摘など可能な限り受け付けます。 小説家になろう様でも掲載しております。 興味があれば、ぜひどうぞ!!

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

処理中です...