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第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン

#11 リオの冒険者登録とナオトの思い付き

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「……と、言う訳だ。私がナオト君を頼る理由が分かってもらえただろうか…」

「あ、はい……」

 まぁ、頼めば任せろって言いそうな気もするけど、確かにこのパーティーへ何かを頼むのはなぁ…俺ですらこの不安感なんだから、他の人もそれなりなんだろうな……。

「しっかしよぉ、黙って聞いてりゃテメェ等何様だよ!って言いたくなっちまうのを我慢するのが大変だったぜ……」

「…よく我慢したな、アーネ。偉い」

「いや、あんなんでも漂流者なんだからその辺は弁えてるっての」

「そっか…。でもあれが俺と同じ漂流者なんだよなぁ…」

「…?そうやろうけど…なしてそんな落ち込んだ感じになるん?」

「あ、いや…同郷としてちょっと申し訳ないというかなんというか……」

「大丈夫だよぉ~。ナオちゃんはぁ~他のぉ漂流者とぉ~違うってぇ言ってたでしょぉ~、私たちぃはぁ~」

「………ナ、オト……は………マール、と…同じ……で………温か、い…よ……?………」

 リオさん、それはちょっと照れます…嬉しいですけど。
 まぁ、烈華絢蘭のみんなは若かったし、あんな感じで自信満々になるのも分からなくはないんだけどね…多分こっちの世界に来てから、やる事なす事全て上手くいってたんだろうなって。 

「ってことでナオト君、受けてもらえる?」

「…分かったよ。もし魔王が確認出来たら俺が受け持つってことで」

「ありがとう、助かるよ。じゃあフィル、後はこっちで防衛隊との連携と冒険者達の取り纏めをすぐに始めるよ」

「分かった、済まないがクリスと協力して頼む。クリスもショーを補佐してやってくれるか」

「分かりました。じゃあショーちゃん、早速行きましょうっ」

「ちょっ、クリスっ!自分で歩けるからっ!」

 そう言ってショーを抱き上げて部屋を出て行ったクリス女史。
 相変わらずショーにはベタ甘だった…。

「…あー、その、なんだ…そ、そういうわけだ。ということで、よろしく頼むよ、ナオト君」

「えーっと…あ、はい……」

 フィルさんも相当疲れてるようなので、早々に退散しといた方がいいな…ホントご苦労さまです。
 っと、後はリオの登録しとかないとな。

「じゃ、じゃあ俺達はこれで…。ラナ、リオの登録お願いな」

「あ、はいっ!では早速…」

「あ、ワタシもー」

 登録するのに受付嬢二人もいらないんだけどな、リズさんよ。


 話が終わってみんなで受付カウンターまで戻って来た後、リオの冒険者登録手続きをラナにしてもらったんだけど…ちょっとだけ困った。

「えっと…名前はリーオルエレミネア、と。年齢は…」

「……426歳で」

「…………え?」

「………426歳です」

「………………え?」

「年齢詐称してもいいなら姫達と同じ17歳でいいよっ!」

「………あ、はい。17歳、と」

 サラッと流したよっ!まぁ見た目十分通るんですがねっ!

「職種は何ですか?」

 …これが一番困った……勇者騎竜ブレイバーライドなんて昔の話だし、かと言って俺の騎竜ってわけにもいかないし……。
 選択職種のどっちかしかないかなぁ、なんて考えてたらリオが……

「…………ナオト、の……騎竜…………で……い、いよ……?………」

 とか言い出したよ…。
 いやいや乗らないよ?あ、いや、正直1回くらいは乗ってみたいけど、騎竜とかそんな俺専用みたいなことはしないですって、何を言い出すのかなこの娘はっ。

「いやいやそれはしないから。俺勇者でも何でもないし」

「………わた、し……に………乗る、の………イ、ヤ……?…………」

「リオさんっ、その言い方はいろいろマズいと思いますっ!」

 今の姿でそれ言うのは無しでっ!ごめん俺が変な方向に走っちゃってるだけなんですけどっ!


「何だよリオ、そんなに誰か乗せてーのか?だったらマールとかでいいんじゃねぇの?」

「…………マール……乗って、くれ………る……?…………」

「わ、私でぇ~…いい、のぉ…?あぁ~でもぉ…乗るならぁみんなとぉ~一緒がぁいいなぁ……」

「………じゃあ…………みん、な……の…………騎竜、で…………」

「いや、俺はいいからな?1回くらいは乗せてほしいかなってだけで…」

「ほな、ウチらの騎竜ってことにして…姫騎竜プリンセスライドとかでどうや?」

「…………(コクっ……。……そ、れ………いい…………」

 はい、決まりました。
 え、ホントにそれでいいの?リオさんや。
 いや、本人がいいなら何も言えないけど……。

「決まりだなっ!ラナ、リオの職種は姫騎竜プリンセスライドでっ」

「私たちのぉリーちゃん~だよぉ~。うふふっ」

「まさかドラゴンに乗れる日がくるとは思わへんかったわ…。冒険者になってホンマ良かったわぁー」

「えーっと…みんな何言ってるのかな?騎竜って…何の事?」

 あー、そういや言ってなかったっけ…ドラゴンだって驚かせようとしてたんだけど別なとこで驚いてたからすっかり忘れてたわ…。

「そっか、ラナには言ってなかったっけ。リオは今竜人の姿だけど会った時はドラゴンだったんだ」

「…え?ド、ドラゴン……?」

「うん~そうだよぉ~。薄紅色のぉ~凄くぅ綺麗なぁ~ドラゴンなんだよぉ~、ふふっ」

「…………(コクっ………」

「そ、そうなんだ…だから騎竜なのね…。えっと…じゃあ、職種は姫騎竜プリンセスライドってことで…。あ、もし良かったら…わたしも乗せてくれると嬉しいなぁ…なんて……。ほら、一応わたしも姫…だし」

「…………(コクっ……。………ラ、ナ…も………乗っ、て………?…………」

「えっ、いいのっ?ありがとうリオっ!やった嬉しいっ!」

 そんなに誰かを乗せたかったんだ、リオ。
 まぁでも、みんな嬉しそうだしこれでいいのか。
 かくいう俺も楽しみなんですがね、だってドラゴンに乗れるんだよ?浪漫が止まらないですよね?
 リオの称号にもあった暁の空を羽ばたく桜華の竜、その背に俺が乗ってるとか想像しただけでゾクゾクしちゃいますよ…やべ、鳥肌立ってきた……。


 パーティー申請もまとめてやってくれるってことで、俺と姫達のギルドカードも一緒に持って、ラナがスキップしながら作業しに行ったのを見送ったあと、これからどうするかをみんなで少し話しあった。

「リオの登録が終わったらどうしようか。今からバタバタしてもどうしようもなさそうだし」

「そうだなぁ…後はギルドの連中に頑張ってもらうとして、アタイらの仕事は魔物が来てからしかねぇもんな…。ま、ナオトの言う通り今更ジタバタしたってしょーがねぇし、とりあえずリオの歓迎会でもすっか」

「…こんな時に飲むとか不謹慎っちゅうか、非常識っちゅうか……」

「バッカ、こんな時だからだよっ。沈んだ空気漂わせるくれぇだったらバーっと騒いで鼓舞した方がいいに決まってんじゃねーかっ」

「まぁ、確かに不安がってるよりやる気ある方が生存率は上がると思うけど…。あっ」

「?どうしたのぉ~?」

「いや、うん、ちょっと…ね。柄じゃないんだけど、どうせ飲むならパーっとギルドにいる冒険者みんなで飲むのもありかなぁって……俺の奢りで」

「奢りて…ナオトはん、そんな金あるん…?」

「うん、アテがあるんだ。それでちょっと壊塵洞行ってもいい?」

 この世界に来た初日にお願いしてた解体がもう終わってるはずだから、それの素材である程度お金出来そうだし。
 あまりというか、ほとんど出回ってない魔物の素材らしいから、それなりの値が付くんじゃないかなーって少しは思ってたりもしてる。

「…?壊塵洞ってぇ…ディモルさんのぉ所ぉ~?」

「そうそう。みんなと会う前にさ、解体お願いしてたんだよね。もう終わってるはずだから取りに行こうと思って」

「別に構へんけど、みんなに奢れる程の何かなん?その解体したやつって」

「うん、多分…。ディモルさんも見たことない魔物だって言ってたし」

「何だよ見たことない魔物って…ナオトどっから来たんだよ」

「確か…空崩からくずの森ってとこだったかな?」


「「「か、空崩からくずの森(ぃ~)っ!?」」」


 あ、みんなも知ってるんだ。
 まぁ、この辺にある森だもんな、そりゃ知ってて当然か。

「おまっ、なんちゅーとこから来たんだよ…」

「あそこは入ったら二度と出て来れないはずなんやけど…」

「ナオちゃん…よくぅ無事ぃだったぁねぇ……」

「あー、うん、何ていうか、運が良かったというか、奇跡が起きたというか…」

 目が覚める前に襲われてたわけでもないし、目覚めてからもすぐ何かが襲ってきたとかもなかったし…厨二病設定とチートのおかげで無事森から出てこの街に辿り着けたのは、つい数日前なんだよなぁ…なんか不思議な感覚だ、間違い無く向こうの世界と正反対と言っていい程の日常を送ってるからだろうか…。

「まぁ、でも、ナオトはんが今こうしてここにいるんやから、どこから来たとかどうでもええんやけどな」

「そーだな、どんな経緯があろうとナオトに会えたんなら他はどーでもいいな」

「うんうん~、ナオちゃんにぃ会えてぇなかったらぁ~、リーちゃんにもぉ会えなかったしぃねぇ~」

「…………ナオト……が………い、ない…のは………困、る……………」

「リオのはお腹事情的な意味だよね?いや、それでもいいんだけど」

「……………そ、れ……だけ…じゃ………ない、もん…………」

 ありゃ?そうなの?それだけだと思ったのに…他に何があるんだろ…?まだ会ったばっかりでよく分かんないな…。

「まぁ、とにかくそんなわけでこれ終わったらディモルさんのとこ付き合ってくれる?みんな」

「あぁ、いいぜ」

「了解や」

「うん、いいよぉ~。リーちゃんもぉ一緒ねぇ~、ふふっ」

「…………(コクっ……。………付い、てく……よ…………」

 みんなの了解も得られたし、登録手続きが終わったらディモルさんのとこ行くか。
 初日に会ったっきりだけど、忘れらてないかな?俺…大丈夫だよな?

 ってちょっとだけ心配になってたらラナが戻って来た、奥に向かっていった時と同じようにまたスキップしながら。

「おっまたっせーっ、リオ、終わったよー!はい、これリオのギルドカードっ。あとみんなのギルドカードもねっ」

「………あ、りがと…………ラナ………………」

「ふふっ、どういたしましてっ。さっきの話、よろしくねっ!」

「…………(コクっ……。………任、せ……て…………」

 ラナよっぽど楽しみなんだな…メチャクチャニコニコしてるよ……。
 まぁ、空の旅なんてこっちの世界じゃそうそう体験出来ることじゃないんだろうな、きっと。

 よし、リオの登録とパーティー申請も終わったしディモルさんのとこ行くか。
 この際もうカウンター突っ切らせてもらおうっと、何回も入ってるしラナなら通してくれると思うし。

「ありがとな、ラナ。それでちょっとお願いがあるんだけど、ディモルさんのとこ行きたいからカウンター通してもらっていいか?」

「ディモルさんのとこ…あぁ!残り分の解体の受取りですねっ、分かりました!じゃあ行きましょうっ」

 …ん?行きましょう?って…ラナも行くつもりなのか…?

「えっと、ラナも行くのか?」

「え、もちろん行きますけど…何かおかしいですか?」

「え、あ、いや…仕事はいいのかなって……」

「あー、えっと、そ、そうっ!これも仕事ですからっ、ちゃんと最後まで責任持って見届けないといけないですしっ。あはは……」

 何かあやしい気もするけど、まぁいいか。
 そーゆーとこはリズに毒されないようにな、ラナ。

「まぁ、ラナがいいならいいけど…。んじゃカウンターよろしく。みんなも付き合ってもらって悪いんだけどよろしく」

「いちいち気にしなくていいっての。付いてくって言っただろ?」

「「「そうそう(ぅ~)」」「………(コクっ………」」

「そっか。じゃ、行こう」

 ラナにカウンターを開けてもらい、全員で裏口から壊塵洞まで向かった。
 結構大所帯になっちゃってるけど、まぁディモルさんなら大丈夫だろ、多分。


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