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第四章 皇都グラウデリアへ
#30 舞い込んできた依頼
しおりを挟むポンコツ女神のところから半ば強引に戻された後、どのくらいの時間礼拝してたのかちょっと気になったから神官の方に聞いてみたら、1,2分程度でしたよ、だって。
そんな気はしてたけど、やっぱりあんなんでも神様だったってことか。
敬う部分が俺的に全く無いからアイツに対してじゃなくて、礼拝させてもらった教会の為に少しだけお布施してひぃ達を送る為の帰路に就いた。
勿論帰り道もひぃとティシャは俺、フラウは弘史の定位置、屋敷までずっと腕の中でご機嫌でした。
しかしひぃとティシャはどうしたらいいのか…家族になんて言えばいいんだ。
あ、いや、そんなに難しく考えなくてもいいのか?所詮子供の言う事だから本気にすることもない…?
いやいや、そこじゃなくて皆の中に二人がいるってことが問題なんじゃないか?
あとこの称号に組み込まれてるってこと…俺が二人を取り込みましたって、どう考えてもそうとられるよなぁ…。
俺はただ普通に子供の相手してただけのつもりなのに…もしかして愛で過ぎたのかな?
でももうこうなっちゃってるんだから正直に言うしかないよな…覚悟決めておくか……。
俺だけ精神的に疲弊気味なのはやっぱりまだこの状況を素直に喜べない頭の固さというか、心の持ちようというか…もう少し若ければはっちゃけられたような気はするけど、ダメな歳の取り方したからこんな風になってるんだろうな、と。
ひぃ達を無事送って少し早いけど俺達も宿に戻る事にした…俺が早く帰って休みたいって言ったら皆すんなり了承してくれた、少し気を遣わせてしまったかも。
ブリュナ様は皇城からもう戻ってて、ひぃ達を送った別れ際、明日皇都を発つからって帰りの護衛もお願いされた、また冒険者ギルドで待ち合わせって。
皇都にはもういつでも転移で来れるようになったから、また用事が出来たら来ようってことで快く引き受けたよ。
ま、専属でもあるし断る選択肢は最初っから存在しないんだけど。
転移で全員送るのはやめた…冒険者らしくちゃんと仕事はしないとダメかなって。
それに急ぎでもないし、皆で旅するのが楽しくて好きになってきたからね。
宿に着いて晩御飯食べたりお風呂に入ってのんびりしてベッドで横になってたら、やっぱり精神的に疲れてたみたいですぐ寝入ってしまったらしい。
皆も気を遣ってくれたっぽく、宿に戻ってからは必要以上な攻めは受けなかった…お風呂には突入されて背中流してくれたけど…俺が疲弊しててもお構い無しな誰かさんが。
―・―・―・―・―・―・―・―
ガルムドゲルンへ戻る日、宿も引き上げて冒険者ギルドの待合所でブリュナ様達を待っていたら、いきなりギルド内がドヨドヨザワザワしだした。
何があったのかと原因を探ってみたら、今ギルドに入って来たグループが原因だっていうのが一目で分かった…何せこの街の有名人だし、うちのメンバーにもファンがいるくらいだし。
「あーっ!マニファニだっ!」
そう、入って来たのは先日ステージでも見たガールズバンド、マニオン・ファニオンのメンバーとマネージャーと思われる俺達に話し掛けてきた人だった。
案の定リズがはしゃぎだして、そのせいか向こうも俺達に気が付いて真っ直ぐこちらに向かってくる。
マネージャーから機会があれば会ってほしいって言われてたけど、まさか向こうからその機会を作ってくるとは思ってなかったぞ。
「あぁ、まだこの街におられましたか、良かったっ」
メンバーを引き連れて俺達の目の前まで来たマネージャーが俺達に話し掛けてきた。
「突然押し掛けてすみません、どうしてもあなた方にお会いしたくて」
「俺達にですか?」
「はい。今日はマニファニの皆も連れてきました。すみませんが少しだけお時間いただけますか?」
「あー、俺達も待ち合わせなんで、それまでなら…」
「ありがとうございますっ」
そう言って俺達全員で陣取ってた十人掛け(リズはリオの膝の上)の大き目な席の対面席を、先に座っていた冒険者達に譲ってもらいマネージャーとマニファニのメンバーが陣取る形になった。
隣の席だと遠すぎて話し難いだろうし。
「えー、まずは僕から…。彼女達マニファニのマネージャーをしています、カッツェトランザと言います。カッツで構いません。それからご存知かとは思いますが一応紹介させていただきますと、こちらが…」
「はいはいっ!私がギターボーカルの響 魅音ですっ!よろしくお願いしまっす!」
マネージャーのカッツ、耳が若干長いからシャリーと同じハーフエルフだと思う彼からの紹介に被せて、挙手しながら立ち上がった娘が一人。
めっちゃ元気っ娘な漂流者…ステージで見てた時もこんな感じでMCやってたから、あんまり印象は変わらない。
黒髪黒目でお団子二つ付けたセミロング、見紛うこと無き日本人JK、ステージではステージ用衣装だったから分からなかったけど、今目の前にいる彼女は制服姿だし。
「リードギターのニアネスラヴィアです、ニアでいいですよー」
この娘も一目で分かる、リオと同じ竜人種、角と翼それに尻尾がある。
リオとの違いは色くらい、リオは薄紅色でニアは青…群青色かな?髪色も同じで腰辺りまでのサラッとしたストレート。
リオと並ぶと対比が綺麗なんじゃないかと。
確かリズはニアのこと蒼竜族って言ってたっけ…リオは紅竜族だから火と水ってところかな。
何となーくこの娘からはマイペースな感じを受ける。
「えっと、ベースのニナストリィミア、です。ニナって呼ばれてますぅ」
またお会いしました獣人、この娘は…狸かな?セミロングに丸みを帯びた獣耳が可愛らしい、ちょっと恥ずかしがり屋で照れ屋さんっぽい感じ。
今も自己紹介しながらもじもじしてて声も少し小さかった。
狸ってことは、もしかしてシータと知り合いだったりするかな?こっちはラナとモリーみたいな犬猿じゃなくて仲がいいって聞いたし。
「私はドラムのマミーナシャリーナ、みんなからはマミって呼ばれてますね」
この娘は初めて見る種族かな?コウモリみたいな翼と細目の尻尾、鬼っぽい角が頭頂の左右にあって、気持ち赤みがかった黒髪ポニーテールを大き目な赤いリボンで飾ってる。
見た目は悪魔っ娘って感じだけど雰囲気はこのメンバーの中だと一番落ち着いてる気がするな。
「キーボードのファミールレティル。ファミでいい」
この娘も初めて見る種族だけど…昨日似たようなの見たわ。
エクリィと同じ天使っぽい白い翼で、頭に輪っかが浮いてる…どうなってるのかちょっと気になる。
明るい金髪のツインテールで、ちょっとツンツンした感じの雰囲気…実を言うとかなり俺のストライクゾーンド真ん中だったり。
完全にテンプレだけどこれでデレたらヤバい気がする。
ちょっと気を引き締めないと、というかこれ、会わない方が良かったかも…って、いつも気付くの遅いよ俺。
「うわぁ…ホンモノのマニファニが目の前にっ。まさか会えるなんて思わなかったよーっ!」
リズが一人盛り上がってるのは置いといて、こっちもこっちで全員自己紹介した、人数多いからさらっとね。
「それで、こうして俺達に会いに来たのは?」
「はい、あなた方冒険者、しかもうちのミオンと同じ漂流者ということで、依頼したいことがありまして…」
おっと、お仕事の話でしたか。
それはそうか、冒険者に話なんてそれくらいしかないよなぁ。
でも直接冒険者に依頼するってことはあまりおおっぴらには出来ない内容ってことか?
だったらこんな所で話すのもマズい気がするけど…。
「依頼ですか…。えっと、急ぎの依頼ですか?」
「そうですね、出来れば早めに解決したい内容なのですが…。うちのメンバーを早く安心させたいので」
「その娘達に関わることなんですか?」
「ええ、詳細はこの場だと説明出来ませんが」
ふむ、ワケありな内容ってことか…。
聞いてみないと何とも言えないけど、ここじゃ無理そうだし、どうしたもんか。
それ以前に俺達これからガルムドゲルンに戻るからなぁ…仮に受けたとしてもブリュナ様達を送ってからになるからすぐには無理なんだよな。
なんて俺が一人で考えてたら、リズが暴走した。
「分かりましたーっ!その依頼、受けますっ!」
「ちょっ、おいリズっ!何でお前が受けるんだよっ!」
「そうやっ、冒険者やないリズが受けるとかおかしいやろっ!」
「何言ってるのさっ、アーネちゃんシータちゃん!ワタシはナオトの専属受付嬢なのよっ?ナオトへの依頼はワタシが取り纏めてあげるのっ。ねっ、ナオトっ!」
「いや、まぁ、それはいいんだけど…受けてもすぐには取り掛かれないだろ?俺達これからガルムドゲルンに戻るんだし」
「戻ってからすぐまたこっちに来ればいいでしょ?マニファニ絡みなんだから絶対に受けてっ!」
どんだけ入れ込んでるんだリズ…。
そういや先日見たライブでもリズが一番ノリまくってたな…曲も全部網羅してたみたいだし。
うん、まぁ受けてもいいんだけど、すぐには無理なんだからそこを了承してもらわないとどうにもならないだろ…。
「分かった分かった、ちょっと落ち着いてくれリズ。カッツ、今言った通り俺達これからガルムドゲルンに戻るんだよ。だから受けたとしてもその後からじゃないと無理なんだけど、それでもいいなら受けてもいいよ」
「ガルムドゲルンへ…そうですか。それだと早くて一週間後くらいになりますか…」
「あー、いや、そんなには掛からないかな。早くて4日後くらいってところで」
皇都からガルムドゲルン行きは3日掛かって、次の日辺りに転移して来れるだろうから4日後で大丈夫かな、向こうで何もなければ。
「4日後…それくらいなら何とか……。どうかな?みんな、大丈夫そう?」
「私は大丈夫って言ってるでしょー?カッツが心配性なんだよーっ」
「ミオンはそう言うけどな、ニナとマミが不安がってるんだってっ」
「わたしも平気だよー」
「だからニナとマミがって言ってるだろ!ニアは分かりきってるっての!」
「ファミちゃん、わたしもそれくらいなら大丈夫だからぁ…」
「私も大丈夫だよ、ファミ。心配してくれてありがとね」
「べ、別に心配してるわけじゃねーよっ。ただ問題は早めに解決しといた方がいいだろってだけで…」
あーだこーだ言ってるけど仲がよろしいようで。
見た目は全員魅音と同じくらいにしか見えないから女子高生ガールズバンドってノリかな。
種族がバラバラだから本来の年齢は分からないけど、こっちの世界って年齢あまり関係無く感じるからな…リオがいい例だし。
「じゃあみんな、すまないけどもう少しだけ我慢してもらえる?」
「オッケー!それまで頑張るーっ」
「頑張るっつーか、この場合耐えるんだけどな」
「大丈夫だよー、多分」
「大丈夫なのはニアだけだろっ、ったく…。ニナ、マミ、もうちょいの辛抱な」
「「うん」」
どうやら話は纏まったみたいだ。
内容は分からないけどこの娘達が不安になるような状況だってのは何となく分かったから、どうにかして解消してあげますか、リズの押しもあるし。
「では、4日後、またここでお会い出来ますか?」
「分かった、それで。時間は…ちょっと遅い方が助かるんだけど」
「なら、九つ鐘前くらいでどうですか?」
「うん、それなら大丈夫だと思う」
「はい、すみませんがよろしくお願いします」
と言う訳で突発的に依頼が舞い込んできた…今回はリズのせいで強制的に受けさせられたけど。
内容も分からないのにさ。
アーネ達も半ば呆れた感じになってるし…。
けど、まぁ受けたからにはやるしかないから頑張るよ。
とりあえず、無事ガルムドゲルンに戻ってからね。
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