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第五章 姫達の郷帰りと今代の勇者達
#01 皆で迎える朝
しおりを挟む「ふふっ、みんなぁ~気持ちぃ良さそうにぃ~眠ってるぅねぇ~」
「昨晩はお楽しみでしたね、ってか。けどこのベッド、まだまだ寝られそうだなぁ、やっぱ」
「そうだぁねぇ~。今度ぉ全員でぇ~寝てみようかぁ~?」
「ま、それはそれで楽しそうだけどな。とりあえず起こすとするかぁ」
「はぁ~い、それじゃぁカーテン開けるぅよぉ~」
シャーッ
窓から射し込む朝の光がベッドの上で寝ている俺達を襲い、目蓋を閉じていても眩しさを感じて、それを避ける為に寝返りを打とうとしたら、身体に抵抗があって上手く寝返りが打てず、仕方無く目を開けてみたら…どうも眠りについた時と全く同じ態勢だったみたいで、俺の両腕をひぃとティシャが枕にしててまだすやすや眠ってる。
それだけじゃなくて…何故か俺の腹の上にリズが乗っかってた。
確か…寝付く時はひぃの向こう側にいたはずだよな…どうやって乗っかってきたんだか。
「お。起きたか?ナオト」
「ナオちゃん~おはよぉ~。ふふっ」
声がしたから視線だけをそっちに向けると、マールとアーネがニコニコしながら俺の方を見てた。
あー、起こしに来てくれたのか…。
「んー…。もう朝か…おはよう、アーネ、マール」
「おう、おはようさん」
「ぐっすりぃ眠れたぁみたいだぁねぇ~、ふふっ」
「あー、うん…みんなのおかげでね」
「スッキリしたかよ?」
「……バレバレかよ………」
「そりゃあ、な。ま、それはまた後でゆっくり話聞くとして…」
「今ぁシーちゃん達がぁ~、朝ご飯用意してぇくれてるからぁ~、そろそろぉ~ねぇ~」
そっか、だったら起きないとな。
まだ全員気持ち良さそうに寝てるけど、起こすとしますか…。
両腕をゆすってまずはひぃとティシャを起こしてみる。
「ひぃ、ティシャ。朝だぞー」
「うにゅー……」
「うぅーん……」
揺らした両腕から頭が離れて上半身を起こした二人。
まだ眠そうに二人共目蓋を擦ってる…その仕草が可愛いことこの上ない。
「ふわぁー。ナーくん…おはよぉー」
「あふ…。おはようございます、ナオトお兄さま…」
「二人ともおはよう。悪いけどそっちの二人も起こしてくれる?」
ひぃ側にいるファルとティシャ側にいるウェナを任せて、俺は上に乗っかってるリズを起こすことに。
二人から解放された両腕を使ってリズを揺すってみる。
「リズ、ほら起きろっ」
「……んん……にひひ…ナオトぉー……」
「…まだ夢の中なのか?」
ちょっとヤリ過ぎたか…?リズの身体には酷だったかも、たとえ夢の中だとしても。
ファルとウェナも二人に揺すられてるけど反応が鈍い。
「リーズー、起ーきーろー」
揺すっても起きなさそうだったから、ほっぺたをふにふにしてみる。
あ、これ俺が気持ちいいわ。
調子に乗って続けてたら、やっと気が付いたらしく、目を開けて俺の腹の上で起き上がった。
「……あれ…?ここ……」
「もう夢の中じゃないぞ。おはようリズ、起きたんならそこから退いてほしいんだが」
「…あ、ナオト……の、上にいる…?なんで…?」
「それは俺が聞きたいんだけどな。ほら、早く降り「あ…にひっ。朝から元気ねぇー、ナ・オ・トっ」………あ」
丁度良い所にリズがお尻を乗っけてる…。
いや違うそれ生理現象だからっ!
「あんなに夢の中で「違うっ!今のこれはしょうがないやつなんだって!」……分かってるってば、にししっ」
起きて早々からかうなよっ、いいから早く退いてくれっ!まったく…。
俺とリズがそんなやり取りしてる間に、ひぃとティシャがやっとファルとウェナを起こせたみたいで、これで全員お目覚めとなった。
「おはよう、みんな。シータ達が朝ご飯用意してくれてるみたいだから、行こうか」
「「はーいっ」「はいっ」」
うん、二人は朝から元気そうだ。
いい笑顔でこっちも元気になりそうだ…今日一日これで頑張れるってもんだなっ。
「ふあぁー…あふぅ……。んーっ!みんなおはよぉー」
「……おはよう…ございます…。皆様……」
ファルとウェナはまだ少し眠そうだな。
この二人もちょっと引きずってるかな…夢の中のこと。
リズ同様やり過ぎた感があるしなぁ…ごめんな、堪え性が無くて。
もう夢の中だと分かったら完全にノーブレーキで突っ走っちまうんだよ…。
「みんな起きたな。んじゃ下降りっか」
「そうだぁねぇ~。私もぉシーちゃん手伝ってぇくるよぉ~」
全員ベッドから降りて俺の部屋を出て階下へ。
洗面所でサッと顔を洗い食堂へ向かうと、何やら良い香りが…。
「あ、みんなおはようさん。もうちょっと待ってな、もうすぐ焼き上がるよって」
あー、何か焼いてる匂いか、これ。
っていうか、多分パンだよな、この匂い。
え、焼き立てのパンが出てくるの?
「うわぁ…いいにおいするよーっ」
「わたくしちょっと行ってきますっ」
そう言ってひぃとティシャがシータ達の所へ駆けて行った。
そういやティシャはシータに料理教えてもらおうとしてたっけ。
いや、しかしシータのスペックが高過ぎるような…。
君、冒険者だよね?しかもマジックユーザーでしょ?
もしかして、また職種勝手に変わってお嫁さんになってるわけじゃないよな…?ありえそうなんだけど。
俺の、お嫁さん…。
あれ?めっちゃ嬉しいんですけど……っ。
「ちょっと何?そのニヤけた顔はー」
「なに考えてたんだよ?あ?」
「え、あ、いや…シータって冒険者っぽくないなぁって…家に居ると」
「そうですね。家庭的な面が強いですし」
「あー、そういうことか。シータは昔っからあんな感じだしなぁ。特に料理は好きでやってるしな」
そっか、昔はお嫁さんになりたいとか言ってたくらいだし、やっぱりこういうのが好きなんだな。
狐のお嫁さんとか、最高なんですけどいいんですかね?俺明日生きてるよな?運使い果たしたりしてない?
「なぁにナオト、シータちゃんみたいに家庭的な娘がいいの?」
「いや、いいっていうか…あ、うん、正直言うととてもイイデス」
「あれ、ナオトのだぜ?」
「あれって…。でもそれがまだちょっと実感無いんだよ…。ホントに?」
「何よ、昨日あれだけ言ったのにまだなわけ?」
「あ、うん…早々すぐには……」
「ま、いーじゃねーか。別に焦る必要も無ぇんだしよ。ゆっくりやってけよ」
昨日そうやっていこうって決めたんだけど、中々上手く飲み込めないんだよな…何でだろ?
俺にとってあまりに都合良すぎてまだ半分くらい夢というか妄想入ってるんじゃないかと自分を疑ってるとこがあるんだよな…。
いい加減現実だって認識しても良さそうなのに。
多分元の世界とのギャップが激し過ぎるってのもあるんだろうな、とも思う。
「お待たせっ、焼き上がったからみんな座ってなー」
俺達料理してない組は既に座ってるんだけど、シータと一緒に料理してた組も席について、朝食が始まった。
焼き立てのパンの美味いこと美味いこと。
こんなの朝から出されたら、食い過ぎて太っちまうわ。
後で庭ででも身体動かそう、うん。
皆も美味そうに食べてるし…ひぃなんてもうお嬢様っぽくない食いっぷりだよ、アーネは当然の事ながら勢いが半端ない。
ティシャはシータの隣に座って一生懸命あれこれ聞いてる、料理を指差しながら。
やる気満々って感じでシータも優しげな目をしてティシャに答えてる。
昨晩一緒に寝たリズ、ファル、ウェナは、ちゃっかり今日休暇を取ったらしく、朝からのんびり出来ていいって話しながら朝食を取ってた。
リズなんか昨日帰って来たばっかりなのによく取れたな…クリス女史がよく許したもんだ。
と、昨日の晩餐に続き、朝からこの風景、俺ホント天に召されないよな…?頼むぞ、エクリィ。
朝食が終わり、やっぱり食べ過ぎたっぽいから少し食休みした後、庭に出て身体を動かすことにした。
適当に素振りをしてから脚を使って剣舞っぽく、時折刀技を出したりと、小一時間程やって家の中に戻ると、セヴァルさん達がいつの間にか来てた…。
「皆様、旦那様より許可をいただきましたので、早速本日より務めさせていただきます。よろしくお願い致します」
「ありがとうございます、セヴァルさん。すみませんがこれからよろしくお願いします」
「はい、お任せください。それとナオト様、私共に敬称や敬語は不要です、主になられたのですから。皆様も同様で構いません」
「あー、うん。分かった、そうさせてもらうよ」
「はい。では一応改めまして、私が執事を務めさせていただくセヴァルティアンです。今まで通りセヴァル、とお呼びください。そして彼女達がメイドとして皆様とこの家の事を受け持ちます」
セヴァルが改めて自己紹介をしてくれて、それに続きメイドさん…メイド達も一人ずつ挨拶をしてくれた。
「エマージュノーティスと申します。エマ、とお呼びください。私が最年長となりますので、メイド達の取り纏めを致します。どうぞ宜しくお願い致します」
ビシッとした雰囲気を持つ、眼鏡を掛けたメイド、エマがそう挨拶してお辞儀してきた。
最年長といっても見た目的にまだ20代だろうな。
要するに…皆若いってことか。
何となくだけどクリス女史に似た感じが…。
「チェルシオルネアといいます。チェルとお呼びください。皆様宜しくお願いします」
「キャムナトロニエです。キャムとお呼びください。皆様宜しくお願い致します」
この二人は良く似てるな…もしかして双子姉妹とかなのか?
二人共サイドテールで、右がチェル、左がキャム、と。
でも入れ替えられたらどっちか分からなくなる気が…。
某アニメのアイドルみたいに、いたずらっ娘じゃないことを祈る。
歳の頃はシータ達やウェナと同じくらいかな。
「コ、コロネロコロン、なのです。コロネ、とお呼びくださいなのです。よ、よろしくお願いします、なのです…」
最後に挨拶してきた娘は…これまたちっちゃい。
リズよりちょっと大きいくらい?いや、あまり変わらないな。
ひぃとティシャ、リズと合わせてミニマム組に入りそうだ。
アーネはギリギリセーフってことで。
最年少みたいだから結構ガチガチに緊張してるっぽい。
そんな緊張するようなこと無いんだけどな、俺達貴族ってわけじゃないし。
家が貴族邸なだけで。
「えっと、コロネだっけ。そんなに緊張しなくてもいいから。他のみんなも適度で構わないからね、俺達貴族じゃなくて冒険者なんだから」
「せやな、むしろ普通で構へんくらいなんやけど」
「そうねー、家のこと任せるのが主なんだから、ワタシ達にまで気を遣うことはないよー。ジブン達の事はジブン達でやるし、ねっ」
「わたくしも、できるかぎり自分のことは自分でやりたいと思っていますので」
「うん、わたしもーっ」
「というわけなんで、そのつもりでよろしく」
「よろしいので?」
「もちろん。セヴァル達のやり易いようにしてくれて構わないから。どっちかっていうとこっちからお願いしてるわけだし」
半分は冒険者なんだから、家空けることもそれなりになると思うし…。
まぁ、転移で戻れる時はなるべく戻ろうかな、とは思ってるけど。
「畏まりました。私はこれがほぼ素になりますので、このままで失礼します」
「私達もこれで慣れてしまっているので、追々慣れていくようにしていきたいと」
「じゃあ、そんな感じでよろしく。部屋は一階の余ってる部屋どこでも使っていいから」
「ありがとうございます。では荷物を置いて早速仕事に取り掛かります」
「あ、そうだ。今日は俺達パーティーだけ皇都に行く予定だから伝えとくよ。来て早々空けて悪いんだけど、残ってる皆と上手くやってもらえる?」
「はい、お任せください。こちらは何もご心配無く」
うん、頼もしいな。
この街は治安も住んでる人達も全然問題無いだろうし、安心して行ってくるか。
「リズ、ファル、ウェナ、それにひぃ、ティシャ。そういうことなんでよろしくな」
「大丈夫よ。こっちは何も心配しないでちゃんと依頼熟してきてねっ。あ、サインだけ貰ってきてー」
「はいはい、言うと思ったよ。んじゃ、ちょっと早いけどもうちょっとしたら行くか」
「ならアタイらも準備しとっか」
「だぁねぇ~」
「ナーくん、お姉ちゃんたち、おしごとガンバってねーっ」
「ぶじなおもどり、お待ちしています」
「なんやええな…こういうの。やる気出るわ」
俺もだ。
皆の為にって強く思える…。
なんで元の世界だとこんな風に思えなかった…あ、いや、思えなくなってしまったんだろう。
ガキ共がまだ小さい頃は俺の稼ぎじゃギリギリだったから、結構必死になって頑張ってたんだけど、フリーになってちょっと余裕出てきた頃にはもうガキ共も大きくなって、俺も好き勝手出来る余裕が出来て…って、結局自分のせいか。
うん、今ならそうならないようにやっていけそうだ、自分で付けた轍は踏まないよう、皆の為にって。
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