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第五章 姫達の郷帰りと今代の勇者達

#03 複合依頼

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 中に入った皆から呼ばれたのは、15分くらい経った後だった。
 どうもニアとファミが一緒に入浴中で、その上更に魅音も着替え中だったらしい。
 予感が的中した…危ない危ない。
 とりあえず回避は成功したみたいで良かった。


「ごめんねー。ファミとお風呂入ってたー」

「私が入ってたんだよっ!お前が後からいきなり入って来たんだろっ!」

「えー、だってファミと入りたかったんだもん」

「あーんっ、私も一緒に入りたかったーっ!」

「ふ・ざ・け・ん・なっ!ニアだけで十分だってのっ!」

「えぇーまたまたぁー、ホントは一緒に入りたかったでしょー?」

「はぁっ!?んなわけねーだろっ!一人でゆっくり入りたかったっつーのっ!」

「はいはいみんな、お客さん来てるんだからちょっと静かにしようね」

「マミちゃんの言う通りだよぉ。みんな少し落ち着いてぇ」


 相変わらず賑やかな娘達だ。
 こんな娘達からの依頼なんて何なんだろう?
 何も問題無さそうに見えるんだけど。


「なんつーか、おもしれーやつばっかだな。くはっ」

「せやなぁ、仲良さそうやわ」

「……仲良し、は……いい…ね………」

「そうだぁねぇ~。私たちもぉ~変わらないとぉ思うよぉ~、ふふっ」

「そうね、仲の良さなら負けてないんじゃない?」


 うん、君等も負けてないと思う。
 かしましいのは変わらないし。
 いや、いい事なんだけどね、俺も楽しいし。


「全員いてくれ良かったよ…。あ、すみません、では皆さんこちらにお掛けください。今お茶の用意を…」

「あ、私がやるからいいよ。カッツも座ってて」

「マミ、私もやるよ」

「あ、うん。ありがとね、ファミ」

「べ、別に礼言われる程のことじゃねーしっ」

「二人共ありがとう。じゃあお願いするよ。さ、皆さんもどうぞ」


 カッツに勧めらて、6人並んで座ってもまだちょっと余裕のある大き目なソファーに全員で座る。
 流石はVIP、というかスイートルームって言うんだっけ、こんなトコ元の世界でも実際見た事無いからよく分からない。
 とにかく何処もかしこも豪華で広い。
 余裕でパーティーとか出来ちゃいそうな所だ。

 マミとファミが全員分のお茶を用意してくれて、彼女達も各々座ったところでカッツが早速話を切り出してきた。

「早速ですが、皆さんにお願いしたいことというのは、彼女達マニファニの身辺警護と、原因の究明、解決なのです」

「…?身辺警護は分かるけど、原因究明と解決?」

「あ、はい。実は…ここ最近、彼女達の身の回りの物が紛失するという事態が頻発してまして…」

「何か盗まれたんか?」

「いえ、盗まれたかどうかははっきりと言えないのですが…始めはちょっとした私物だったんです。それが段々と度を越してきたというか……」

「私は髪飾りを失くしちゃって。あれ結構お気に入りだったのにぃっ」

「わたしはピック。オリジナルで作ってもらったやつ」

「衣装の飾りだけ失くなってたってのもあったな。んで、極めつけは…」

「私とニナのは衣装ごと失くなってて……」

 …明らかに窃盗じゃないか、それ。
 しかも…ヤバそうなやつ、所謂ストーカーってやつの仕業じゃ…。

「衣装までってなると、どう考えても盗まれたとしか思えないな…。ということは、犯人捜しと確保ってことか」

「誰かの仕業だとすると、彼女達の身も心配なので…」

「護衛も付けて犯人見つければいいってことか。ったく、質悪ぃな…くっそムカつくぜっ」

「ウチらに依頼したのはやっぱり大っぴらにはしたくないからか?」

「はい、あまり大事にすると活動に支障をきたすと思って。あなた方を見つけられたのは偶然でしたが、ここはもう縋るしかないと思いまして…彼女達のために」

 そういえばあの時よく俺達のこと見つけられたな…あんな沢山の観客の中から。
 偶然にしては出来過ぎな気がしないでもないけど、まぁそこはこの際置いておこう。
 とにかく彼女達の身の安全を第一に考えて、後は…ストーカー確保か。
 俺の感は恐らく漂流者絡みだと予想しちゃってるんだよなぁ…今まで会ったこっちの世界の人、っていうか、この国の人達はそういうことするような感じがしないし…。
 まぁ、ガルムドゲルンと違って皇都は人多いから、もしかしたらそういう人もいるかもしれないけど、それでも漂流者が犯人って思っちまう。
 なんせやりたい放題だからな…それっぽいスキル持ってたらいくらでもやりたいようにやっちゃうんじゃないかと。
 …既に見ちゃってるし、な……。

「依頼の内容は理解したよ。俺は受けてもいいと思ってるけど、みんなは…」

 ってメンバー皆の顔を見たら、聞くまでも無いって感じだった。
 アーネなんかあからさまに怒ってるっぽいし、他の皆も許せないって雰囲気を出して険しい表情してる、リオは雰囲気だけね。

「…って、聞くまでもないか。じゃあカッツ、その依頼受けるよ。ただ一応冒険者ギルドに通してもらわないとだけど、そこは大丈夫?」

「はい、勿論です。事前に確認して受けてもらえたら依頼を出そうと考えてましたので。依頼提出の時にはご一緒してもらえないかと」

「そこは構わないよ、事情も分かったし。なら正式な依頼は明日として、今から行動することにするか」

「っ!?よろしいんですかっ?」

「当然だろっ!とりあえず護衛はアタイらの仕事だな。ナオトは犯人捜し頼むぜっ」

「だな。カッツ、ここは暫く使えるのか?」

「ええ、二週間程押さえてあります」

「了解、なるべく早く解決するよう頑張ってみるよ。その間みんなは彼女達のこと頼むな」

「任せときっ。ウチらがぴったり張り付いとくわ」

「……(コクっ………。……任せ、て………」

 皆のやる気は十分みたいだ。
 今のところ身の危険は無いみたいだけど、いつエスカレートするかも分からないしな。
 相手が俺の予想通り漂流者だとうちのメンバーでもちょっと手に負えなくなるかもだから、俺が早目に見つけないと…割と責任重大だな、これ。


「マニファニのみんなは、わたし達と一緒でも大丈夫?」

「邪魔にぃならないようにはぁ~気を付けるぅつもりぃだけどぉ~…」

「大勢の方が楽しそうでいいっ!」

「わたしもいいよー、楽しそう」

「楽しそうってなんだよ!ったく、この二人は…。マミとニナは?」 

「うん、私も大丈夫かな」

「わたし達のせいでこんなことになってぇ、ごめんなさいぃ…」

「何言ってんだ、お前らのせいじゃねぇんだから、んなこと気にすんなよっ。アタイらがしっかり付いててやっから安心しろって、な?」

「アーネちゃん…。うんっ、ありがとぉっ」

 うん、こっちは大丈夫そうだ。
 それじゃ早速動くとしますかね…って言ってもまず何からしようか。
 闇雲に捜しても見つかるわけ無いし、探査って出来るのかな…?


[漂流者に関しては一度認識しなければマップ表示出来ません]


 あー、やっぱりそう簡単にはいかないよな…。
 やっぱ相手の動きがありそうな時に見張るのが一番手っ取り早いよな、そうすると…。

「なぁ、魅音達の物が無くなったのって、いつどこで?」

「えっとねー、私のは楽屋に置いてあって、ステージ上がる前にはあったの。で、終わって楽屋に戻って来たら無くなってたんだよぉー」

「わたしも同じー」

「ってか全部そうだっただろ?マミとニナの衣装だってその日着てたやつじゃない、一つ前のステージで着てた衣装だったし」

「誰もいない楽屋を狙ってってことか…。当然誰でも入れるってわけじゃないよな?」

「勿論です。関係者専用のパスが無いと楽屋までは来れませんし」

 普通に考えたらそうだよな…ってことは、誰にも気付かれないようなスキルを持ってるって考えた方がいいか。
 やっぱり漂流者のような気がしてきた…。
 何でそういう使い方するかなっ、ちょっと考えたら分かりそうなもんだろうっ!
 元の世界でもそういうことしてた奴ってことか…?いや、流石に犯罪者まで転生させたり召喚したりしてないと思いたい。
 そこは後でエクリィを問い詰めてやるとして。
 あ、エクリィと言えば…。

「だよな。ところで魅音は収納スキルって持ってないのか?俺と同じ漂流者だよな?」

「そうだけど、持ってないよー?」

「え、持ってないんだ…。じゃあ転移は?」

「持ってなーい」

「あ、そう、です、か……」

 どこの誰が転生だか召喚したか分からないけど、エクリィをとっちめるのは確定した。
 俺みたいに付け忘れたとか言ったら神様といえどタダじゃおかないぞ、こんな娘にこそ必要だろうに。

「そうすると…やっぱり楽屋張るのが一番早いか。次のステージはいつ?」

「明後日ですね。明日は取材が一件とリハーサルです。その後は明後日に備えてもらう感じで」

「なら、明後日のステージが狙い目か…。一応明日のリハの時も張っておこう」

「すみませんがよろしくお願いします。すぐ解決出来るといいのですが…」

「でも、いきなり5人も護衛付けると警戒されるかもな…。何か上手い方法無いかな?」

 護衛付けたらこっちが警戒してるってモロバレだろうから、相手も警戒してくるよな、多分。
 護衛って気付かれないよう近くにいられる方法があればいいんだけど…そんな上手い方法は無いか。


「あっ、それならいい方法があるよーっ」

「げ。ミオンのそれ、ぜってーろくでもない方法だぞ…」

「むーっ、ヒドいよファミーっ!私だってやる時はやるんだよーっ」

「はいはい、んじゃ聞いてやるから言ってみ?」

「んとねー、シータ達も一緒にステージ上がればいいんだよっ!」


「「「「「…は?」」」」「……?……」」


「あー、つまり私達と同じ出演者なら一緒にいても別に変じゃないってことか。ミオンからそんなマトモな案が出てくるとは…熱でもあるんじゃね?」

「熱なんかないよぉーっ」

「いや、それのどこがマトモなんや…ウチらが出演者て、そんなん無理に決まっとるやろ」

「そうだぜ、アタイら音楽なんてやったことねーし」

「本当にステージ上がるわけじゃなくて、いかにも出演者です、って見た目で分かる格好していればいいんじゃないかな?」

 マミの言いたいことはつまり、魅音達みたいなステージ衣装着てれば、そんなに違和感無く側に居ることが出来る、と。
 要約すると…シータ達のコスプレが見れる、と。
 何それ一石二鳥なナイスアイディーアじゃないかっ!

「ソレだっ!」

「ソレだっ!って…わたし達がマニファニの着てるような衣装を着て護衛する、ってことですか?」

「ステージっていうか、会場で側につくならそれがいいと思う。如何にも冒険者です、って格好の人がステージ裏にいるのは逆に目立つだろ?」

「確かにぃ~そうかもぉだけどぉ~…」

「ウチらがそんな格好しても大丈夫かいな…」

「大丈夫だよー。みんな可愛いから、うん」

「うん、そうだねぇっ。わたしもシータちゃん達なら、とっても似合うと思うのぉっ」

 ほら、ニアとニナのお墨付きも貰えたし、それでイケるってことだよっ。
 まぁ、完全に私欲入ってますがっ、俺が一番見たいっていう、皆のステージ衣装姿を!

「まぁ、仕事の為ならしゃーないか…似合うとは思えねーけど」

「ううん!絶対似合うよーっ!みんなっ」

「ま、まぁ、似合うんじゃね?」

「ふふっ、私もそう思うよ。それじゃ明日は衣装合わせからだね」

「……わたし、が…着れる………衣装…ある、かな……?…………」

「あるよー。リオはわたしの衣装で大丈夫だと思う」

 同じ竜人同士だし、丁度いいのがあるっぽいな。
 背丈も似たようなもんだし、リオとニアは。

「それじゃあカッツ、明日はそんな感じでよろしくーっ!」

「うん、分かった。スケジュール確認しておくよ。皆さんもそれでよろしくお願いします。出演側についても上手く調整してみますので」

「じゃあその方向で。明日はちょっとバタバタしそうだな…カッツは俺と朝一でギルドかな」

「はい、お願いします」

「それじゃ、ここは皆に任せて…俺達はどこに?」

「そうですね、少し手狭ですが事務所の方で…」

「え?こんなに広いんだからカッツも尚斗君もここでいいんじゃないのー?」

 それはそうかもしれないけど…欠陥称号の吸引力がなぁ…。
 まぁ、カッツも居るし何かあるってことも無いだろうけど、極力避けられるなら避けた方がいいと思うんですよね…。
 今のところ、何かやる度吸い込んでるので。


「マニファニのみんながええなら、ウチらは構へんよ」
 
「みんないいよねっ?ねっ?」

「わたしはいいよー」

「うん、私もいいと思うよ」

「私もいいかなぁ」

「あー、みんながいいなら、いんじゃね?」

「はい決まりーっ!」


 と、言う訳でクエスト中の拠点はここになりそうです。
 いろんな意味で気を引き締めていかないといけないようです、はい。


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