異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─

虹音 雪娜

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間一章 ガルムドゲルンの日々

#03 登園の一コマ(SIDE:ヒナリィ)

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□■□■□





「フラウー!いっしょに行くよー!」

「ちょっとヒナリィ…ドアを開けてから言いなさいな」


 わたしの名前はヒーナリナリィ・ルナ・リリエンノルン、みんなからはヒナリィって呼ばれてるのっ。
 だんなさまのナーくんは、ひぃ、って呼んでくれてるけどねっ。
 なんでも元の世界にいるナーくんのむすめのことをそう呼んでたみたいで、わたしもそう呼んでいいよーって言ったら、よろこんでそう呼んでくれるようになったの。
 とくべつな感じがしてわたしはとっても気に入ってるんだーっ。

 今いるのはわたしの家のとなりに住んでいるフラウ…フラウシャッハ・テラ・ガルムドゲルンの家のとびら前。
 これからミルティシア学園に行くからおむかえに来たの、ティシャといっしょにねっ。
 フラウはヒロシお兄ちゃんたちとエルフの国、フラムお姉ちゃんの家族のところへ行ってたんだけど、ちょっと前にフラウだけ帰ってきたんだー。
 いつまでも学園をお休みするわけにはいかないからだってっ。

 そのフラウが、しつじさんに開けてもらったドアからすぐ出て来た。
 行くじゅんびはできてたみたい。


「おはようございますわ、二人とも」


「おはよーフラウっ」
「おはようごさいます、フラウ」


「さ、行きましょうか。では、行ってまいりますわ」


「行ってらっしゃいませ、フラウお嬢様」
「「「「行ってらっしゃいませ」」」」


 フラウの家にいるしつじさんとメイドさんたちに見送られて、学園に向かって歩き出したわたしたち。
 ナーくんのところに来る前は、きぞくだったから馬車でおくりむかえしてもらってたけど、今は三人で歩いて学園まで通ってるの。
 ナーくんはきぞくじゃなくて、ぼうけんしゃだからねっ。


 家から学園まではわたしたちが歩いて15分くらい。
 三人で今日のお勉強のこととか、休み時間はなにしよっかーとかお話ししながら歩いてると、前のほうに知ってる子たちのかたまりがいた…うん、わたしたちのお友だちだよっ!

「みんなーっ、おはよーっ!」

 ティシャとフラウをおいて、わたしだけお友だちの所にかけよったの、でもこれやると…

「ヒナリィっ、また走ったりして…はしたないっていつも言ってるでしょうっ」

 ほら、やっぱり。
 ティシャはいっつももっときぞくらしくお上品になさいっ、とか言うんだよー。
 けどさー、わたしたちもうきぞくじゃないんだからいいでしょっ。

「ティシャ、もうよいのではなくて?ナオトお兄さまはきぞくではありませんし、そこまで気にすることもないでしょう?」

「それは…そうかもしれませんけど、わたくしたちはきぞくとしてやってきたではありませんか。少しくらい今まで習ってきたことをやってくれないと……」

「ふふっ、ティシャはまじめですわねぇ。ヒナリィは元々あのような感じですし、ナオトお兄さまも今のヒナリィが気に入っているのではなくて?」

「……。……わたくしが気にしすぎなのでしょうか………」

「そういうことにしておきなさいな。みなさま、おはようごさいますわ」

「…おはようございます、みなさま」


 二人でゴニョゴニョ言いながらみんなの所までおいついてきて、朝のごあいさつ。
 今日はいつもよりティシャがおとなしかった…フラウがなにか言ってくれたみたい、やったっ!


「おはよう」
「おはょぅ…」
「おっはよーっ!」
「おはよー!」
「おっす」


 お友だちの五人からもごあいさつが返ってきた。
 トウカとヒミカにー、ロッサ、カティ…あとはウォル。

 トウカとヒミカは姉妹で、ナーくんと同じひょーりゅーしゃのユリカおばさんの子どもなんだー。
 トウカはさすがお姉ちゃんって感じで、わたしから見たらすごく大人っぽいの。
 ちょっとおとなしい一つ下の妹、ヒミカのことをいっつも気にかけて守ってあげてるたのもしい子。
 わたしと同い年とは思えないってよく言われるー。

 ロッサ…ロッサルーミラ・アス・ガイアルドルヴはわたしやティシャ、フラウと同じきぞくの子なんだけど、きょうだいが男の子ばっかりなせいか、ロッサも男の子っぽくて、わたしといっしょによくティシャからおこられてるんだよ、二人ともきぞくらしくちゃんとなさいーって。

 カティはかいたい屋さんの子で、よくお家のお手伝いをしてる。
 一度だけお手伝いしてるところを見せてもらったことがあるんだけど、あっという間にまものをバラバラにしちゃってた…すごかったよーっ。

 そしてこの中でただ一人の男の子、ウォル…ウォルグザノンはやど屋さんの子でカティと同じくお家のお手伝いをミルお姉ちゃんといっしょにやってるの。
 ナーくんやシーお姉ちゃんたちもとまってたんだってー。

 ヒミカ以外はみんな同じ学年でクラスも同じだから、とってもなかよしなのっ!あ、もちろんヒミカもなかよしだよっ!


「なぁなぁヒナリィ、あさって学園休みじゃん?開園記念日でさー」

「そうだねー」

「んじゃさ、ヒナリィんち遊びに行ってもいいか?」

 全員そろって歩き出しながら、ロッサがわたしの家に遊びに来たいって言い出した。
 そういえばナーくんやお姉ちゃんたちといっしょに住むようになってから、だれも遊びに来たことはなかったなー。

「んー…いいと思うけど……。ティシャぁ、いいよねー?」

「わたくしたちだけでは決められないでしょう?お姉さまがたに聞いてみないと」

 うーん…そうかなぁ?お姉ちゃんたちがダメって言うのがそうぞうできないよー。
 リズお姉ちゃんとかミオお姉ちゃんなんかはよろこんでいいよーって言ってくれそうなんだけどなぁ。

「ねーねーヒナリィーっ、わたしも行っていいー?」

「カティも?」

「うんー」

 カティも来たいってことは…もうみんなよんじゃってもいいよねー。
 うん、それじゃみんなでいっしょに遊んじゃおうっ!

「わかったー。それじゃ今日帰ったらお姉ちゃんたちに聞いてみるよっ」

「やりぃ!んじゃよろしくなっヒナリィ!」

「そうそう、カティ」

「なにー?」

「ナオトお兄さまやシータお姉さまたちはいませんからね」

「えー…そうなんだー……。ナオトおにーちゃんにー会いたかったなぁー……」
 
「カティ、にーちゃんは冒険者なんだからしょーがねーだろ」

「うんー、わかってるけどー…会いたかったんだもん……」

 ナーくんたちは今エルフの国にいるんだよね。
 エマお姉ちゃんが教えてくれたんだけど、会いに行ったゆうしゃの人たちととっくんしてるんだって。
 ヒロシお兄ちゃんたちもいっしょにいるみたい。


「ナオト兄さん…わたしも会ってみたかったです」
「ゎたしもぉ、ぁぃたかったぁ…」
「オレっちもだな。ま、しかたねーかっ」


 みんなナーくんに会いたかったみたい…わたしもだけど、ナーくんのおしごとのじゃまはしちゃいけないからね。
 でもどうしても会いたくなったら…ナーくんがよんでもいいって言ってくれたのっ。
 だからそこまでさみしくはないんだよーっ、それにやさしいお姉ちゃんたちがいっぱいいるしねっ!

「ヒミカとトウカ、それにロッサはナオトお兄さまとお会いしたことがないのでしたわね」


「そうです。なので会ってみたかったな、と」
「ぉ母さんから、ぉにぃちゃんのことは聞ぃたょぉ」


「オレっちはスペ兄から聞いたぜー。スペ兄はディル兄から聞いたみたいだけどな。なんか剣もらったってじまんされたんだってよ」

 トウカとヒミカはユリカおばさんから聞いてたんだ。
 あれかな?なんかファルお姉ちゃんとウェナお姉ちゃんといっしょに危ないところをナーくんが助けたって言ってたから、その時にでも聞いたのかな?
 ロッサは二番目のお兄ちゃん、スペリアルヴリッグ…スペお兄ちゃんから聞いたみたい。
 スペお兄ちゃんとティシャのお兄ちゃんのディルフィングス…ディルお兄ちゃんはなかよしだからねー、二人でいつも剣で遊んでるし。


「あぁ…ディル兄さまがナオトお兄さまに勝負をいどんだ時ですね…」

「わたくしの家にごしょうたいした時ですわね」

「あの時はすごかったねーっ。ナーくんもヒロシお兄ちゃんもブリュナお兄ちゃんもカッコよかったよねっ!」

「そうですね…とてもすてきでした……♡」

 なんだろ…なんかティシャが顔赤くしてモジモジクネクネしだしたんだけど…。

「ティシャ…あなた別ななにかを思い出してませんこと…?」

「んんー?……あーっ、そっちかぁ。あの時が初めてだったもんねー」

「っ!?いっ、いえ!そ、そんなことはありませんよっ!?」

 ちがうって言ってるけどウソだってわかっちゃう。
 カッコよかったって言ってまっさきにナーくんの背中を思い出すのはどうなんでしょうねー…ティシャってばいつもはお上品にーとか言ってるくせに、そういうところはお上品じゃないんじゃないのー?

「おっ?なんだよっ、ティシャがそんなにあわててるトコなんて見たことねーぞ?」


「…これは気になりますね……」
「ぅんぅん…」


「…?ティシャー、ナオトおにーちゃんとなにがあったのー?」

「なな、なにもありませんよっ!?」

 なんにもないわけがないんだけど、べつにそこまであわてるようなことじゃないよねー。
 あれから何回もしちゃってるし…ナーくんの背中ながすと、気持ちよさそうにしてくれるのがうれしいんだもんねっ。

「こんなところで話すようなことじゃないんだろ。遊びに行った時ゆっくり聞けよ。ところで…それ、おれも行っていいのか…?」

「?ウォルは来たくないのー?」

「いや、行きたいけど男おれ一人だし…」

「お友だちなんだからそんなのかんけいないよねー?」

「そ、そうですね。お気になるようでしたらディル兄さまもお呼びいたしましょうか?」

「おー、ディル兄呼ぶならスペ兄も来るぜ、きっと」

「あ、いや、別にそこまでしなくてもいいけどさ…。みんなが気にならないんだったらそれでいいよ」

「ウォルは変なところを気にしますのね。いつもいっしょなのですからおわかりになるでしょう?ここにいるだれもが男の子だからなどといってさけたりいやがったりしていないということを」


「「うんうんー」」
「「「(コクっ」」」
「そうだぜー」


「…わかったよ。じゃあおれも行くことにする。ありがとな」

「うんっ、それじゃあ今日帰ったらすぐ聞いてみるねーっ」

 もうすぐ学園に着くってところでちょうどお話がまとまったよ、うんうんっ。
 これから今日のお勉強が始まるのに、もう帰ってお姉ちゃんたちに聞きたくなっちゃった。
 あさってが楽しみだよーっ!



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