突き飛ばされて異世界転生したら勇者になってくれと言われたんだが

浜 タカシ

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World1 突き飛ばされて異世界転生したら勇者になってくれと言われたんだが

13話

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「タカヒコ、今回のクラウド村の一件、どう考える」
「どうって言われても、俺本当に正真正銘の駆け出し勇者だから、何にも分からないですよ」(あと、この世界に来てまだ2日目だとは口が裂けても言えないしな…)
「そんなのどうでもいい、タカヒコの率直な意見を聞かせてくれればいいんだよ」
「俺の意見…」

俺は、胸に引っかかっているものがある。サトルから、クラウド村の話を聞いている、いや、サトルの痛々しい様子を見た時からずっと。
俺は、クラウド村を襲った、奴と呼ばれる存在の事を知っている、そんな気がしてならないのだ。
光魔法の使い手で、人を八つ裂きにするようすはまるで【悪魔】そんな奴の事を。

「悪魔、みたいだなってのは思いますけど」
「悪魔か…、面白い表現だが、確かにそうだな。魔法で、畑や家を焼き、水を枯れさせ、人々を死に追いやる…、悪魔というほかないな」
「…」

そうだった、俺はこのフォレスト村に来た時から、ずっとあの光景から目を背けてきた。
自分が一度、その光景を目にしているから。考えないようにしていたのだった…。
俺はフォレスト村が、無残な姿になる様子を一度見ている。そう、あの時…。

「奴はきっと、この世界の全てを魔法によって破壊するつもりなんじゃないでしょうか」
「…!ど、どうしてそう思うんだ、タカヒコ」
「…。ごめんなさい、詳しくは話せないんですが…」
「そうか…、でもそれが事実だとしたら、このフォレスト村もいつか…」
「…」

いつか、きっと襲われるだろう、いや、確実に襲われる、奴に。

「タカヒコ、これは私からの個人的なお願いだ」
「はい?」
「クラウド村に行って、被害の状況を確認してきてはくれないだろうか。もしかすると、奴につながる手掛かりが何かあるかもしれないからな」
「…そうですね」

俺は思った、きっとクラウド村はもう無事ではないかもしれないと。
そう思うと、俺には二つの感情が芽生えた。恐怖と怒り、奴に対してのこの二つの感情は自分の中でぐるぐると渦巻いている。そして、一つになる。

「分かりました、サトルと一緒にクラウド村に行ってきます」
「…!ありがとう、タカヒコ。すぐに準備に取り掛かってくれ」
「はい」
「そうだ、このことは…」
「アスカには内緒ですよね」
「そのとおりだ、よろしく頼むよ」

―――――

「勇者様、本当にありがとうございます」
「いや、お礼は何かをしてからにしてくれよ。まだ俺何にもしてないし」
「その時は改めてお礼を、さぁさぁ、日が暮れる前に村へ向かいましょう」

俺は、屋敷の方を向き直った。お父さんとお母さんが見送りに出てくれている。アスカの姿は…、見当たらないかぁ。

「それじゃあタカヒコ、頼んだぞ」
「そうだ、アスカの事…」
「あぁ、心配するな。娘の事は、私たちが何とかなだめておくから、タカヒコは、クラウド村の事を頼んだぞ」
「おねがいします。じゃあ、行ってきます」
「気をつけて」
「それでは、勇者様、行きましょうか」

アスカには申し訳ないが、仕方のない事だから。何が起こるか分からない危険な場所にアスカを連れて行く、そんなことは俺にはできないから…。自分の中の罪悪感をどこかに押し流そうと、俺は自分にそう言い聞かせた。
そう、自分をなだめながら、アスカと歩いた林道を、逆へと辿っていく。

「なぁサトル」
「どうしましたか、勇者様?」
「なぁ、その『勇者様』ってのだけど」
「…!すみません、ご不快でしたか?」
「いや、不快っていうかなんか、今までそんな風に呼ばれてこなかったから、こう、背中がむず痒いっていうか…。だから、俺を呼ぶときはタカヒコって呼んでくれ」
「…、ちょっと無理かもです」
「…?どうしてだ?簡単な話だろ」
「いえ、私には恐れ多いことで…」
「ますます分からん。説明してくれよ」
「勇者様に向かって、お名前をそれも呼び捨てで呼ぶなんてどれだけ恐れ多い事か…、だから私、いや、この世界の者はきっと誰も軽々しくお名前を呼ばしていただくことなんてできないとおもいますよ」

あれ?アスカ、いや、アスカの家族は俺の事速攻で「タカヒコ」とか「タカヒコさん」とか呼んでたような気がずるけどな…?

「あぁ、もう!じゃあ、分かったよ。タカヒコさんでどうだ?」
「…!分かりました。…………タカヒコさん!」
「出来るじゃんかよ。じゃあ、改めてよろしくな、サトル」
「はい!ゆう、タカヒコさん」

まぁ、慣れるまでにはもう少し時間がかかるかもな。
俺は視線を、木々に向ける。昨日アスカとここを通った時は昼過ぎで木漏れ日が気持ちよかったが、朝の森も涼しくて気持ちいがいい。

「なぁサトル」
「はい、勇者様…、タカヒコさん」
「…。やっぱりまだ呼び方には慣れないか。なんでこの世界の人は勇者をそんなに崇めるんだ?」
「ある言い伝えがあるんです」
「言い伝え?」
「はい。この世界に、危険が迫った時、勇者様がどこからか現れ、私たちの窮地を救ってくださるという、そんな言い伝えです」
「どこからともなくって…。この世界には勇者っていう仕事があるんだから、勇者は相当数いるんじゃないのか?」
「いやいや!そんなことはないです。この世界に存在する8つの種族、それはご存知ですか?」
「あぁ、良く知ってるぞ」
「その8つの種族の血を受け継ぐ者には絶対に勇者という職業は出現しません」
「じゃあ誰が勇者になるんだよ?この世界には8つしか種族無いのに」
「…?それはタカヒコさんが一番ご存知ではないですか?なんたって、あなたは勇者様なんですから」
「そうか…」
「というわけでこの世界にいる勇者様はタカヒコさん含め3人程度だと思いますよ」
「いつか会えるかな、他の勇者たちに」
「きっと会えますよ」

サトルから聞いた話を総合して、俺は一つの仮説を立ててみた。
この世界に生まれたものには勇者という職業は出現しない。という事は、別の世界で生まれ
この世界に来たもの、例えば俺だが、が勇者という職業を享受することになる。
これは、つまり、勇者という職業は、転生者のみなりえる職業ということ、だから、この世界には俺と同じような勇者、つまり、転生者が存在しているという事になる。
俺は俄然、彼らに会ってみたい、そう強く思うようになった
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