突き飛ばされて異世界転生したら勇者になってくれと言われたんだが

浜 タカシ

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World1 突き飛ばされて異世界転生したら勇者になってくれと言われたんだが

20話

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「出来ました!」

アスカの元気な声が閉ざされた扉の奥から聞こえてきた。俺に盗まれるとかなんとかで、かれこれ4時間自室に籠って、ずっとポーションを作っていたアスカは、やっとそれを作り終えたらしい。

「アスカ、入ってもいいか」
「タ、タカヒコ!だ、ダメです。何をどうしてポーション製作を習得するか分かりません」
「そ、そうか…」

相当警戒されているぽいな
俺は4時間暇であったため、久しぶりに料理を作ってみることにした。
前世では自宅警備員を全うした俺はそのほとんどの食事をカップラーメンで過ごした。だからかなり腕は鈍っていたが、小さいころから母の手伝いをしていたせいだろうか、簡単なものだが4時間という長い時間の間で作り終えられた。

ガチャ「いやぁー、大変でした。久しぶりのポーション製作で私はもうクタクタです」
「お疲れだったなアスカ。どうだ、少し晩御飯を作ってみたんだが食べないか?」
「す、すごいですね。ずっとキッチンで何かしているなとは思っていましたがこれでしたか」
「とは言っても、簡単なものばかりだけどな」
「いえいえ、十分すごいものです。それではいただきましょうか」
「そうだな、いただきます」
「いただきます」

こうして、俺とアスカは冒険前最後のゆっくりした時間を過ごした。

―――――――

「それでは、そろそろロック村ともお別れですね」
「あぁ、そうだな。思ったより長い間いたような気もする」
「と言っても1週間でしたけどね。出発する前にロック村の村長さんにご挨拶をしておかないと。この家を用意してくださったのも村長さんですから」
「そうだな」

俺とアスカはお世話になった家に礼を言い、村長宅へと向かった。

「ロック村の村長さんはどんな人なんだ?」
「一言で言えば頑固な方ですかね。でも、お話してみるととてもいい人です。父やフォレスト村ともセメントなどの建材で交流があるんですよ」
「そうなのか。って、あれか、村長の家って」
「そうですよ。いやぁーいつ見ても大きいですよね」

ロック村の村長の家は一言で言えばコンクリートの大樹だった。前世ではこれをビルと呼んでいたな。

コンコン「ロック村長、アスカ・フォレストです。出発いたしますのでご挨拶に伺いました」
「どうぞお上がりなさい」
「ちょっと待てアスカ、今どこに向かって話してたんだ?」
「どこって、建物ですが?」
「やっぱりこの世界は時々分からないな」

流石にエレベーターは無いらしく、階段をひたすら上がると、やがて大広間に出た。

「タカヒコ、あの方がロック村のロック村長ですよ」
「なぁ、アスカ。フォレスト村と言いロック村と言い村長の苗字は村の名前と一緒なのか?」
「しいて言えば、その村の村民皆が同じ苗字ですよ」
「そうなのか…。ややこしいな」
「みんな下の名前で呼び合いしますから、そんなことはないですけどね」
「アスカさん、勇者タカヒコ。よくぞおいでいただいた」
「本日ロック村を立つこととしました。家の手配から、生活の支援など何から何まで大変お世話になりました」
「いえいえ、フォレスト村にはいつも新鮮で質の良い作物を売っていただいている。その村の村長の娘さんに少しでも恩返しするのは当然のことです」
「恐縮です」
「勇者タカヒコ」
「は、はい」
「折り入ってご相談が」
「へっ?」
「タ、タカヒコ。しっかりしてください。申し訳ありません、こういった場になれていない物ですので、どうぞ大目に」
「構いませんよ。さて、勇者タカヒコ、話をさせていただいても」
「は、はい。お願いします」
「そうですか。それでは」

―――――――――
実は先日から、魔王軍の幹部と思われるものを筆頭にこの村の周辺で魔王軍の偵察部隊がわが村を偵察しているという噂があります。
今のところ村民に被害は起きていませんが、どうも嫌な予感がする。
やはり昔のことがありますからね。
ん?勇者様は昔のことをご存知ではない。それは失礼。

昔、私たちロック族を含めた8種族は今のような友好的な関係を築いていました。これは今も昔も変わらず、大変喜ばしい事です。
ただ、ある日を境にこの平和な世界が一変してしまった。
勇者様は「英雄伝聞歴伝」という歴史書をご存知ですか。そうですか、ご存知ですか。
その一節にもあるように、ある日この世界に魔王が降臨しました。

最初魔王は非常に弱いもので、我々でも十分に倒せるものでした。我々は人類の脅威になる前に魔王を討伐しようという事で、8種族連合で魔王討伐部隊が組織されることとなったのですが、これが間違えてあったと今であれば言う事ができます。

魔王には部下がおり、それぞれこの世界に存在する9つの魔法の使い手です。魔王だけなら弱く打ち取るのも簡単だったのですが、その部下、私たちは魔王軍と呼んでいますが、魔王軍が立ちふさがったことで状況は一変します。
魔王はスキル「エフォーター」を持っていたのです。これは見た魔法を即刻習得し、使用できる、魔法に限らず、スキル、ポーション精製技術、言語などあらゆるものを一度体験してしまうと我がものと出来るそんなスキルです。

魔王のこのスキルのおかげで、弱かった魔王はあっという間に我々の脅威となり果てました。我々が先制攻撃を仕掛けたことに激怒した魔王は魔王軍を引き連れ、我々への無差別攻撃を開始。多大な被害を出しました。

以上が昔のことです。これがあるから魔王軍がうろついていると私はどうも生きた心地がしない。そこで勇者様にお願いです。どうか魔王軍の動きを封じていただけませんか。
―――――――――

「どうしてそれを俺に?」
「もし私たちロック族が軍隊を編成して、これの討伐に向かえば、ロック族から魔王軍への宣戦布告となり、戦争へと発展しかねません」
「つ、つまり、ロック村長のいう事を私が正しく解釈しておけば、異世界の者であり、どこの族の物でもないタカヒコが討伐に行けば、万が一失敗した時でも魔王軍から報復される心配はない、そういうことですか?」
「…、いかにも」
「そんなのだめ「アスカ、少し黙ってろ」
「はっ、はい…」
「ロック村長、私は先日奴とスカイ族の間で呼ばれている光魔法の使い手に大敗を期しました。そんな私が魔王軍の討伐などできるのでしょうか」
「侮ることなかれ。あなた、エフォーターのスキルをお持ちでしょう」
「…!アスカ、お前しゃべったのか?」
「いえ、タカヒコのスキルのことについてはこの村では誰にも」
「ほっほっほ。だから侮ることなかれと言ったではないですか。そのくらい見ればわかる。貴方のスキルの持つ力は先ほどお話しした通りです。必ずこの依頼、貴方の成長の糧になると思いますが。弱いなら強くなるしかないのです」

確かにロック村長のいう事はもっともだ。弱いなら強くならなけらばいけない。いつまでも逃げていては奴に勝つどころか何も成し遂げられず、俺を死なせてまで転生させたアスカの気持ちに反することになる。

「わ、分かりました。その依頼引き受けましょう」
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