長田浜高校ミステリー同好会の事件日誌

浜 タカシ

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File9/Page1 マイクどこ行った?

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「なかなか楽しい謎でした。ねっ、戸田さん」
「あぁ、そうだな」

ESS部からの挑戦状を華麗に解いた鹿野は、かなりご満悦の様子で、俺の隣を歩いている。

「戸田さん」
「ん?」
「あの方は何をしているのでしょうか?」

鹿野がそう言い、目線を向ける先には、何かを必死に探している…、マイクの姿があった。
まぁ、マイクの被り物をした、きっと放送部員だろう。

「何かを必死に探しているみたいだな」
「少し話を聞いてみますか?もしかしたら、大切な物が無くなってしまったのかもしれません」
「ちょ、鹿野。あまり面倒事には…」

まぁ、言ったところで無駄だった。鹿野は軽やかな足取りで、放送部員の所へ駆け寄り、話を聞き始めた。

「あの、何か探しているんですか」
「えっ?」
「あっ、すみません。何かを必死に探しているように見えたので」
「もしかして…、ミステリー同好会の人?」
「えぇ、まぁ、そうですけど」
「お願いします。私たちのマイクを取り戻してください!」
「えっ?」

なんか、急展開だな。流石にいつものほほんとしている黒髪探偵帽(これを見たらだいたいがミステリー同好会の部員か、ただのコスプレかそのどちらかだと思うだろう)もキョトンとしている。

――――――――――――――――

廊下での立ち話はなんだと、放送部員は俺たちを放送室へと招き入れてくれた。
放送室にはラジオの生放送でもできるんじゃないかと思うくらいの立派なスタジオ、その横には音響機器に、小さな控室までもある立派なものだった。

「さっきは突然すみませんでした。私は、放送部の阿東水樹と言います」
「私はミステリー同好会の鹿野琴です。そしてこちらが」
「…」
「ほら、戸田さんも自己紹介を」
「同じく戸田博人です」
「早速なのですが、一体何があったんですか?」
「はい。まずはこれを見てください」

そう言うと阿東さんは、一枚の紙を取り出し、机の上に置いた。


「これは?」
「実は、文化祭期間中の生放送で使う予定だった、マイクが朝から見当たらなかったんです。そこで部員総出で部室を探してみると、この紙が見つかったんです」
「これは…、犯行声明でしょうか」
「あぁ、だと思う」

あと6、つまりあと6つの物が盗まれる、そういう事であろうか。
なかなか度胸のある犯人みたいだな。

―――――――――――――――――

「帰ったぞ」
「ただいま戻りました」

宣伝を終え、俺と鹿野は部室へと戻ってきた。塑網の束は…、出た時から減ってないな。

「あぁ、お帰り二人とも」
「おかえり、どうだった琴ちゃん」
「宣伝もしっかりできましたし、謎も解けたのでとっても充実したものになりました!」
「あの短い間に謎に遭遇したのかい?」
「まぁ、ちょっとな…」
「そうでした、ミステリー同好会への挑戦ですよ」
「挑戦?どういうことだい」
「これを見てください」

鹿野は紙を取り出し机に置く。俺は一度それを見ているので、鹿野が何を言おうとしているのかはわかる。

「琴ちゃん、これは?」
「放送部からマイクが無くなっていて、マイクを探している途中でそれが見つかったそうです」
「なるほど…。犯人はかなりの計画犯みたいだね」

駿之介は、こんな犯行声明、あと何回犯行におよぶか、それをご丁寧に明示している犯人を計画犯の評した。俺も、少なからずそう思っていたので、特に反論することはない。

「ねぇ、これなんだろ」
「私も気になっていました。丸が4つ、何かの暗号なんでしょうか」
「犯人の名前という可能性もあるね丸四とか。どうおもう、博人」
「まぁ、丸四はないとして、正直分からん」
「でも、犯行声明に書いてあるって事は、落書きとかじゃないのよね」
「真由美の言う通り、きっと何か意味があると思うよ」
「でも、犯人は一体何が目的なんでしょうか」
「うーん…」
「まぁ、落ち着け。犯人の動機を考える前に、あと6回も起きるとされる犯行を食い止めたほうがいいんじゃないか」
「確かに。ねぇ、駿ちゃんパンフレット持ってなかった?」
「あぁ、これかい?」

駿之介がパンフレットを置くと、みんなで覗き込むようにして見入った。

「うわっ、参加団体こんなにいるの」
「この中からあと6団体のターゲットを絞り込むのは無理があるね」
「そうだな」

狙われる可能性のある団体はクラスも含め21団体。これから6団体に絞り込むのは今の状況では不可能に近かった。

「とりあえず、校内を周りながら、宣伝して、そのついでに残りの団体の様子を見る。どうかな、これで」
「まぁ、いいんじゃないか」
「ということで鹿野さん、博人、いってらっしゃい」
「おい、さっき俺たち行ったらだろ。次は駿之介・小郡ペアじゃないのか」
「これはミステリー同好会への挑戦だよ。やっぱりミステリー同好会随一の名探偵が自ら解決しないと」
「なんか、昨日もそれ聞いたぞ」
「もうつべこべ言わずに行く!琴ちゃんごめんね。お願いできるかな?」
「もちろんです。さぁ、戸田さん、行きますよ」
「ちょ、だから引っ張るなって」

―――――――――――

「アカペラ部公演、まもなく開催です」
「戸田さん、アカペラ部の公演がもうすぐみたいですよ。見て行きましょうよ」
「えっ…」
「いいじゃないですか、まだ時間はたっぷりありますし」
「はぁ…。分かった」

鹿野に押され、俺はあまり気乗りないがアカペラ部の公演を聞くことになった。
席に着くと、ちょうど会場が暗くなった。

「本日はご来場誠にありがとうございます。それではアカペラ部員による演奏をどうぞお聞きください」
「楽しみですね」
「あぁ」

司会の挨拶が終わると、アカペラ部員が入場してきて、ステージに立つ。楽譜台にある楽譜を開き構える者がいると思いきや、その横でもたついている部員がいる。

「どうしたんだ」
「いや、それが楽譜が無くて」
「楽譜がない?おい、ちゃんと確認したのか?」
「公演前には確かにありました。あれぇ…おかしいな」
「みなさま、申し訳ありません。もう少しお待ちください」

司会が機転を利かせアナウンスを入れる。スポットライトも消され、一度会場に照明が戻る。

「戸田さん、これってもしかして」

隣に座っていた鹿野が俺を覗き込むようにして聞いてきた。いや、だから近いって!

「そ、そうだな…」

気を取り直して、もしかするとこれは犯行が起こった可能性があるかもしれない。

「戸田さん、あの犯行声明を探しましょう」
「そうだな」

俺と鹿野は立ち上がり、ステージへと向かう。

「あのー」
「あっ、すみません。もう少々お待ちください」
「いえ、少しよろしいですか」
「…?はい」

俺と鹿野は司会者に放送部でのマイク紛失事件と犯行声明、そしてあと6つの団体が犯行の対象になっていることを伝えた。

「それは本当ですか」
「はい。なので、犯行声明を探さしてほしいんですが」
「わ、分かりました。ですが、部員も楽譜を探してますので、その邪魔だけは」
「はい、しません」

早速ステージ上を中心に探す。俺はもう一台の楽譜台に乗せられた楽譜をパラパラとめくってみる。すると、一枚の紙がページをすり抜け、床へと落ちた。
それに気が付いた鹿野がさっそくそれを拾い上げ確認する。

「戸田さんこれって」
「あぁ、犯行声明だな」


紙には、楽譜を盗んだという趣旨と、放送部の犯行声明の数字が1つ減り、あと5という数字が、この犯行がまだ続くことを暗示している。

「司会さん、やっぱり犯行声明がありました」
「えっ、それは本当ですか」
「はい。これを見てください」

鹿野は自身が手に持っていた犯行声明の書かれた紙を見せながら、事細かに説明する。

「そんな…」

犯人の目的は、一体何なんだろうか。そして、あと5、どの団体が狙われるのだろうか
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