長田浜高校ミステリー同好会の事件日誌

浜 タカシ

文字の大きさ
13 / 19

File8 ESS部からの挑戦状

しおりを挟む
文化祭、文化の祭りと書いて、文化祭。
皆さんがウキウキしていて、私も自然とワクワクしてくる、そんな楽しい文化祭。
きっと、いつもはひっそりと陰に隠れている謎も、この楽しそうな空気を羨ましがって、ひょこっと顔を覗かせるかもしれませんね。

さぁ、謎に溢れた文化祭の始まりです!

――――――――――――――

長田浜高校文化祭、通称長高祭は、毎年9月下旬に2日開催される、長田浜高校の一大行事である。

その内容は幅広く、各文化部の作品展示や演奏発表にはじまり、各クラスの模擬店や企画、運動部も少しではあるが、野球ボールで的当てビンゴをやってみたり、サッカーボールでキックボーリングをしてみたりと、企画を用意しているみたいだ。

「おはようございます、戸田さん」
「おはよ」
「いよいよ文化祭ですね」
「あぁ、あんまり嬉しくないがな」
「ふふっ、戸田さんらしいですね」

鹿野とたわいない会話をしながら部室へ行くと、すでに駿之介と小郡が登校していた。

「あっ、琴ちゃんおはよ」
「おはようございます、真由美ちゃん、熊毛さん」
「おはよう。いよいよだね文化祭」
「はい!部誌、たくさん売れるといいですね」
「そうだね、頑張って売り切ろう!」
「おっ!」

俺たちミステリー同好会は、文化祭に向け、部誌である塑網のタイトルの謎、それに込められた意味を解き明かし、それを特集とした。売れるかどうかは分からないが、まぁ、頑張ってみるしかいないだろうな。

「ねぇ、琴ちゃん。今駿ちゃんと話し合ってたんだけど、塑網の宣伝をしたらどうかって」
「宣伝ですか?」
「あぁ、全部売り切るのはもちろんだけど、たくさんの人たちに部誌を読んでもらうためにも宣伝は大切だと思うんだ。ねっ、博人」
「確かにな」

こいつら、朝早くから登校して何を話していたのかと思ったが、これか。
本当にみんな部活が大好きなんだな。別に俺は普通だけど。

「いいですね、どうやって宣伝しますか?」
「やっぱり校内を歩き回って、宣伝するのが一番いいと思うんだ。他の展示も見れて、なおかつ宣伝もできる。一石二鳥だよ!」
「お前の主な目的は後者とみた。どうだ、図星だろう?」
ギクッ「な、なんのことかなぁ…。とっ、とにかく、二手に分かれて行こうよ」
「分かりました。じゃあ私は戸田さんと」
「いや、なんでだよ。普通ここは、男と女に分かれるだろ」
「駄目よ、男ばかりじゃあ暑苦しくて見てられないもの。ねっ、琴ちゃん」
「へぇ⁈いや、あの、その…、とっ、とにかく、戸田さん行きましょう!」
「ちょ、だからいつもいつも引っ張るなって」
「いってらっしゃい」

―――――――――――――

毎度のごとく、鹿野に引き連れられ、俺は校内を歩き回って、塑網の宣伝をすることになった。

はぁ、また面倒くさい事に巻き込まれた気がする。

「部室棟1階、ミステリー同好会室にて、部誌、塑網を販売中です。ぜひ、お願いします」
「します」
「もぅ、戸田さん、ちゃんと宣伝してください」
「してるだろ」
「してないですよ。なんですか『します』って」
「お願いしますの略だが」
「略せてません‼」
「そこのバカップルさん」
「なっ、俺たちは別に付き合ってないぞ」
「…」
「おい、鹿野。お前も何か言え」
「あっ、そうです、私たちはただ部活が同じだけで」
「ふぅーん。君たち何部?」
「ミステリー同好会ですけど…」
「ミステリー同好会の人!君たちなぞ解き好きだったりする?」
「いや、俺はべ「大好きです!」はぁ…」
「それは良かった。僕は、ESS部なんだけど、今回アメリカと日本の文化の違いをみんなに楽しく知ってもらおうと思って、なぞ解き風に企画展示したんだ。是非見て行ってよ」
「謎ですか!それは是非解きたいものです。ねっ、戸田さん」
「あっ、あぁ…」

おい、ESS部。この黒髪探偵帽に謎は劇薬なんだぞ!どうしてくれるんだ…。

「それじゃあ早速中へどうぞ」

聞いてるのかESS部。俺は英語なんぞ嫌いだ。

―――――――――――――――

「しっかりした展示ですね」
「そうだろ?例年に類を見ないくらいの規模なんだ」

ESS部の展示を見て回る事10分弱。写真を交えてのアメリカと日本の文化の違いについての展示は、あまり興味がない俺が見ても、なかなかしっかりした物で、見る者を引き付ける何かがあった。

「ところで、まだ謎を見ていないんですが…」
「あぁ、次の展示がなぞ解きになっているんだ」

次のブースには、少しばかり人だかりができていてる。みんな謎に苦戦しているのだろうか。

「人が多いね。見えるかな、あれが問題なんだけど」

「どうにか見る事ができます。あれは、日本とアメリカの国旗ですか?」
「あぁ、そうだよ。あの問題を解くと文が答えとして出てくるから、その文に答えてくれれば、クリア。どうだい、面白そうだろ?」
「暗号か」
「解けたら教えてくれ。合ってるか確認するから」
「分かりました。それでは」

ESS部員の後ろ姿を見送ると、鹿野は早速暗号と睨めっこを始めた。
俺もその後ろから暗号を軽く眺めてみる。あぁ、なんだ、簡単じゃないか。

「この上の文章はヒントなのでしょうか。下の数字の列も何かを表しているとは思うんですが…」

数分後、鹿野は例のごとく何も閃いていなかった。
さっさと部室に戻りたい俺は、少しばかり助言を与えることにした。

「なぁ、鹿野。今何が分かってる?」
「えっとですね、…、このアメリカの国旗星が足りないなと」

つまり、何も分かっていないと…。忘れていた、この鹿野 琴の壊滅的な推理力を。
俺は、もう期待しないことにして、答えを言おうと決めた。
別に言ってもいいよね。

「なぁ、鹿野。これはな「戸田さん、もしかして答え言おうとしてますか」おっ、おう」
「もし、手助けして下さろうとしているのであれば、答えではなく、ヒントをください」

初めて見た、鹿野のムキになっている顔。別に怖くはないが、どうしたのだろうか、いつもならすぐに答えを求めてくるのに、珍しいこともあるものだ。

「分かった。じゃあ、この展示のテーマを思い出してみろ」
「テーマですか?確か、アメリカとにほんの文化の違いだったと思いますけど」
「あぁ、じゃあ身近なものであり、アメリカと日本で違うもの。なんだと思う?」
「うぅーん。飲み物や食べ物のサイズですか?」
「ふっ。あぁ、悪い。ばか…、頭悪いなぁと思って笑っちまった」
「戸田さん、ひどくないですか⁉︎」
「まぁ、気を取り直して、違うものかつ、この問題のヒントとなり得るものだ。さっき鹿野が言った食べ物のサイズは、どう思う、この問題のヒントになりそうか?」
「…。いいえ、無理だと思います」
「だろ、だったら他の物を思い浮かべてみないといけないな」
「この問題のヒントとなり得て、尚且つ違う物…」

やっぱり鹿野には無理か。さぁ、とっとと答えを言って部活に戻ろう。

「戸田さん」
「どうした?答えを教えてほしいのか?」
「いえ、もしかして、車とか関係ありますか」
「…‼︎ちょっ、ちょっと待て鹿野。お前もしかして分かったのか?」
「多分ですけど、自動車が日本は左側通行なのに対して、アメリカは右側通行、だから、上の意味の分からない文を日本の国旗の時は左から、アメリカの国旗の時は右から数字の分だけ読めばいいと思ったのですが…」
「ふっ」

呆れた、俺は鹿野の答えを聞いて心から呆れた。

「あぁ、正解だぞ、鹿野」

鹿野がお馬鹿な、謎解きもできないへっぽこだと見下していた俺に、俺は呆れた。
鹿野は、確かにあまり謎解きが得意なのでは無いのだろう。
でも、謎解きが全くできないわけではない。時間をかけて、ゆっくり考えれば、解ける謎だってあるのだ。

俺は、鹿野の謎解きの機会を、鹿野が見つけた謎、鹿野に解かれたいと願って、見つけてもらった謎を俺は自分の為だけに、鹿野達のためではなく、自分のために解いていたのだ。

「えっと、『きょうのおひるごはんはなんだ』ですかね」
「正解だ、鹿野。よくやったな」

――――――――――

「正解は、お弁当です!」
「なるほど…。正解だよ、流石ミステリー同好会、自信作だったのになぁ」
「でも、しっかりと考えられていて、みんながアメリカの文化に興味を持てる、そんな謎だったと思います。私もこんな楽しい謎を解けて幸せです」
「そうかい、そう言ってもらえて嬉しいよ」
「戸田さん、お力添えありがとうございました」
「どうだ、自分で見つけた謎を解けた感想は」
「そうですね…。ただただ楽しかったです!」
「そうか」

俺も、気がつけて、良かったよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...