長田浜高校ミステリー同好会の事件日誌

浜 タカシ

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File7 減る階段

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夏休みも明け、暑い夏も終わろうとしている。
長田浜高校では、体育祭や運動会と言った類の行事はなく、その代わりに文化祭が毎年盛大に執り行われる。
生徒は皆、1年に1度の行事を心待ちにしていて、早くも校内はお祭りムードである。

「いやぁ、さすが長高祭。始まる前から盛り上がってるね」
「文化祭、明日からだろ?なんでこんなに盛り上がるのか理解できん」
「流石、博人。こういうお祭りの空気にも流されない心をもちわせているなんてあっぱれだよ」
「そりゃどうも」

文化祭ムード一色の校内を抜け、俺たちは部室へと向かった。

「やっ、鹿野さん、真由美」
「おっーす」
「あっ、二人ともちょうどいいところに来た」
「戸田さん、熊毛さん!ミステリー同好会の天敵、長田浜高校七不思議が発生しました!」
「「長田浜高校七不思議?」」

あぁ、また厄介ごとか。

「鹿野さん、その長田浜高校七不思議って何なんだい?」
「私も詳しくは知らないんですが、今回起きたのは、文化祭の時期だけ一段減る階段だそうです」
「まぁ、よくありそうなタイプの七不思議だな」
「ちょっと、見に行ってみない?」
「そうだね、ぜひ見に行こう!」
「ちょっと待て。今日印刷所から塑網が届く日なんだろ。誰か部室にいないと受け取れないじゃないか。という事で俺は残るぞ」
「駄目です」
「そうだね、今までの事件は博人のおかげで解決できたんだから、名探偵博人が自ら現場に赴かないと、きっと迷宮入りだよ」
「熊毛さんの言う通りです。さぁ、行きましょう」
「でも、塑網が…」
「それなら僕が待っているから3人で行って来なよ」
「はい決まり。じゃあ行くよ、琴ちゃん、戸田」
「駿之介、裏切りやがったな」
「何のことやら」

―――――――――――――――

噂の階段は、部室棟の4階、屋上へと続くものだった。
よくアニメや漫画で、屋上でお昼ご飯を食べてるシーンがあるが、そんなこと現実であるはずもなく、長田浜高校では屋上への立ち入りは禁止されているから、この階段を使う人もいない。

「この階段か」
「そうですね。ここだけ木製の階段なんですね」

屋上へと続く階段は、歴史を感じさせる木製で、屋上への扉はベニヤ板でしっかりと閉ざされていた。

「…15、16、17段っと。ここの階段は全部で17段みたいだね」
「なぁ、この階段はもともと何段なんだ?」
「…、分かりません」
「じゃあ、七不思議が本当に発生したか分からないじゃないか」
「確かに…」

鹿野は、七不思議が発生したと言っていたが、一体誰情報何だろうか。
何はともあれ、比較できないのであれば、真相は謎のままだ。

「貴方たち、そこで何をしているの?」

下の方から声が聞こえる。見てみると、顧問の宇佐先生が俺たちを見上げながら立っていた。

「あっ、宇佐先生。今、活動中なんですよ」
「もしかして、長田浜高校七不思議の事かしら?」
「先生知ってるんですか」
「えぇ、ここの卒業生だからね。私が学生の頃からその都市伝説はあったわよ」
「本当ですか?」
「えぇ、確か、普段は18段ある階段が、文化祭期間中だけ、17段になる。そんなのだったかしら?
「せ、先生。今なんと」
「だから、いつもは18段ある「一段減ってます!」えっ?」


――――――――――――――

「まさか、既に一段減っているとはな」
「そうですね。でも、これで七不思議が実際に起こることが分かりましたし、大収穫ですよ」

部室へ戻ると、駿之介が一人椅子に座って何かを読んでいた。

「戻ったぞ」
「おっ、戻ってきたね。どうだった?」
「確かに1段減っていました。七不思議は本当だったみたいです」
「おぉ、それは収穫があってよかったね」
「ところで駿ちゃんは一人で何読んでたの?」
「あぁ、これかい?長高祭のパンフレットだよ」

駿之介は俺たちにも見えるようにパンフレットを広げ、机の上に置いた。

―――――――――――――――――――
【演目と会場のご案内】
〇体育館・メインステージ〇
・吹奏楽部演奏、演劇部、クイズ研究会、合唱コンクール、各種開閉会式

〇中庭・サブステージ〇
・軽音部、各クラス企画

〇各教室及び中庭〇
・各クラス模擬店、企画

〇各部室〇
・文化部作品展示及び部誌等販売
※販売品目については次のページをご参照ください

―――――――――――――――――――ー
「今さっき見てたのはここ、演目と会場一覧。やっぱり軽音部は押さえときたいね。きっと楽しいよ」
「確かに、みんなでぴょんぴょんして盛り上がるの、楽しそうです」
「そうだね。私も行こうかな」

俺も机の上に置かれたパンフレットを覗き込む。いろいろな企画が用意されてるんだなぁ。

「なぁ、このサブステージってどこに作られるんだ?」
「あれじゃないでしょうか?」

そう言って鹿野が指さした先をみると、体育館との間に木製のステージが組み立っている。

「仮設のステージか。案外しっかりしてるように見えるな」
「確かにね。でもどうやって組み立ててるんだろうね」
「あれは、木箱をたくさん並べて、その上にべニア板を張ってるんだよ。それなら組み立ても撤収も簡単だからね」
「でも、なかなか広いステージだよね。結構しっかりしてるよ」

確かに、かなり広めでしっかりしている。でも、あのくらいの大きさの場所をさっき見たような…。

「あっ」
「…?どうしたんですか戸田さん」
「七不思議、分かったぞ」

―――――――――――

「じゃあ早速聞かせてもらおうかな、一体どうすれば階段が一段減るのか」
「簡単だ。そこに答えがある」

俺は中庭を指しながら、七不思議の答え合わせをする。皆の視線が中庭へと集まるのが何とも面白い。

「中庭、ですか?」
「サブステージだ」
「サブステージ…、まさか、階段の一番最後の段が木箱だと、そう言いたいのかい博人」
「あぁ、サブステージは文化祭の時期だけ仮設で作られるものだ。だったら他の時期はどこかに保管しておく必要があるだろう。最初は備品倉庫にでもしまってあるのかと思ったが、夏休み前に行った時、倉庫にそんなものはなかった。
つまりだ、最後の段は小さな踊り場みたいに、なっていて、他の段よりも広い。つまり、あそこに木箱を敷き詰めて、上にべニア板を載せておけば、他の段と大差ない、消える階段の完成というわけだ」
「ちょっと待って、それなら、一段分床の高さが高くなるから、屋上に出る扉がつっかえて、開かなくなるんじゃないの?」
「よく考えてみろ小郡、さっきあそこの屋上につながる扉はどうなっていた」
「どうなってって…。あっ、ベニヤ板で塞がれてた」
「あぁ、だから誰も行かない上に誰も不便な思いをしない。だから特に気の留めないんじゃないか?」

―――――――――――――

「こんにちは長田浜印刷です」
「あっ、ご苦労様です」
「塑網50部でお間違いないですか」
「はい、お間違いないです。ご苦労様でした」
「またお願いします、失礼します」
「さぁ、みなさん塑網が届きましたよ!」

鹿野が机の上の塑網をにこやかに眺めている。表紙には塑網No.3とあって、81年のNo.2発行以来実に38年ぶりの販売となる。

いよいよ、文化祭が始まる。何も無ければいいけどな…。
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