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File10 犯人を捕まえろ
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「それでは、ただいまより『偽地歴部を捕まえちゃうぞ☆作戦』の作戦会議を始めます」
「お願いします」
「司会はミステリー同好会部長の鹿野です」
「よろしくお願いします、琴ちゃん」
「それでは議題は『どうやって偽地歴部員を捕らえるか』です」
「そうですね。今回はなかなか難しい議題だと思います」
「私も同感です」
「ちょっと待て。なんだこの茶番は」
「もう、博人。今なかなかいいところだったんだよ」
「そうですよ戸田さん」
一夜明け、文化祭2日目。俺たちは少し早めに集合して、偽地歴部員が我がミステリー同好会を最後のターゲットとしている連続窃盗事件について、どう奴を捕まえるか、その作戦会議を開いていた。まぁ、みんな朝早すぎて謎のテンションなんだが。俺はついていけん。
「それでは、気を取り直して。偽地歴部員はどう私たちに勝負を仕掛けてくるでしょうか」
「そもそも、偽地歴部員は今までの6回の犯行、どうやってきたのかしら」
「確かに真由美の言う通り。手口で分かっているのは、必ず犯行声明を置いていくっていう事だけだね」
「そうだな」
「困りました。犯行の手口が分からないのであれば、対策のしようがありません」
それぞれの犯行は、時間がバラバラ、場所もバラバラ、盗まれたものもバラバラであった。
強いて言うなら、最後のアイス研、野球部、福祉部はかなり短時間の間に全ての犯行が行われたことが分かっている。なぜ、偽地歴部員は最後の3つ、そんなにも短い期間に犯行におよんだのだろうか。
「おはようございます。放送部の阿東です」
少し話に行き詰まり、みんなが黙ってしまったその時、ちょうど放送部の阿東さんが我が部室に足を運んでくれた。タイミングばっちりだな。
「おはようございます、阿東さん。お早いんですね」
「えぇ、今日の生放送の準備がありますから。それで、連続窃盗事件、どうなりました?」
「最後のターゲットは我がミステリー同好会のようです」
「ほ、本当ですか⁉それは、緊急特番を組めるくらいのビックニュースですよ」
「ところで、阿東さん。一つ聞きたいことがあるんだが」
「…?なんでしょうか」
「昨日マイクが盗まれた時の状況を詳しく教えてもらいたいんだ」
「昨日…。確か、今日みたいに私たち、昨日も早く登校したんです。生放送の準備がありましたから。それで、いざ準備しようとすると、マイクがない事に気が付き、探している内にあの犯行声明を見つけたという事です」
「つまり、犯行当時部室には誰もいなかったと」
「えぇ、そうですね」
犯人の手口は、誰もいなくなったすきをついて、物を取ることで間違いなさそうだな。
ふと、窓の外を眺める。サブステージでは係が忙しそうに準備に追われている。
その横を、丸刈りの男子生徒が二人、キャッチボールをしながら、歩いている。
あいつら、まだ懲りてないのか。そうだ、あいつらにも話を聞いてみよう。
俺は廊下の窓を開け、少し声を張って、外にいるキャッチボール少年たちに声をかけた。
「おーい。そこの野球部」
「君は確か、ミステリー同好会の。前はお世話になりました」
「ちょっと聞きたいことがあるんだが」
俺がそこまで言うと、二人はキャッチボールを止め、窓の方まで近づいてきてくれた。
「昨日、野球部から物が盗まれる事件あったよな」
「あぁ、確かにあったよ。的開けビンゴ用の野球ボールが盗まれたんだ。おかげで、新しいボールを取りに球場まで走らされたよ」
「それは災難だったな。ところで、盗まれた時、野球部のブースに誰かいたか?」
「あぁ、いたとも」
「いた?それは本当か」
「いたと言っても、本当に人が多くて、結構カオスな状態だったよ。確かにあの状況なら、ボールを持って行かれても気が付かないかもしれないね」
「なるほど。助かった、ありがとう」
「いや、あの時の御恩があるからね。また困ったことがあったら呼んでくれ」
あいつら、やっぱりいい奴らだな。その時、俺の後ろを、文芸部員が気まずそうに通って行ったのが何とも滑稽だった。
部室に戻り、俺は今のやり取りを、みんなと共有する。
「なるほど、つまり、偽地歴部員には怪盗の素質はないという事だね」
「駿之介の言う通りだ。俺に少し考えがある」
「考えですか?」
「聞かせてよ、戸田」
「それには、ちょっとみんなの協力が必要なんだけどな」
――――――――――――――――――――
「それじゃあ作戦通りで。みんないったん退出してくれ」
いよいよ作戦決行。俺はなぜか、指揮官として、全体の調整役となった。
「お邪魔します」
「あっ、あぁ。思う存分使ってくれ」
「お邪魔します、文芸部さん」
俺たちは、ミステリー同好会室横の文芸部室に身を潜め、奴が来るのを待っておくこととした。
『こちら、昇降口。偽地歴部員と思われる者が部室棟へ歩いていくのを確認』
『こちら中庭。こちらからも、偽地歴部員がミステリー同好会室へと歩いているのを確認。あっ、入りました』
みなさんは、飛んで火にいる夏の虫という言葉をご存知であろうか。さぁ、偽地歴部員さん、俺をいや、全校をおちょくった事、後悔させてあげよう。
ピンポンパンポン『マイクテスト、マイクテスト。こちら放送部です。各部活は準備をしてください』
「よし、作戦開始だ」
―――――――――――――――――
ピンポンパンポン『マイクテスト、マイクテスト。こちら放送部です。各部活は準備をしてください』
なんだろう。ミステリー同好会室に難なく侵入できた僕は、急にかかった放送に少し違和感を感じた。
まぁ、そんなことはいい。ミステリー同好会からは、奴らの部誌を根こそぎ奪ってやろう。僕は、持ってきたリュックサックに部誌を詰め、部室を後にする。やり切った、僕はやり切った。
「…‼」
目の前の中庭には、腕を組み、こちらを睨む、野球部員の姿が。なぜ、こいつらがここにいる。僕は、部室棟を元来た方へ引き返そうと走り出した。
「…‼」
元来た方には、サッカー部がネットを張って、仁王立ちで立っていた。くそっ、なぜだ。
僕は、階段を駆け上がる。
「…‼」
階段には、園芸部がスコップを、ESS部が和英辞典を持って立っていた。
なぜだ、なぜ俺の行く先々、みんなが立っているんだ。
「こんにちは、地歴部員さん」
―――――――――――――――
それでは、話は遡る事数時間前。
「それには、ちょっとみんなの協力が必要なんだけどな」
「協力ですか」
俺はミステリー同好会のメンバーに作戦を説明し、協力してもらう部活の部長を呼んできてもらった。
「戸田さん、このメンバーって」
「あぁ、今までに俺たちが謎を解決してきた部活だ」
そう、野球部、文芸部、園芸部、サッカー部、ESS部。4月から今日まで、俺たちミステリー同好会が挑んだ謎にかかわってきた部活だ。
「戸田君と言ったか。それで僕たちにどうしてほしいんだい?」
「皆さんには、犯人が逃走できないように道をふさいで欲しいんです」
作戦はこうだ、空になった部室に奴は必ずやってくる。そこで、俺たちは文芸部室へと身を隠し、各部との調整、そして最後に奴を捕まえる。
野球部には、窓からの逃走を防ぐため、中庭に。サッカー部には本館への逃走を防ぐため渡り廊下に、園芸部とESS部には階段を上がり2階から逃走されるのを防ぐために、階段に立っておいてもらう事とした。これがことのあらましだ。
―――――――――――――――
その後の生徒指導課の聴取で、自分の地歴部は部として認められなかった。それが悔しく、様々な大会で成績を上げている、放送部、囲碁部、野球部、福祉部、アカペラ部を。部員が5名以下なのに活動できている、同好会つまり、アイス研とミステリー同好会をターゲットとして選んだという事だった。
何はともあれ、文化祭を騒がせた事件は解決したのであった。
「でも、戸田さんがあんな作戦思いつくなんて驚きでした」
「と言うと?」
「だって、戸田さん風で言うと、茶番劇みたいな確保だったじゃないですか」
「ふっ、確かにな」
「でも、無事解決できてよかったです」
夕暮れ時の部室で、俺と鹿野は大騒ぎだった文化祭について振り返る。
鹿野の横顔は夕日に照らされ、何とも神秘的だ。
「戸田さん」
「ん?」
「まだどこかに見つけてもらいたいと、いつか日を見る日を心待ちにしている謎がきっと、世界のどこかにはあるはずです」
「そうかもな」
「私、そんな謎を全部見つけて解いていきたいんです」
「へっぽこのお前がか」
「へっぽこって言いました⁉」
「ふっ、まぁ、お前ならできるかもな」
謎を愛するお前なら、謎に愛されているお前なら、いつか。
Fin
「お願いします」
「司会はミステリー同好会部長の鹿野です」
「よろしくお願いします、琴ちゃん」
「それでは議題は『どうやって偽地歴部員を捕らえるか』です」
「そうですね。今回はなかなか難しい議題だと思います」
「私も同感です」
「ちょっと待て。なんだこの茶番は」
「もう、博人。今なかなかいいところだったんだよ」
「そうですよ戸田さん」
一夜明け、文化祭2日目。俺たちは少し早めに集合して、偽地歴部員が我がミステリー同好会を最後のターゲットとしている連続窃盗事件について、どう奴を捕まえるか、その作戦会議を開いていた。まぁ、みんな朝早すぎて謎のテンションなんだが。俺はついていけん。
「それでは、気を取り直して。偽地歴部員はどう私たちに勝負を仕掛けてくるでしょうか」
「そもそも、偽地歴部員は今までの6回の犯行、どうやってきたのかしら」
「確かに真由美の言う通り。手口で分かっているのは、必ず犯行声明を置いていくっていう事だけだね」
「そうだな」
「困りました。犯行の手口が分からないのであれば、対策のしようがありません」
それぞれの犯行は、時間がバラバラ、場所もバラバラ、盗まれたものもバラバラであった。
強いて言うなら、最後のアイス研、野球部、福祉部はかなり短時間の間に全ての犯行が行われたことが分かっている。なぜ、偽地歴部員は最後の3つ、そんなにも短い期間に犯行におよんだのだろうか。
「おはようございます。放送部の阿東です」
少し話に行き詰まり、みんなが黙ってしまったその時、ちょうど放送部の阿東さんが我が部室に足を運んでくれた。タイミングばっちりだな。
「おはようございます、阿東さん。お早いんですね」
「えぇ、今日の生放送の準備がありますから。それで、連続窃盗事件、どうなりました?」
「最後のターゲットは我がミステリー同好会のようです」
「ほ、本当ですか⁉それは、緊急特番を組めるくらいのビックニュースですよ」
「ところで、阿東さん。一つ聞きたいことがあるんだが」
「…?なんでしょうか」
「昨日マイクが盗まれた時の状況を詳しく教えてもらいたいんだ」
「昨日…。確か、今日みたいに私たち、昨日も早く登校したんです。生放送の準備がありましたから。それで、いざ準備しようとすると、マイクがない事に気が付き、探している内にあの犯行声明を見つけたという事です」
「つまり、犯行当時部室には誰もいなかったと」
「えぇ、そうですね」
犯人の手口は、誰もいなくなったすきをついて、物を取ることで間違いなさそうだな。
ふと、窓の外を眺める。サブステージでは係が忙しそうに準備に追われている。
その横を、丸刈りの男子生徒が二人、キャッチボールをしながら、歩いている。
あいつら、まだ懲りてないのか。そうだ、あいつらにも話を聞いてみよう。
俺は廊下の窓を開け、少し声を張って、外にいるキャッチボール少年たちに声をかけた。
「おーい。そこの野球部」
「君は確か、ミステリー同好会の。前はお世話になりました」
「ちょっと聞きたいことがあるんだが」
俺がそこまで言うと、二人はキャッチボールを止め、窓の方まで近づいてきてくれた。
「昨日、野球部から物が盗まれる事件あったよな」
「あぁ、確かにあったよ。的開けビンゴ用の野球ボールが盗まれたんだ。おかげで、新しいボールを取りに球場まで走らされたよ」
「それは災難だったな。ところで、盗まれた時、野球部のブースに誰かいたか?」
「あぁ、いたとも」
「いた?それは本当か」
「いたと言っても、本当に人が多くて、結構カオスな状態だったよ。確かにあの状況なら、ボールを持って行かれても気が付かないかもしれないね」
「なるほど。助かった、ありがとう」
「いや、あの時の御恩があるからね。また困ったことがあったら呼んでくれ」
あいつら、やっぱりいい奴らだな。その時、俺の後ろを、文芸部員が気まずそうに通って行ったのが何とも滑稽だった。
部室に戻り、俺は今のやり取りを、みんなと共有する。
「なるほど、つまり、偽地歴部員には怪盗の素質はないという事だね」
「駿之介の言う通りだ。俺に少し考えがある」
「考えですか?」
「聞かせてよ、戸田」
「それには、ちょっとみんなの協力が必要なんだけどな」
――――――――――――――――――――
「それじゃあ作戦通りで。みんないったん退出してくれ」
いよいよ作戦決行。俺はなぜか、指揮官として、全体の調整役となった。
「お邪魔します」
「あっ、あぁ。思う存分使ってくれ」
「お邪魔します、文芸部さん」
俺たちは、ミステリー同好会室横の文芸部室に身を潜め、奴が来るのを待っておくこととした。
『こちら、昇降口。偽地歴部員と思われる者が部室棟へ歩いていくのを確認』
『こちら中庭。こちらからも、偽地歴部員がミステリー同好会室へと歩いているのを確認。あっ、入りました』
みなさんは、飛んで火にいる夏の虫という言葉をご存知であろうか。さぁ、偽地歴部員さん、俺をいや、全校をおちょくった事、後悔させてあげよう。
ピンポンパンポン『マイクテスト、マイクテスト。こちら放送部です。各部活は準備をしてください』
「よし、作戦開始だ」
―――――――――――――――――
ピンポンパンポン『マイクテスト、マイクテスト。こちら放送部です。各部活は準備をしてください』
なんだろう。ミステリー同好会室に難なく侵入できた僕は、急にかかった放送に少し違和感を感じた。
まぁ、そんなことはいい。ミステリー同好会からは、奴らの部誌を根こそぎ奪ってやろう。僕は、持ってきたリュックサックに部誌を詰め、部室を後にする。やり切った、僕はやり切った。
「…‼」
目の前の中庭には、腕を組み、こちらを睨む、野球部員の姿が。なぜ、こいつらがここにいる。僕は、部室棟を元来た方へ引き返そうと走り出した。
「…‼」
元来た方には、サッカー部がネットを張って、仁王立ちで立っていた。くそっ、なぜだ。
僕は、階段を駆け上がる。
「…‼」
階段には、園芸部がスコップを、ESS部が和英辞典を持って立っていた。
なぜだ、なぜ俺の行く先々、みんなが立っているんだ。
「こんにちは、地歴部員さん」
―――――――――――――――
それでは、話は遡る事数時間前。
「それには、ちょっとみんなの協力が必要なんだけどな」
「協力ですか」
俺はミステリー同好会のメンバーに作戦を説明し、協力してもらう部活の部長を呼んできてもらった。
「戸田さん、このメンバーって」
「あぁ、今までに俺たちが謎を解決してきた部活だ」
そう、野球部、文芸部、園芸部、サッカー部、ESS部。4月から今日まで、俺たちミステリー同好会が挑んだ謎にかかわってきた部活だ。
「戸田君と言ったか。それで僕たちにどうしてほしいんだい?」
「皆さんには、犯人が逃走できないように道をふさいで欲しいんです」
作戦はこうだ、空になった部室に奴は必ずやってくる。そこで、俺たちは文芸部室へと身を隠し、各部との調整、そして最後に奴を捕まえる。
野球部には、窓からの逃走を防ぐため、中庭に。サッカー部には本館への逃走を防ぐため渡り廊下に、園芸部とESS部には階段を上がり2階から逃走されるのを防ぐために、階段に立っておいてもらう事とした。これがことのあらましだ。
―――――――――――――――
その後の生徒指導課の聴取で、自分の地歴部は部として認められなかった。それが悔しく、様々な大会で成績を上げている、放送部、囲碁部、野球部、福祉部、アカペラ部を。部員が5名以下なのに活動できている、同好会つまり、アイス研とミステリー同好会をターゲットとして選んだという事だった。
何はともあれ、文化祭を騒がせた事件は解決したのであった。
「でも、戸田さんがあんな作戦思いつくなんて驚きでした」
「と言うと?」
「だって、戸田さん風で言うと、茶番劇みたいな確保だったじゃないですか」
「ふっ、確かにな」
「でも、無事解決できてよかったです」
夕暮れ時の部室で、俺と鹿野は大騒ぎだった文化祭について振り返る。
鹿野の横顔は夕日に照らされ、何とも神秘的だ。
「戸田さん」
「ん?」
「まだどこかに見つけてもらいたいと、いつか日を見る日を心待ちにしている謎がきっと、世界のどこかにはあるはずです」
「そうかもな」
「私、そんな謎を全部見つけて解いていきたいんです」
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